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外国語教育_at my desk

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外国語教育について考えた・考えてる・考えるために書いた こと
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#英語教育

「アイマイミーマイン」って変すぎない?

「アイマイミーマイン」って変すぎない?

英語の人称代名詞の格変化を覚える際に,「アイマイミーマイン」(I, my, me, mine)という呪文を唱えたことのある人は多いだろう。
この呪文の続きは「ユーユアユーユアーズ」(you, your, you, yours),「ヒーヒズヒムヒズ」(he, his, him, his),「シーハーハーハーズ」(she, her, her, hers),「ゼイゼアゼムゼアーズ」(they, thei

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学生からの質問「授業中に内職してる学生ってどうしますか?」

学生からの質問「授業中に内職してる学生ってどうしますか?」

教職の学生からふと雑談中に聞かれて、なんとなく自分の納得いく回答ができなかったなぁ、とモヤモヤしていたので改めてこの記事を書くことで自分の考えを整理してみようと思う。基本的に考えた順番に書き出していくので読みづらさはご勘弁いただきたい。

まず一つ、教職の学生たちが将来見ることになるであろう中高生と、私が今見ている大学生とでは、ちょっと考え方も変わってくるのかなというのは大前提にある気がする。
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青木幹勇(1987)『いい授業の条件』国土社

青木幹勇(1987)『いい授業の条件』国土社

正直,期待していたよりずっと中身が軽い印象。いや,勝手に期待したこちらの問題でもあるのだけど,まえがきで「「いい授業」であるか,そうでない授業かは,いうまでもなく,子どもの側に立っての評価でなければなりません」と述べられている一方で,中身は筆者の主義の表明である部分が多い。筆者が確かに子どもたちの様子を見て「いい授業だ」と思えた経験から抽出した内容なのだろうが,どうしても説教臭く感じてしまう。

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「異文化コミュニケーションの視点から考える英語教育」—鳥飼玖美子氏 特別講演

「異文化コミュニケーションの視点から考える英語教育」—鳥飼玖美子氏 特別講演

2021年度ELEC英語教育賞授与式に続いて行われた鳥飼玖美子氏の特別講演「異文化コミュニケーションの視点から考える英語教育」を視聴した。

全体を通して非常に聞きやすいし理解しやすい。これは鳥飼氏の著書等をそれなりにフォローしてきた上にかなり肯定的に捉えていることと無関係ではないだろうけど。

暗雲立ち込める「グローバリズム」「グローバル化」「グローバリズム」という言葉はもう聞き飽きるほど何年も

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英語学習はゲームなのだろうか?

英語学習はゲームなのだろうか?

平尾昌宏(2022)『人生はゲームなのだろうか?—<答えのなさそうな問題>に答える哲学』を読んだ。

この本をごく簡単に紹介した上で,「英語学習はゲームなのだろうか?」という問いに答えを出したい。

ゲームとは何か?ここでの「ゲーム」にはいわゆるスマホやゲーム機で遊ぶコンピュータゲームだけでなく,スポーツの試合やテーブルゲームも含む。

「目指すべき終わり」というのは,相手に勝利するとか,高いスコ

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【授業で洋楽】 Photograph / Ed Sheeran

【授業で洋楽】 Photograph / Ed Sheeran

オミクロン株の感染急拡大に伴って,勤務校は少し前からオンライン授業に切り替わった。
私の英語の授業の一番の「売り」は,長い英文を見ても目を背けなくなる(と信じたい)読解の授業だと思っている。

それがオンラインでは,まぁ正直厳しい。オンライン授業で一人で家で黙って教科書3~4ページ分の英文に立ち向かえるのであれば,もうその生徒には私の授業は必要ないとも言える。

というわけで,思い切って授業を根本

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共通テスト(英語・リーディング)について思うこと

共通テスト(英語・リーディング)について思うこと

テストの概要今年の共通テストは以下の6つの大問で構成された。
第1問 … 広告
第2問 … A. ビラ? B. 広告
第3問 … A. ブログ B. 雑誌
第4問 … ブログ
第5問 … 論説文とそれをまとめたノート
第6問 … A. 論説文とノート B. 記事とそこから作ったプレゼンの草稿

