読書:戦争論の投資への応用

MBAを受講すると、ほぼ必読書となるのが、ナポレオン戦争時代に活躍したプロイセン(フランスの敵国)の参謀であるクラウゼヴィッツの「戦争論」である。
戦争論は数多くの解説本が出ているが、論理展開が難解であるため読みづらく、引き合いには出されるものの読破している人は少ない本だろう。ただし最近では以下のように解説本ではなく、原著を読みやすく圧縮したものも出てきた。

戦争と投資は、どちらも不確実性を扱う領域であるため、投資において戦争論は極めて役に立つ。ここでは、「天才」と「理論」についての類似点を著したい。

天才について:
ナポレオン戦争後に書かれた本だけあって、戦争論は戦争における「天才」に関する記述が多い。その中で天才とは、あくまでその時代の状況や国民性と深く結びついた存在であるとされている。天才を形成するものは、時代の運や適性の比重も大きいのだ。一方で、的確な判断力と勇気は時代によらず普遍的な天才の要素とも主張している。
戦場ではすべてが不確実性の霧に覆われており、あらゆる情報や想定は簡単に覆る。そして、データをいちいち吟味して戦略を練り直す時間はない。こういう場合、天才はリスクを取って判断を素早く下す能力だけでなく、同時に自分が間違っている可能性を想定する内省的な力も必要とされる。
これは戦争を投資に置き換えても、そのまま当てはまるだろう。ネット上には自称「カリスマ」や「天才」であふれているが、彼らは運がいいか、詐欺師である場合がほとんどである。本物の天才は、常に内省的な姿勢を失わないが、これは自称「カリスマ」を語る連中とは程遠い。

理論について:
また、理論についてもクラウゼヴィッツは公式じみた手法を否定している。19世紀にクラウゼヴィッツと対比をなす戦術家として、ナポレオンの補佐を務めたジョミニは、戦争を数学に置き換えている。しかしクラウゼヴィッツは、戦争とは常に変化するものであり、かつ不確実性も大きいうえ、人は物理現象のように常に同じ動きをするとは限らないため、戦争を数学のように扱うことを否定している。
投資についても、いわゆるテクニカル理論やバリュー投資の公式がありがたがられるものの、それらはあまり役に立たないことを筆者は経験を通して学んできた。
なお、近年の金融物理学では、むしろ株価などの動きは確率分布で示すことのできないことが示されている。これはフラクタル性を発見したマンデルブロや、不可知をわかりやすく示したナシーム・タレブの功績である。

他にも多くの要素があるが、途中まで読んだ感想として、これは投資からならば何度も味わう価値のあるものだと感じた。

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