スターバックスと無印良品にみる中国小売動向

2月2日、コーヒーチェーンのスターバックスが10-12月決算を公表した。その内容は厳しいものとなった。米国は値上げの結果売上増こそ確保したものの、原材料と賃金インフレによる利益率圧迫が起きており、中国はロックダウン政策を解除してなお感染拡大の逆風が吹いている。

アメリカのインフレはいよいよ実体経済を蝕んできた
詳しく内訳をみてみよう。同社の北米エリア(アメリカ・カナダ・メキシコ)における既存店の売上は、商品(下表では取引)が昨年同期比+1%、チケット(下表では航空券)が+9%であった。商品について、スタバはアイテムごとに30セント程度値上げしているため、実質的な客数は減少しているだろう。
また、チケットを購入すると様々な割引サービスが受けられるため、ユーザーは積極的にチケットを購入してインフレヘッジを図っていることが伺える。
さらに、営業利益の増加率は売上収益の増加率よりも低くなった。これは従業員への賃金や原材料のコストが上がった結果、損益分岐点が上がったことを意味する。
以上を踏まえると、北米の決算は見た目ほどには良くないだろう。

出所:スターバックス決算ページ(googleによるサイト翻訳)

成長地域であった中国が足を引っ張る
また北米以外の地域では、中国の既存店売上が昨年同期比でマイナス29%というグランデサイズの減収となった。他の地域では経済回復が進んだものの、ドル高も相まって13%の減収となった。
営業利益については、インフレが進んだことでマイナス20%となっており、北米同様こちらもコスト増が響いている。
これから中国の人々が集団免疫を獲得することで徐々に売上が回復していくと思われるが、習近平政権は効果が疑問視される国産ワクチンに拘泥し、効果の大きいm-RNAワクチンを接種していない。つまり、コロナウイルスの変異による感染拡大は、欧米や日本ほどには収束しにくいだろう。

出所:スターバックス決算ページ(googleによるサイト翻訳)

不振はコーヒーだけではない
小売業界において都市部の人口増加が続く中国は、成長の源泉であった。世界的にファンが多い無印/MUJIブランドを展開する良品計画の9-11月の売上動向を見ても、中国の売上減少が業績を下押ししている。以下のデータでは、クリスマスシーズンを迎える9月から11月の中国の売上が昨年同期比で大幅な減少となっている。上海など大都市の大規模ロックダウンは夏までに解除されたものの、区画ごとのロックダウンや地方都市のロックダウンが断続的に実施されたことで、消費者の財布のひもは一気に硬くなった。

出所:良品計画データブック


業績と期待の乖離が大きくなっている
さて、上記の通り中国の小売状況は芳しくないが、厳格なロックダウンの解除により株式相場は期待が先行しているようである。上海総合指数は年初から6%強、テンセントやアリババを含む香港ハンセン指数は同10%上昇した。

出所:Googleファイナンス


ロックダウンの解除により消費が戻れば、高い期待に経済実績が追い付いていくだろうが、実際は不動産バブルが崩壊し、サプライチェーンも壊滅的なダメージを負ったことにより、経済は簡単には回復しないだろう。
一方で中央銀行はインフレリスクを取ってでも利下げを敢行しているため、株式相場はバブルが助長される状態となった。もし、経済が回復しない場合には株価の下落が今後訪れる。その結果、中国は冷え込む市場と金融バブル崩壊というダブルパンチに見舞われることになる。


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