大柳 貴

上智大学言語教育研究センター非常勤講師。フランス語教えてます。時々Liveで歌ってます。

大柳 貴

上智大学言語教育研究センター非常勤講師。フランス語教えてます。時々Liveで歌ってます。

記事一覧

パリ・オリンピック総括

 この夏の雑感。オリンピックで良くも悪くも注目されたパリ。競技場を離れてセーヌ川で挙行された開会式など斬新な部分も確かにありましたが、自分の生首持ったマリー・ア…

大柳 貴
15時間前
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丸の内線開通70周年展

 東京で今や「日本のムンバイ」と呼ばれる街葛西。何故か理由は解りませんが、それほどこの街には、昨今インド人(それもコンピューター関係のエンジニア)が数多く在住し…

大柳 貴
1か月前
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白内障入院顛末記

 半年ほど前から左目の視力が急激に下がり、視野に白い靄がかかったようになりました。日常生活に支障が出始めたので、漸く意を決して眼科へ赴き、一日も早く手術をという…

大柳 貴
2か月前
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文法は会話に必要か?

 大学で外国語(フランス語)の授業をしていると、どうしても文法的な説明をしなければならないことがあります。良く「会話する上で、文法なんかどうでも良い」と仰る方が…

大柳 貴
3か月前
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フランス語由来の外来語

 新年度が始まり、各大学でも新1年生の授業が徐々に始まっています。私が担当する授業でも、既に1回目の授業を行いました。大学に入って初めて学ぶいわゆる「第2外国語…

大柳 貴
4か月前
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「世界のオザワ」逝く

  世界的指揮者である小澤征爾さんの訃報が齎された。この10数年は体調を崩されることが多く、もうあのエネルギッシュな指揮ぶりを見ることは叶わないのかと危惧してい…

大柳 貴
5か月前
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「英語=国際化」?

 大阪府の吉村知事が、大阪公立大学の完全秋入学制と、授業での英語第1言語化を公表して物議を醸している。  第1の問題は、地方の1首長が公教育の内容に介入しようと…

大柳 貴
6か月前
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セラミックヒーター顛末記

 私が住んでいるのは賃貸マンションで、暖房器具は専ら備え付けのエアコンである。ただエアコンは部屋全体が温かくなるのに時間がかかるし、何より電気代が高額になる。そ…

大柳 貴
7か月前
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1年の終わりに

  2023年を振り返って一番に思うことは、未曽有のパンデミックと思われた新型コロナウイルスによる所謂「コロナ禍」が、感染症第5類に分類されたことで一応の収束を見た…

大柳 貴
8か月前
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追憶の洋食屋

 今から約半世紀前、新宿3丁目の要通りの片隅に「キッチンいこい」という洋食屋さんがあった。その店を見つけたのは本当に偶々のことだったのだが、カウンターとカウンタ…

大柳 貴
9か月前
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備忘録としての『シェルブールの雨傘』解題

 社会人講座で教材として取り上げたフランス映画『シェルブールの雨傘』(Les Parapluies de Cherbourg, 1964)には、監督であるジャック・ドゥミ(Jacques Demy)の様々…

大柳 貴
10か月前
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映画で学ぶフランス語

 今年度の日本獣医生命科学大学での社会人講座(2023.6/20~8/29)は、数年ぶりの「映画で学ぶフランス語」をやることにして、久々に『シェルブールの雨傘』(Les Paraplui…

大柳 貴
11か月前
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誤用されたフランス語

外国語が英語だけだった時代は過去のもの、今や様々な外国語がカタカナ言葉となって、商品名やお店の名前などに使われています。フランス語もその例に漏れず、テレビや雑誌…

大柳 貴
1年前
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板書

 私が担当する授業のアンケートで「この授業で良かった点を自由に書いて下さい」という項目に、意外にも「板書がキレイで見やすかった」という意見が毎年数件あります。別…

大柳 貴
1年前
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映画「怪物」を見て

 是枝裕和監督の「怪物」を見てきました。見た上で感じたこと、思うところを書いていこうと思いますが、これから作品を見る方には、内容についてネタバレになる可能性があ…

大柳 貴
1年前
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授業雑感②~片付けられない人たち

  授業雑感①(https://note.com/takashi_oyanagi/n/n451d2fbf2120)で書いた通り、現代の教室には教卓周りに色々な危機が設定されています。勿論高校までの教室と同じよ…

