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6回目のパレスチナ

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2017年夏の旅。ヨーロッパに住むパレスチナ難民との出会い、本国でも出来事。一期一会の旅
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#海外

立ち寄ろう、わざわざね。

立ち寄ろう、わざわざね。

訪問教会というところがある。場所はエルサレムの西側の郊外エン・カレムだ。聖母マリアはイエスを身ごもり、いとこのエリサベトを洗礼者ヨハネを身ごもっていた時にこの場所に立ち寄ったという話がある。
わたしは身ごもりもしていないが、わざわざ足を伸ばして立ち寄ってみよう。実際は立ち寄るというよりも連れて行ってもらうのだが。

エルサレム新市街を通り抜ける。アラブ風なヨーロッパがあったり、新しいものがあったり

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チェックポイント

チェックポイント

Nadimは日本では見かけないくらい砂塵で曇っている車に乗り込む。その助手席に座る。

砂の舞う細い道を抜けて幹線道路に向かう。右に行けばヘブロン。左折する。道路は渋滞している。ゆっくりと走っていると右前方に舞台と見物の人たち。渋滞はこのせいだろう。

あれなに?難民キャンプの入り口でしょ?なにがあるんだろう。

あー、あれはイスラエル兵に殺された人を弔うイベントだよ。今夜それがあるんだろうね。今

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ファミリーツリー

ファミリーツリー

ランチを食べおわるとおもむろにNadimはベランダに出た。まだ陽は沈んでおらずかといって、暑すぎることもない。周りは大きな木々があり日陰を作っている。ベランダには小さなテーブルセットがあり、カゴの吊り下げられそこには2羽の鳥がいる。

ベランダにおいでよ。アレギーラ(シーシャ・水たばこ)でも吸おうよ。ゆっくりしよう。シャーイ(お茶)がいい?カフア(コーヒー)にする?

シャーイにしようかな。

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さあ!ランチの時間だ

Nadimの家は幹線道路から少し入ったところにある。この幹線道路はベツレヘムからヘブロンにつながるもので道路沿いにはパレスチナ西岸地区最大の難民キャンプデヘイシェがある。

ママー、ただいま。帰って来たよ。

おかえり!Azusa, welcome!!よく来てくれたわね。さあ、お腹空いているでしょ?入って。Nadim、テーブルの上片付けて!

ママの大歓迎を受け静かな自宅に入っていった。幹線道路が

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ショッピング2

ショッピング2

観光地の生誕教会から2キロメートほど離れた場所。人もまばらな市道のような車がやっとすれ違うことができるくらいの道を歩く。

道路沿いにある商店はなんてない食器や箒とちりとり、懐中電灯も売っている。観光客が欲しいものは何もないと見える。

サラームアレイコム。友達を連れてきたよ。

Nadimはこの商店の店主にわたしを紹介してくれた。

店舗は路面沿いの1階と中地下のような10段くらいの階段を降りた

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お買い物1

お買い物1

さあ、行こうか!

そう言って店の電気を消して戸締りをする。外に出ると重いシャッターを下ろし鍵をかける。

まずは、スパイス!スークにお気に入りの店があるから。紹介するよ。このすぐ近くだから。

広場を突っ切って教会を背にして右側のスークに向かう。スークはすごい人混みでみんな犠牲祭のためにお買い物をしている。案の定、スパイス屋さんも満員御礼という感じ。大声でアラビア語の単語が飛び交っているけど理解

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再会はいつも嬉し楽し!

再会はいつも嬉し楽し!

ハビービー!久しぶりね!

マルハバン!ウェルカム!もう教会には行ってきた?メラミーエ?それともコーヒーにする?

