セールスフォース、コストコの決算にみるアメリカ経済の鈍化


筆者も投資しているアメリカ株について、2月に四半期決算を迎えるセールスフォース、コストコの決算が開示された。セールスフォースは企業の顧客管理ソフト、コストコは小売スーパー大手であり、両社は日本でもビジネスを営んでいるため、知っている人も多い企業である。
現在アメリカに投資している人のほとんどは、今後のアメリカ経済を占うインフレ率とFRBの動向に注目しているが、個別企業である両社の動向をみる限り、ノーランディング(景気後退の回避)はなさそうである。

セールスフォースの売上成長は鈍化
セールスフォースの売上は昨年の20%超から一転、15%に沈んだ。もともと昨年はコロナ禍からのリベンジ消費によってECが大幅に伸びており、ハードルが高かったこともあるが、顧客企業がマーケティングに割く予算を減らしているのが主な要因である。ハイテク企業は伸びなかったものの、代わりに公共部門や旅行部門が成長を補った。
示唆するところとして、既に小売企業に対するB2Bビジネスは鈍化している。セールスフォースもその傾向を踏まえ、従業員の削減に乗り出した。

セールスフォースの直近四半期の売上成長率は鈍化


コストコは生活防衛の需要を取り込むも、ぜいたく品が鈍化した
会員費を支払うことで割安価格で買い物ができるコストコの売上も、前年から鈍化傾向にある。コストコもコロナ禍のリベンジ消費で昨年は絶好調だったが、インフレによって消費者が財布のひもを硬くしたことで売上成長率は鈍化した。
生活必需品は売れているものの、宝石など高級品、ぜいたく品の売れ行きが芳しくないことが、成長率鈍化の原因である。なお競合のウォルマートもプライベートブランドこそ売れているものの、高級品は芳しくなかった。
コストコは、今後も他社よりも安い価格を維持しつつ、インフレ分を価格転嫁していく方針としている。

小売大手コストコの成長率も鈍化傾向

恐ろしく強気な株式相場
このように、小売企業は確実にインフレの影響を受けているものの、消費者物価指数の強さや雇用統計の強さから、株式市場は強気なままである。市場参加者の弱気の指標となるVIX指数は18.49であり、インフレが加速した昨年10月と比べてかなり低下した。
強気な背景としてはアメリカ人の現金給付金の残りがまだ1.5兆ドルあることや、雇用の強さが挙げられるが、上にみたとおりまだ生活必需品の売れ行きはいいので、販売員の需要が減っているわけではない。つまり、インフレの影響と雇用の強さは矛盾しない。これが市場参加者が見落としている点である。
また、たとえ確率的には低くとも、ここまで強気になった株式市場が弱気に転換すると、そのダウンサイドリスクは大きなものになるだろう。

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