大柳 貴
1年前
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パリ・オリンピック総括

パリ・オリンピック総括

 この夏の雑感。オリンピックで良くも悪くも注目されたパリ。競技場を離れてセーヌ川で挙行された開会式など斬新な部分も確かにありましたが、自分の生首持ったマリー・アントワネットとか、最後の晩餐のLGBTQによるパロディなど物議を醸した部分も非常に多かったと思います。キリスト教を揶揄した部分に関しては、数年前にイスラムを揶揄してテロ事件を惹起したシャルリー・エブド事件をもう忘れてしまったのかと、いささか

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丸の内線開通70周年展

丸の内線開通70周年展

 東京で今や「日本のムンバイ」と呼ばれる街葛西。何故か理由は解りませんが、それほどこの街には、昨今インド人(それもコンピューター関係のエンジニア)が数多く在住しているそうです。恐らく中央区辺りにある会社に地下鉄東西線一本で出られて、尚且つ千葉寄りにあるこの街は家賃が安いという特徴があります。恐らくその辺が主たる理由となって、葛西在住のインド人が増えているのではないかと思われます。

 そしてこの葛

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白内障入院顛末記

白内障入院顛末記

 半年ほど前から左目の視力が急激に下がり、視野に白い靄がかかったようになりました。日常生活に支障が出始めたので、漸く意を決して眼科へ赴き、一日も早く手術をということで本日日帰り入院の手術を受けてきました。

 春先に最初に訪れた眼科クリニックでの診断は白内障で、水晶体再建手術をするのですが、事前の説明では水晶体の袋に穴を開け、白い靄の正体である老廃物を吸引し、そこに眼内レンズを挿入するという手順で

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文法は会話に必要か?

文法は会話に必要か?

 大学で外国語(フランス語)の授業をしていると、どうしても文法的な説明をしなければならないことがあります。良く「会話する上で、文法なんかどうでも良い」と仰る方がいますが、それは表面的に半分間違っていますし、究極的には完全に間違っているとしか言えません。

 会話するということが、どの程度の内容に関わるのかにもよりますが、恐らく初対面の挨拶とか自己紹介、日常的な買い物程度の表現であれば、フレーズを

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フランス語由来の外来語

フランス語由来の外来語

 新年度が始まり、各大学でも新1年生の授業が徐々に始まっています。私が担当する授業でも、既に1回目の授業を行いました。大学に入って初めて学ぶいわゆる「第2外国語」の授業なので、例年私の授業の1回目は「初めて学ぶフランス語」という導入の為の自作プリントを配布し、フランス語がどういう言葉なのか、その特徴やアウトラインを概説することに努めます。

 私たちの周囲にある外来語、いわゆるカタカナ言葉の中に

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「世界のオザワ」逝く

「世界のオザワ」逝く

  世界的指揮者である小澤征爾さんの訃報が齎された。この10数年は体調を崩されることが多く、もうあのエネルギッシュな指揮ぶりを見ることは叶わないのかと危惧していた。事実入院、手術の報に続き、指揮のキャンセル・休演のニュースにも慣れてしまっていたし、松本のフェスティバルで同世代のシャルル・デュトワに代役を依頼して、そのデュトワが大曲を振り切ったのを見て、何とも言えない寂しさを感じてしまった。年齢的に

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「英語=国際化」?

「英語=国際化」?

 大阪府の吉村知事が、大阪公立大学の完全秋入学制と、授業での英語第1言語化を公表して物議を醸している。

 第1の問題は、地方の1首長が公教育の内容に介入しようとしていることであろう。もし仮に吉村知事が、自分で私立大学を所有していて理事長などの地位にあるのであれば、いかなる教育内容に関する提言も自由に行えると思うのだが、いかんせん大阪公立大学は市立大学と府立大学を無理くり合併させて出来た公立大学で

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セラミックヒーター顛末記

セラミックヒーター顛末記

 私が住んでいるのは賃貸マンションで、暖房器具は専ら備え付けのエアコンである。ただエアコンは部屋全体が温かくなるのに時間がかかるし、何より電気代が高額になる。そこでまでは電気ストーブを併用し、暖冬の時は電気ストーブだけでひと冬を乗り切ったこともあった。

