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シネマ・エッセイ 〜暮らしに映画のエッセンスを

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人生の旅路という表現が意味するように、時に人生は旅に例えられる。映画は、さまざまな人生の縮図。旅をするように楽しむ。日常の、または非日常の暮らしにもっと映画のエッセンスが注がれた… もっと読む
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#新作映画

映画『落下の解剖学』

映画『落下の解剖学』

それにしても映画監督というのは
愛犬家が多いなと思う

映画開始10分
私のメモには「わんちゃんと音が解明する」と書かれてあった

傍聴人やテレビのワイドショーはいつもそう
「他人の不幸は蜜の味」

突然の破壊の後には
必ず新たな再生がやってくる

人生の動きは
まさに易経の十二消息のように
常に波状形である

陰と陽との繰り返し

犬はそのことをわかっているかの如く
優れた洞察力を生かしている

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映画『悪は存在しない』

映画『悪は存在しない』

ゴールデンウィークに 地元のFMラジオにゲスト出演した
英語通訳をしながら 映画エッセイを書いている
そんな肩書きで媒体でご紹介に預かるのは とてもとても光栄なこと
放送では こんな堅苦しくはなく むしろ砕けすぎていたのではないかと思う

番組内で紹介した映画『悪は存在しない』
ゲスト出演の翌日に 下関のシネマポストへ

「水は低い方へ流れる」

自然なことを 自然なこととして受容することの清々し

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映画『瞳をとじて』

映画『瞳をとじて』

映画館を後にする時のこと
同じ映画を観た年配の男性客が発した言葉が
いまも記憶に残っている

「若い時に『ミツバチのささやき』を観たけどよくわからなかった。
 でも、こんなに素晴らしい作品をつくるんだね」

ビクトル・エリセ監督の最新作『瞳をとじて』
映画の中の映画『別れのまなざし』では依頼者の娘を探す
そしてこの『瞳をとじて』では元映画監督ミゲルが出演者であるフリオを探す

まるで両者の映画が呼

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映画『哀れなるものたち』

映画『哀れなるものたち』

つい先日こんな広告を目にした

LIFE WITH ART

アート週間を伝えるものだったと思う

私は常々思い考え記していることだが

人生は旅 そして人生は映画だと認知している

また映画はまさに総合芸術である

つまり 私の頭の中ではこんな関係になっている

人生=旅=映画=芸術

よって LIFE WITH ARTという表現にはいささかの矛盾を感じざるを得ない

こんな小難しいことと向き合

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映画『夜明けのすべて』

映画『夜明けのすべて』

2022年12月初旬 私は鳥取に向かった
バスを乗り継いで13時間30分
到着した時はすでに深夜前
降り着いたバス停のあたりには 街灯がなく
天上に輝く星たちが 旅の道先案内人となった

2023年12月に故・青山真治監督展覧会のトークイベントにて
三宅唱監督と出会う
『ケイコ目を澄ませて』も鑑賞したが
実は私が三宅唱監督を知ることになったのは それよりも前
コロナ禍で開催されていた『現代アートハ

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映画『映画の朝ごはん』

映画『映画の朝ごはん』

その時にぴったりのことを行う

このことを易経では「中(ちゅう)する」という

まさにポパイの朝ごはんは

そのことを実現している

映画にちなんだおにぎり弁当をいただき鑑賞したことで実感したこと

映画を絵画に例えるならば

映画館はその額縁

その映像芸術からどれだけの可能性を引き出せるかは

映画館の手腕にかかるのではないだろうか

その意味で

今回キャンセル待ちが出るほどの反響があったこ

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映画『ビヨンド・ユートピア 脱北』

映画『ビヨンド・ユートピア 脱北』

近ごろの日本では「一粒万倍日」を縁起のよい日としてとらえて
開運のためにと 開運行動に勤しむ人も多い

種籾ひと粒から何倍ものお米が収穫できるというところから由来しているらしい

この映画に登場する牧師は
幼くして亡くした息子の命の代わりに
今までに1000人の脱北者の命を救ってきた

福音にある「一粒の麦」のようだと語る牧師

私には 一粒万倍日と似て非なることに思える

一人の命に代わりがいな

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映画『葬送のカーネーション』

映画『葬送のカーネーション』

車内のラジオから流れる哲学話

“人生に求めることは?“
“死ぬということ“

「天命を終えることを楽しめない者は、時の変化をわかっていない」
易経にはこのように記されている

この映画の英題は“Cloves & Carnation“

クローブは痛みを鎮静させる作用があると言われる
人を失った時、その傷ついた心も癒してくれるのだろうか

映画『カラフルな魔女 角野栄子の物語が生まれる暮らし』

映画『カラフルな魔女 角野栄子の物語が生まれる暮らし』

イコちゃん(角野栄子さん)の言葉は

まるで神様から授けられているかのよう

すべては一つである

そのことを

内側から外側へ 

外側から内側へ

イキイキと あそびながら 

表現し作り上げている

「いたずら書きの人生」とは、
イコちゃん、言い得て絶妙です。

映画『市子』

映画『市子』

「限界だった」

易経という東洋思想哲学の最高峰とも言われる書がある
この書には、時の変化の法則が非常に簡潔に書かれている
あまりにも端的に書かれ過ぎているために、解読が難しいと言われている

この易経の中には四難卦(しなんか)という困難の時を伝える卦がある
困難を極める卦「困」の時をどのように生き抜いていくかを説く沢水困
「困」は、見てもわかるように、木の周りに囲いがされている
木は上へ上へと枝

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