見出し画像

ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館

私が初めてロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館を訪れたのはちょうど2019年の夏、イギリスのブリストル (Bristol)に滞在していた頃のことだった。目的はChrisian Diorの “Designer of Dreams” という展覧会だったが、この日朝一で行ったものの、結局当日券は取れなかった。

Christian Diorの "夢のクチュリエ" 展(上記と同様の展覧会)は、現在(2023年4月)東京でも開催中、そのレポートはこちらから

初めてのヴィクトリア&アルバート博物館。Diorの垂れ幕が見えて、心躍った瞬間

ゆえ、その日はDior展を諦め、目一杯ヴィクトリア&アルバート博物館(以後 “V&A”)を楽しむことにした…のだが、とても広いこの博物館、見応え抜群、しかも無料である。イギリスの素晴らしいところは、こういう公的博物館、美術館は基本無料ということだ(V&AもDior展のような特別展は除き、常設展は基本無料)。

天窓から吊るされた意匠的なガラスのモチーフ。天井高の造りが一際開放感をもたらす

そして今秋(2023年)、2022年東京で開催されたシャネル展(ガブリエル・シャネル展 Manifeste de mode)が、世界巡回展としてこのヴィクトリア&アルバート博物館でも開催される予定である。(私は東京でこのシャネル展に行ったのだが、ロンドンでも行こうと画策中である…

ロンドンといえば大英博物館が有名だが、アート好きにはもちろん、ファッションに興味のある方、建築好きにも欠かせないアドレスであるV&A。いろいろと素晴らしい博物館なので、写真と文章で共有したいと思う。
※ この投稿の最後に本博物館の公式URLを記載しています。

大英帝国の名残か、アジアのコレクションも多い

前述の通りDior展の当日券は取れなかったものの、翌週のチケットを運良く入手した私は、この日は初めてのV&Aを探索することに決めた。まだお昼近く、その日は夜9時台にロンドンを出る予定だったので、時間はまだ十分にあった。

こんな造りを見つけたらワクワクしてしまうのは私だけだろうか

そもそもV&Aは所蔵品の範囲も、古美術から現代美術と広く、コレクションは400万点に及ぶという。しっかり回るとなると丸一日では済まない広さと量なので、一日費やしたとしても大げさではない。

カフェテリアで軽いランチを済ませた後、この広い館内をどう攻略しようかと悩んだ末、心の赴くまま、直感に任せて回ってみようと決めた私は、大海原おおうなばらのV&Aの旅に出た。

美しい照明と天井のカフェテリア。大きな博物館だけあり、週末ともなると人でごった返すので、食事やお茶できるスペースもかなり広い

私はアートが好きで美術館にもいろいろと行くものの、“古過ぎる美術館” というのはあまり好みではない。コレクションが古いことは問題ではなく、例えば説明書きや展示方法がその時代に合わせてアップデートされている、という点が非常に重要で、その辺りの手の掛け具合で、その美術館やギャラリーの洗練度やセンスがうかがい知れると感じている。

カジュアルに置かれた(ように見える)配置は、アートを体感するという意味で身近に感じられる

V&Aはその点、箱としては歴史もあり古くからの博物館だけれど、キュレーションやヴィジュアル、展示などはとても洗練されており、その度合いは外観、内観、全てから感じられる。また創設の経緯から所蔵品も一級品レベルで見応えがあるものが多い。そして前述の通り、DiorやCHANELなどのハイブランドの展覧会も行われるキャパシティと運営力の両方の力も兼ね備えているので、総合的な博物館として可能性は群を抜いており、実際世界でも抜群の知名度を誇る博物館・美術館の一つである。

天窓から光が射すと明るく、木漏れ日が美しい
中庭にはカフェスペースも。
季節柄紫陽花が満開、濃いめのピンクや紫色がV&Aの建築に合っていて、目にも楽しい
芝生も楽しめるのがイギリスならでは

少し込み入った話をしてしまったけれど、要は “ミュージアム” としても洗練されており、質・量共に秀逸で、場所はロンドンの中心地、そして無料。誰でも質の高いアートが楽しめるアドレスということだ。

蛇足だが、この動画はV&Aで私のお気に入りの場所の一つ。丸くくり抜かれたようなその空間は、中央が吹き抜けになっており声が心地よく響き渡る。この日はさらに好天もあり明るい光が差し込み、なんとも気持ちよく不思議な感覚を覚える空間だった。建築そのものが美術品のようなこの博物館では、展示だけでなく空間そのものからも五感を刺激される。それは本当に楽しいものだ。

V&Aにはインテリア家具のセクションも。本当にさまざまな展示物があるので、何かしら好きなものが見つけられるというのも、“懐の深い” V&Aの良さだろう。

上を見上げたり下を覗いたり、ここでは退屈することがない

現在の建物は1909年に竣工しているというからかなり古いものの、中に入れば “古めかしい” 雰囲気は皆無で、前述の通り “モダナイズ”(現代的にアレンジ) されていることもこの博物館の魅力の一つ。これは、同じく天井高で天窓を多用している(この点こそイギリスの博物館・美術館の象徴的な共通項なのかもしれない)“テート・モダン” とは全く異なる雰囲気であることもまた、興味深い。

テート(テイト)・モダン(英: Tate Modern 発音例)は、イギリス・ロンドンのテムズ川畔、サウス・バンク地区にある国立の近現代美術館。テート・ブリテンなどとともに、国立美術館ネットワーク「テート」("Tate")の一部をなしている。入場無料。

テート・モダン - ウィキペディア

とにかく、V&Aはアートの総合デパートのようなところだ。

中にはモダンアートのような仕掛けも
建築とその空間を生かした配置には、
日本でいう “順路” がなく自由に作品を観覧することができる
天窓に吊るされた意匠的なガラスのモチーフ

ロンドンで観光に飽きたら…避難所として立ち寄るのも一考。週末や祝日は人が多いけれど、広いV&Aのこと、ここであなたのお気に入りを何かしら見つけることができるかもしれない。

Victoria and Albert Museum
Cromwell Road
London SW7 2RL
https://www.vam.ac.uk/

※ 挿入されている写真及び画像、動画コンテンツはすべて筆者によるものです。また、施設等の情報は、当記事執筆時点(2023年4月)のものとなります。

(London, 13 July 2019)

どなたかのお役に立てるような、読んだ後に心に残るものを感じられる執筆を目指しております。頂戴したサポートは今後の活動費やモチベーションに活用させていただきます。