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【ロストメディア】EDMの全盛期を盛り上げた、哀しきVSTプラグインたち

今回は、現在(2024年7月時点)で、正規の手段で入手することが不可能になっている「ロストメディア・プラグイン」を紹介いたします。


[Instrument] reFX - Nexus 2

使用したアーティスト (ソースはEquipboard): Avicii, Martin Garrix, Deadmau5, Skrillex, Hardwell, Zedd

考えられる入手方法: Nexus4をインストールする・レアなパッケージ版を中古で入手する・公式で販売されている「Nexus2エクスパンション」をNexus4にインストールする・刑務所行きを覚悟して海賊版に手を染める

カナダ発、Sylenth1, Massive, Synthmasterに並ぶ、2010年代初期のEDMを代表するサンプルベースの音源。

「[PN] Dancepiano 2k7」など、「当時感」のあるProgressive Houseサウンドが収録されていたことで有名でした。

2019年のNexus3の発売に伴い、公式から完全に削除されてしまいました。

当時のエクスパンションはまだ残っていて、現在のNexus4と互換性があるようなので、一部は復元可能ですが、完全再現は難しそうです。(追記 2024年7月24日:reFX公式に問い合わせたところ、Nexus2ファクトリープリセットが、現在もNexus4に収録されているそうです。完全に闇に葬られたわけではないようです)

法律を守るAviciiファンにとって、導入は狭き門です。

[Instrument] Cakewalk - Z3TA+2

使用したアーティスト (ソースはEquipboard): Avicii, Knife Party, W&W, Rusko, MDK, AVNOID, Shingo Nakamura

考えられる入手方法: 先輩からZ3TA+2がインストールされたパソコンを譲り受ける・BandLab社にしつこく再販を要求する・刑務所行きを覚悟して海賊版に手を染める

アメリカの旧Cakewalk社からダウンロード限定で販売されていた、ウェーブシェーピングシンセ。

特にAviciiが使用していたことで有名で、You Make Meのリードを再現できることが確認できています。

2017年にCakewalk社が解散したことに伴い、全てのダウンロード販売を終了、BandLab社の買収後も音沙汰なしです。

最近「Cakewalk Next」というサブスクを始めたようなので、出来ればそのタイミングで復活して欲しいです。

なお、デモ(体験版)は現在も入手可能ですが、正直購入できない音源の体験版をインストールするのは気が進みません。

頑張れば手に入るNexus 2とは違って、合法的に入手するのがほぼ不可能に近いですから。

[Instrument] Novation - V-Station

使用したアーティスト (ソースはEquipboardなど): Armin Van Buren, W&W, K-391, Lil Jon, Basshunter, nanobii, MK/Shadw

考えられる入手方法: 刑務所行きを覚悟して海賊版に手を染める

イギリス製、EDMシンセの中でもかなり初期(2000年代後半)に出たとされるシンセサイザー。

トランス(特にハンズアップ)またはハードコア系のアーティストが愛用していたと見られます。

2022年に開発終了し、それに伴い一度無料配布されていたらしいですが、今は入手することができません。

[Plugin] Camel Audio - CamelCrusher

使用したアーティスト (ソースはEquipboard): Avicii, Martin Garrix, Tiësto, Laidback Luke, W&W, KSHMR, 3LAU

考えられる入手方法: MacとLogic Proを購入する・刑務所行きを覚悟して海賊版に手を染める

イギリス生まれの、かつて無料のディストーション系プラグインを代表していたCamelCrusher。

その太い歪みが、多くのEDMプロデューサーに人気でした。

2015年にCamel AudioがAppleに買収され、CamelCrusherはLogic付属マルチFXプラグイン「Phat FX」になりました。

Windowsユーザーは、代わりのプラグインとして、BPB Dirty Filter Plus (無料)や、Sausage Fattner ($39)などを使うしかなさそうです。

オンライン化最大の弊害

昨今のオンライン化に伴い、コストのかかるパッケージやDVDメディア等は廃止され、ほとんど見かけなくなりました。

オンラインの方が、メーカーは製造費用がかからず、ローリスク・ハイリターンで費用を回収でき、消費者は店に行く必要もなく、配送料もかからず、クレジットカードやPayPalで手軽に決済できるので、「その道」が選ばれているのだと思います。

しかし、一度ネットから「メディア」が失われたら、それを取り戻すことは極めて困難になります。

停電やサイバー攻撃などで、インターネット接続に障害が起きたり、メーカーが倒産したり、あるいは経営陣の意向でそのプラグインの販売を取りやめたりすれば、その時点でその「商品」は、立派な「ロストメディア」です。

もしこれが、実態である「DVDメディア」であれば、中古店で流通される可能性があるので、ユーザーが再び手に取れる可能性がありますが、オンラインの場合はそういうわけにはいきません。

サイト側が利用規約で「ライセンス移管」を禁止したり、ヤフオクやeBay等で中古ライセンスを買っても、そもそもソフトウェアを認証するためのサーバーが消失したりしていれば、何の意味もありません。

これから私達は、より「データ」を「実体」として残し、後世の人たちに受け継いでいく必要に迫られています。

今存在している有名な音源、プラグイン、ソフトウェア、アプリケーションが、明日も存在しているかどうかもわかりません。

その中には、将来のテクノロジーの発展において重要なものがあり、それらが失われれば、最悪の場合、全世界が原始時代に逆戻り、ということもあり得ます。

1960年代に生まれ、1970年代に青春を過ごし、Led ZeppelinやJimi Hendrixを聴いてきた人は、1980年代に24歳になってからFender StratocasterやMarshallアンプ等を購入して練習すれば、彼らと同じ音が出せます。

1980年代に生まれ、1990年代に青春を過ごし、小室哲哉や浅倉大介を聴いてきた人は、2000年代に24歳なってからRoland JD-800を購入して練習すれば、彼らと同じ体験ができます。

しかし、2000年代に生まれ、2010年代に青春を過ごし、AviciiやMartin Garrixを聴いてきた人たちは、2020年に24歳になっても、どんなに練習したとしても、彼らと同じ体験ができません。

これでは不公平ではありませんか?

さらには、今から50年後、ネットにあった次々と古い技術が失われ、あらゆるコンテンツの発展がストップし、世界の文化芸術がどんどん退化していく未来を想像したら、恐ろしいと思いませんか?

未来永劫、EDMもHiphop Type Beatも作れなくなり、聴けなくなる、恐ろしい未来が世界に迫ってきています。

すべてのインターネット民は、現代の技術を後世に残していくために、あらゆるデータを「オフライン化」させなければなりません。

現代を生きる貴重な資料を、ROM等に記録していかなければなりません。

もしくは、古いソフトウェアの無料化やオープンソース化などによって、技術を継承していかなくてはなりません。

オーパーツになる前に。

海賊版しか手に入らないという、悲惨な結末になる前に。

皆様が賢明な判断をされることを、心から願ってやみません。


さいごに


こちらのYouTubeチャンネルの動画も、何度も運営から不当に削除されているので、観れるうちに観ておいたほうがいいです。

こちらは何百曲も聴いた私が、「本物の音楽」として聴いている「NANAさんの歌」になります。

2000年に一度の奇跡の歌声を、ぜひお聴きください。


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