SVB危機はまだ続くよ


・SVBの破綻は満期返還の失敗と流動性の枯渇にあった
・逆イールドは未だ続いている
・FRBはインフレ退治が完了しないと利下げに動けない
・結論として銀行危機は終わりではない

シリコンバレーバンクが破綻してから10日間が経った。
米国政府の詐欺ともいえる介入によってひとまず金融システムの崩壊は回避されたが、ファーストリパブリックなど米国の中小銀行の株価は大きく下げた。
銀行セクター全体を見ても、以下のように10日間で15%下げている。かつてリーマンショックに至る前も、バーナンキFRB議長(当時)はサブプライム問題は米国経済に波及しないと宣言しており、今回のバイデンの「大丈夫」発言はむしろフラグとして受け止められている。

金融株インデックスは10日間で15%下落

金融業の利益の源泉はリスクテイクと満期返還
さて、金融業の基本は預金者からお金をいつでも引き出せる「預金」として預かり、それをリスクが高く、貸出期間の長い「融資」や「住宅ローン」として貸し出すことにある。
貸出期間が長いほど、その間にリスクが発生する確率が高くなるため、金利は通常の場合は、期間が長いほど高く、短いほど低くなる。
これが「満期返還」である。銀行は貸出期間や与信リスクを取ることで、利益を得ているのである。

なお、この期間と金利の関係をグラフにしたものが、以下のイールドカーブであるが、現在は異常事態となっている。
図の通り、今は長期の10年債の金利が1カ月、1年、5年物の金利よりも低い。
株式投資の世界では、このような逆イールド減少は不況の前触れとして有名であるが、金融システムにおいて逆イールドはどのような意味を持つのだろうか。

それは、銀行にとって貸し出した金利よりも、借り入れた金利の方が低いため、銀行の満期返還モデルが破綻していることである。
SVBも、スタートアップからの預金を長期国債、つまり貸出期間がより長い債券の購入に充てていた。
通常ならば、長期国債を保有している間に預金引き出しが集中して起こることはない。また、預金金利よりも国債の利回りが低くなるということもない。
だが、FRBの金融政策でこの状況がひっくり返った。具体的には、以下の事態が起きた。
1.まず愚かにも長期国債の値段が高いときに買っていたため、利上げによって国際価値が暴落した
2.金融不安が高まったとき、顧客であるスタートアップが揃って預金を引き出した
3.借入金利を下げようにも、それ自体が預金引き出しを招くジレンマがあった

以上がSVB破綻の要因である。

イールドカーブは未だに逆イールド状態 出所:WSJ

モラルハザードを招いた介入
SVB破綻を受けてバイデン政権は預金引き出しを全額保証した。そのコストを一般国民が負うことはないと高らかに宣ったが、2つの点で全くの詐欺である。
まず、その保証の源泉である銀行の預金保険のコストは手数料に転嫁される。つまりSVB破綻のツケは、他の銀行を利用している顧客が支払う。
2つ目に、スタートアップの預金は、ベンチャーキャピタルからの投資である。そしてベンチャーキャピタルは、金融緩和によってじゃぶじゃぶとなったマネーの受け皿となっていた。もちろん、じゃぶじゃぶマネーの保有者は金持ちである。つまり巡り巡って金持ちのハイリスク投資失敗のツケをアメリカ人が支払ったことになる。

FRBが利下げに動くと、インフレを放置することになる

今後重要になるのは、SVB破綻の影響がどの程度飛び火するかである。その試金石となるのが、FRBの利上げ動向である。
過去の事例として1970年代は不景気になるとFRBは利下げしたものの、その後更なるインフレを招いた。FRBはその点を重々承知しており、おいそれと利下げには動けないはずである。
ならば、利上げペースは落とすとしても利下げに急に動くことはない。そのため、逆イールドはまだ続くだろう。

結論:銀行破綻の土壌はまだある
SVBは満期返還の失敗と取り付け騒ぎ(Bank Run)によって破綻した。そして満期返還を妨げる逆イールドと、取り付け騒ぎの土壌は全く解消されていない。
ゆえに、まだ銀行破綻は続くだろう。

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