昨年と同じく発音や文法・語法などの知識を直接的に問う問題はなく,様々な媒体によって提示された文字情報を読

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ピア・フィードバック

ピア・フィードバック

こちらの本を読んだ。

この1年ぐらい,生徒主体の活動を中心に英語の授業(特にリーディング)を構成してきたつもりだが,その中で彼らにフィードバックを返すのは決まって私だった。

秋頃にやったライティングで初めて個々の成果物(または制作途中のもの)を全体にシェアして,「他の人のを読んで,自分のライティングの改善点があったら直してみよう」という形を取ったが,それも他の生徒から直接フィードバックを与えら

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中学英文法「意味順」ドリル

中学英文法「意味順」ドリル

今年9月、以下の二冊のドリルが発売された。

この本についての詳細は著者のお一人である奥住先生が色々と書いているし,YouTubeでの対談もさせていただいたのだが,ここでは一人の英語教師としてのこのドリルに対する考え方を書いていく。

教材の目的全ての教材に言えることだが,数ある教材の中からその教材を選ぶ「目的」の明確化は非常に重要だ。中学校・高校で「文法ワーク」「文法参考書」的な教材を使用すると

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英検ライティングと,卒・英検ライティング

英検ライティングと,卒・英検ライティング

英検フォーマットの功罪一口に英検フォーマットと言っても,きっと色々あるのだろう。
ここでは下に書いたものを「英検フォーマット」とし,その功罪をまとめる。

白か黒かを求める

何かの問題に対して「白か黒かで答えろ」というのは「難題」であることをミスチルを聴かない私でも知っているし,「白と黒のその間に無限の色が広がってる」ことはミスチルを聴かないけど,勤務校のYouTubeのサムネ作りのためにカラー

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杉田由仁(2021)英語授業における「言語の使用場面」と「言語の働き」活用ガイド

杉田由仁(2021)英語授業における「言語の使用場面」と「言語の働き」活用ガイド

こちらの本を読んだ。

学習指導要領に掲載される「言語の使用場面」と関わる諸概念を提案するとともに,学習指導要領に不足している具体的な言語使用例と指導方法を提案する本。
学習指導要領を見てもどう指導したらいいのか分からないという趣旨の批判が述べられる序盤は,「学習指導要領に指導方法なんて書かれたら嫌だけどね」と思いながら斜めに読み飛ばしたのだが,本書で紹介されている指導例(後述)が仮に指導要領に掲

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『英語教師を変える楽しい学び直し』

『英語教師を変える楽しい学び直し』

登田龍彦(2021)『英語教師を変える楽しい学び直し 自律的学習を導く語彙・文法指導の原点』 を読んだ。

「ことば(母語そして外国語)への気づきを通して,自律的学習のできる子どもを育てる」(p. 279: 強調引用者)という筆者の目的の達成への道は決して楽ではなさそうだが,英語学を軽くかじってから英語教師になった自分としては総じて面白く読めた。

本記事では本書の中から特に英語教師全体に共有され

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松岡亮二(編著)『教育論の新常識 格差・学力・政策・未来』

松岡亮二(編著)『教育論の新常識 格差・学力・政策・未来』

学校教育における「格差」「学力」「政策」そして「未来」に関わる計20もの章があり,どの章が「必読」であるかは人によるところはあるでしょうが,私の雑な感想を一言で言えば,学校教育の話をする可能性のある人全員に読んでもらいたい本です。

GIGAスクール構想であれ,コロナ対応のオンライン授業であれ,大学入試であれ,21世紀型スキルの教育であれ,何を話題にするにしても本書の内容(またはそれに近いもの)を

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『民主主義の育てかた』読書会 #5

『民主主義の育てかた』読書会 #5

神代(2021)『民主主義の育てかた』の読書会。前回の記事から時間が空いたが第4章・古里貴士「公害教育論—生存権・環境権からのアプローチ」を見ていく。

全体としては今流行りのESD(持続可能な開発のための教育)を捉え直すべく,戦後教育学における「公害と教育」問題を取り上げているが,やはり英語教育を中心として言語教育に関わる人間の集まる読書会というだけあり,言語教育の抱える課題に即して捉えられる部

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