- 運営しているクリエイター
#小説
ゴジラ対横綱 完全版(2020年)
「観音崎。」
車に乗った横綱はそれだけ言った。ハンドルを握る付き人の大車輪は、たっぷりと10秒は黙って、聞き返さず「はい」とだけ言った。
脳裏に疑問は無限に浮かんだが、全ては無意味だと感じた。横綱が行くと言えば行く。横綱が相撲を取ると言えば取る。やれと言えばやる。それが付き人の大車輪の役目だ。
車が発進する。車内には大車輪と横綱だけ。両者無言だ。
「ラジオ、いいすか。」
「ん。」
大車
BWD:アヴァタール・リキシ
朝、少年が目覚めるとリキシになっていた。
ベッドを降り、力強く四股を踏み、かしわ手を打つ。まごうことなきリキシである。
「タダシ?どうしたの?」
四股の荒々しき音を聞き付けて少年……タダシの部屋に現れた母親はいるはずのないリキシに卒倒し、床にひっくり返った。
「母さん!」
タダシは床に倒れ伏した母をそのたくましいリキシの腕で抱き上げる。普段のタダシからは大きく見える母はリキシの目線ではひど
国技館ロイヤルランブル外伝『ラストクリス升席』
※作者より
本作はカクヨム掲載のためのリライトです。また「 #書き手のための変奏曲 」参加作品でもあります。
トンタントンタン。
トンタントンタン。
トンタントンタントンタントンタン。
シャンシャンと鳴り響く鈴の音に合わせて相撲太鼓が軽快にリズムを刻む。その年は、久しぶりのホワイトクリスマスだった。
相撲シティ両国。日本有数の観光地として知られるこの土地は、雪が降っても喧騒が収まることはない
星の海は力士の土俵 スペースリキシVSシリーズ #1200文字のスペースオペラ
ビロードの黒いカーテンに、ネコが爪で穴をあけたが如き星々が瞬く空間を、力士が征く。巨大なスペース障害物が、あの伝説的リキシレスラーが放つロケット頭突きめいた姿勢で巡行する力士の髷にあたっては、何の障害にもならずに砕けて散っていった。
長距離遠洋漁業船「大漁丸」こそが、この力士に名付けられた四股名である。リキシブレインにあたる操縦席で、出てくる時代を間違えている古典的な海の男が艦長席に身を委ねて鼻
『元傭兵デリックの冒険』より「力鬼士(リキシ)の洞窟」#3
【前回】大柄な男が小柄な男を背負い、スコップを杖に洞窟を進む。入口は塞がれ、松明も角灯もなく、暗闇の中を歩く。ところどころに光る苔やキノコがあり、ぼんやりと道を照らしている。「くそったれ」「ああ、神よ……」
出口を求め、風の吹いてくる方へ向かったデリックとヴァシリーだが、力鬼士は次々湧いて来て、次第次第に追い詰められる。光る苔やキノコも次第に増える。「な、仲間の方とかは」「いない。俺は単独行動だ
『元傭兵デリックの冒険』より「力鬼士(リキシ)の洞窟」#2
【前回】「力鬼士の棲む洞窟に財宝があるって、噂を聞いて。昨日黙って出ていったんです」
デリックは首を傾げた。表情と沈黙に促され、少女、ソフィアは続けた。
「うちは貧乏です。母は二年前の疫病で死んで……父は仕立て職人なので、二人でなんとか食べてはいけます。けれど、きっと私の将来のことを考えて……」少女は顔を手で覆い、また泣き出した。デリックは彼女を宥めながら、店の奥へ連れて行く。女房が事情を察し
われら新天星開発公団
泥7節から10節ころのボルスは俗に「新人殺し」と呼ばれる。岩泥混質の滑らかな挙動に目測を狂わされたパイロットが操作を誤り、大概は張り手を横から浴びて爆散する。5建高の巨躯と相反する反応速度から、8期公団までは泥節中の「整地」が禁止された程だ。
今は違う。爆炸弾頭に燃束、何より新型の機体がある。ボルスの挙動をサイトに捉えつつ、飛んでくる熱誘導ミサイルも……え?
ミサイル?
「モリタ!3番機!」
「