メラミーエはこの地方のセージのお茶のことだ。

メラミーエにする。ありがとう。さっき、お祈りしてきたよ。あの厳かな感じがやっぱり好きだなー。

Nadimは”そうだねー”と言いながら、わたしを店に残して外へ出て行った。店にはわたし一人。この緩さって・・・
そしてしばらくすると大きな体

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生誕教会、イエスキリスト生誕の地

生誕教会、イエスキリスト生誕の地

Nadimのお土産屋に向かう。生誕教会向かって右の角っこにあるのがそれだ。久しぶりのベツレヘムなのでまずは教会でお祈りをしよう。クリスチャンでもムスリムでもない、典型的な日本人のわたしは全くと言っていいほど信仰心はないが神聖な場所は好き。それは美しいから。

小さな、屈まないと潜れない教会の入り口を抜ける。今もなお改装中のこの教会は外も中も聖地なの?と疑いたくなるほど普通に工事中だ。

入ると抜け

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イエスの街を歩く

イエスの街を歩く

Beit Jalaにバスが着く。目の前には大きな看板が付いている信号機がある。バスを降りると多くの客引きがバンクシーの絵のある分離壁、周囲の観光地に勧誘する大きな声がある。毎度のことながら熱気がすごい。

もう勝手知ったる道、眼を瞑っていても生誕教会までたどり着ける気がする。本当にやってしまうとこの交通量の多い道、間違いなく交通事故。

進行方向にまっすぐ行けばヘブロンに向かい、その途中には古い難

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時空を超える

時空を超える

少しだけ空の色が濃くなったエルサレム。商店のガヤガヤとした喧騒、ワンピースのようなアラブ服を着たおじさまたち、スカーフをまとった女性たち、旧市街外の芝生に寝転がる子供達、いつも通りの光景だった。

ダマスカスゲートから旧市街に入る。階段の両サイドにイスラエル兵、そして入り口にもイスラエル兵。着いてすぐのチラ見から実際に近づくと改めてイスラエル兵が増えたことを実感する。どう見ても見た目がアジア人のわ

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ただいまダマスカスゲート

ただいまダマスカスゲート

昼寝を終え、色々やることはあったがまずはここに。
旧市街の入り口ダマスカスゲートへ。少し日の傾いた頃、人々の往来。階段の上から見るダマスカスゲート。

前回から渡航から半年、あからさまにイスラエル兵が増えた。この時8月下旬。5月にはアメリカのトランプ大統領の渡航があり、その後イスラエルによるアルアクサモスクに設置されたチェックポイント(現在は撤去)、その影響でデモが増えたニュースは見ていた。

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エルサレム?ここ?

エルサレム?ここ?

何度も行っているというのはただの回数でどれだけ知っているのかの指標ではない。まざまざと見せつけられた。
エルサレムに向う列車の中でいつの間にか眠っていたわたしは眼が覚めるとどこかわからなかった。終点なのでとりあえず下車する。
早朝にドイツミュンヘンを出てそのまま空港で列車だったので、この抜けるような空の青さ、そして気温が体に染み渡り中東(といっても地中海沿岸だが・・)に来たと実感している。
改札を

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ベングリオンからエルサレムへ

ベングリオンからエルサレムへ

緊張のイミグレーションを通過し、ホッとする。まさに関所。ここさえ通り抜ければあとはもう自由自在。日本人のわたしなら。日本人というか、パレスチナ人ではないから。切ない。
ターンテーブルには荷物がどんどん乗っていっている。小さめのサムソナイトのスーツケースを探す。1ヶ月のヨーロッパ経由パレスチナ旅なのにスーツケースの大きさは2泊とか3泊の出張で使うサイズ。夏の旅は気楽でいい。
スーツケースをピックアッ

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テルアビブに到着

テルアビブに到着

ミュンヘンから飛行機に乗り一路テルアビブに向かう。飛行機に乗り込む時には空は明るく日が昇ってきていた。
これが6回目のパレスチナ行き。
定刻通り飛行機は飛び立ち中東へ。美しい地中海の上を優雅に飛び越える。機上から地中海、そして面するテルアビブが見えてくる。きっとガザ地区も見えているはずなのだが未踏のその地がどこら辺なのかわたしにはわからなかった。

飛行機は着陸。そして機内では拍手。
毎回ドキドキ

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