 使い続けた電気ストーブだが、4本あった石英管が使用開始から10年を超えた辺りから1本、また1本と切れて点かなくなり、ついに最後の1本を残すの

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1年の終わりに

1年の終わりに

  2023年を振り返って一番に思うことは、未曽有のパンデミックと思われた新型コロナウイルスによる所謂「コロナ禍」が、感染症第5類に分類されたことで一応の収束を見たことでした。

  このコロナ禍によって抑制されたこと、目や耳を塞がれたこと、新たにしなければならなくなったこと、諦めなければならなかったこと、考えざるを得なくなったこと、気にしなければいけなくなったこと、口に出してはいけなくなったこと

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追憶の洋食屋

追憶の洋食屋

 今から約半世紀前、新宿3丁目の要通りの片隅に「キッチンいこい」という洋食屋さんがあった。その店を見つけたのは本当に偶々のことだったのだが、カウンターとカウンター横のテーブル席から調理の行程が丸見えのオープンキッチンの明るい店内からは、洋食屋独特の美味しそうなソースの香りが店外にまで漂っていた。食品サンプルを見るとどれも旨そうな料理ばかりが並び、しかも値段も安い。何度かこの店の横を通る日を過ごした

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備忘録としての『シェルブールの雨傘』解題

備忘録としての『シェルブールの雨傘』解題

 社会人講座で教材として取り上げたフランス映画『シェルブールの雨傘』(Les Parapluies de Cherbourg, 1964)には、監督であるジャック・ドゥミ(Jacques Demy)の様々な仕掛けがあり、一度見ただけでは気付かなかったこれらのギミックやオマージュに映画を見る度に気付き、初見から約半世紀を経た今日でもなお新たに気付かされることが多々ある。この項ではそれらの備忘録として

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映画で学ぶフランス語

映画で学ぶフランス語

 今年度の日本獣医生命科学大学での社会人講座(2023.6/20~8/29)は、数年ぶりの「映画で学ぶフランス語」をやることにして、久々に『シェルブールの雨傘』(Les Parapluies de Cherbourg、1964)を取り上げた。この作品は私のフランス語学習の原点ともいえる作品で、映画館のみならず、ビデオ、DVDでの鑑賞回数をトータルしたら一体何回になるのか見当もつかないほど繰り返し見

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誤用されたフランス語

誤用されたフランス語

外国語が英語だけだった時代は過去のもの、今や様々な外国語がカタカナ言葉となって、商品名やお店の名前などに使われています。フランス語もその例に漏れず、テレビや雑誌などのメディアを通じて色々な言葉が広く知られるようになってきました…が、そのカタカナ言葉に若干問題があるのです。今日はそうした例をいくつかご紹介したいと思います。

① ミルフィーユ?
最初はご存じミルフィーユ。ミルフィーユと言えば薄

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板書

板書

 私が担当する授業のアンケートで「この授業で良かった点を自由に書いて下さい」という項目に、意外にも「板書がキレイで見やすかった」という意見が毎年数件あります。別段字が特別上手でもないし、どちらかと言うと早書きなんですが、何故か意図せずお褒めの言葉を頂きます。理由を考えるに、恐らく自分が学生の時に、どんな風にノートを取っていたのかが今の板書の評価に繋がっているような気はします。

 私が授業する側

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映画「怪物」を見て

映画「怪物」を見て

 是枝裕和監督の「怪物」を見てきました。見た上で感じたこと、思うところを書いていこうと思いますが、これから作品を見る方には、内容についてネタバレになる可能性がありますので、具体的な記述は出来るだけ避けたいと思います。またこれはあくまでも私の個人的な映画を観た断片的感想ですから、それ以上でも以下でもないと思って頂ければ幸いです。誰でも映画を自由に論評する権利がありますし、一方的な見解の押しつけをする

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授業雑感②~片付けられない人たち

授業雑感②~片付けられない人たち

  授業雑感①(https://note.com/takashi_oyanagi/n/n451d2fbf2120)で書いた通り、現代の教室には教卓周りに色々な危機が設定されています。勿論高校までの教室と同じように、ただ教卓と黒板があるだけの大学もありますが、大学によってはPCや書画カメラなどがセットアップされ、教卓には音声や映像を授業時に使うためのコントロールパネルがビルドインされているところもあ

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