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さよなら、パーソナリティ障害|人格障害のゆくえ|10→6→1

パーソナリティは似ているものを集めれば連続体のように見えます。これは考えてみると当たり前かもしれません。このnoteのイラストはそんな連続性を思い出させてくれます。

一番良い例が、今回は取り上げなかったですが、A群に関しての連続性です。パーソナリティ障害は、A, B, C と3群に分かれており、似た症状でまとめた形にはなっています。それが成功しているかどうかは本文でご説明しましょう。

そして、DSM-5では、A群の統合失調症スペクトラムの連続体で見直しが行われました。

タイトルの10→6→1は、現在10つあるパーソナリティ障害が、次期DSM改訂では6つに、そしてゆくゆくは1つ(あるいはゼロ)になっていくかもしれないということを示しています。

境界性と自己愛性パーソナリティ障害(誇大型)には連続性があるのでしょうか?
発達年齢としては、自己愛が幼児期または学童期 、境界性が思春期なんでしょうか?
境界性パーソナリティ障害の不安定さが落ち着くと、安定した分、自己愛性のような雰囲気が滲み出すように感じるのですが。

高間しのぶの質問箱より

※今回の記事はラジオでも視聴できます。テキストを見ながらどうぞ▼

※この記事は、Twitterの質問箱に来た質問を深掘りして回答したものです。

■パーソナリティ障害の問題点

パーソナリティ障害は、DSM-IIIで登場して以来、現在のDSM-5になっても、診断基準が揺れ続けているということを、まずチェックしておきましょう。つまり、それだけ曖昧な診断基準なのです。

そのためパーソナリティ障害と診断されている場合は、もう一度見立てを立て直したほうがよさそうです。

ところで冒頭で少し説明した通り、パーソナリティ障害は大きく3分類あります。

  • A群:奇妙で風変わりな人々

  • B群:感情的で移り気な人々

  • C群:不安で内向的な人々

しかし、この分け方も、臨床的な意味を見出しにくいのです。つまり、様々な病態が混在しており、連続性に欠ける部分が多々あるのです。

以前、古い分類(カーンバーグによる, 1975)として、精神病圏(PPO)、境界圏(BPO)、神経症圏(NPO)という人格構造を想定することがありました。これに、A, B, C群が対応しているようにも見て取れます。いづれにしても臨床的な意味合いの薄れた、理論的な(精神分析的な)区分なのです。

DSM-5の次回の改訂(DSM-6?)では、このパーソナリティ障害が大きく改変されると予想されています。DSM-5には、現在検討中のものを集めた章、Section IIIがありますが、そこには、パーソナリティ障害が現在の10類型から、6類型に縮小される草案が示されています(*1)。6類型のパーソナリティ障害とは…

  • 反社会性

  • 境界性

  • 自己愛性

  • 回避性

  • 強迫性

  • 統合失調型

(*1 DSM-5 Section III, Alternative DSM-5 Model for Personality Disorders, p.761, 2013)

つまりDSM-5で存在していた、妄想性、スキゾイド、演技性、依存性の4つのパーソナリティ障害がなくなります。なくなったら困るかというと、そういうことではありません。

妄想性・スキゾイドについては統合失調症に統合され、演技性は境界知能として診断され、依存性は幅広い精神疾患で見られるものであり、各精神疾患の一部として位置付けされて治療されていくでしょう。

■パーソナリティ障害はなくなる?

次期DSM-6?では6つに縮小されるパーソナリティ障害ですが、さらに縮小される可能性があります。(*2)

  • 反社会性:DSM-5では、ADHD的行動(秩序破壊、衝動、素行症)に、この反社会性パーソナリティ障害が追加されたので、発達障害の中に含まれていくかもしれません。
    ASDで知的障害がない群があるように、ADHDで反社会的な群(サイコパス)が登場するかもしれません。これは高間の試論です。
    あるいは、反社会性だけは、パーソナリティ障害として残るかもしれません。

  • 境界性:発達障害(境界知能、軽度知的障害)、愛着不全、愛着障害に振り分けられるでしょう。

  • 自己愛性:境界知能、愛着不全に振り分けられるでしょう。

  • 回避性:幅広い精神疾患に見られるものであり、各精神疾患の一部として位置付けされるでしょう。

  • 強迫性:複数の見立てが混在している状態なので、正しい見立ての上で治療されるようになるでしょう。
    つまり、①知的能力障害はない人々であり、②愛着不全の可能性あり、③統合失調症圏の可能性あり。

  • 統合失調型:統合失調症に統合されるでしょう。

こうなると、パーソナリティ障害という区分は必要なくなってきますね。

(*2 上級カウンセリングセミナー講義テキスト, 高橋和巳+野口洋一, 2018)

■BPDとNPDの関係性について

例えば、境界性(BPD)をみると、境界知能(軽度知的障害)、愛着不全、愛着障害が混在しています。この1つの疾患の中でさえも、連続性がないのです。

つまり、愛着不全と愛着障害は愛着という視点で分断されているし、彼らと境界知能は全く別モノです。

そのような連続性のない疾患がゴチャッと一緒の疾患に含まれていること自体ムリが多いのです。それゆえ、パーソナリティ障害の未来は暗いとしかいいようがないのです。

ただ、そういうことに目をつぶって、BPDとNPDを見てみると、自己愛性(NPD)は境界知能、愛着不全が混在している状態でした。

このように概観すると、境界性と自己愛性はかなり近接した疾患のように見えます。過敏性の自己愛は愛着障害の別名とも考えられるので、BPDとNPDは連続しているように見えるのも当然ですね。

20年ほど前に読んだ平井孝男先生の本 (*3)に、境界性>自己愛性>演技性 という流れで、境界性パーソナリティ障害が納まっていくようなことが書かれていました。(*3 境界例の治療ポイント, 平井孝男, 創元社, 2002)

ということは、質問者さんの感想、BPDの不安定さが落ち着くと、安定したことによってNPDの雰囲気が出てくるように感じるというのは、素晴らしい臨床知だと思います。きっと熱心に臨床をされているのでしょう。

このへんは「自己愛性スペクトラム症」なんて連続体が考えられるかもしれませんね(嘘)。

現在私が感じているのは、BPDの診断の中には、誇大型NPDと過敏型NPDが混在しており、また誇大型NPDの中に演技性が混在しているように思っています。

精神発達年齢でみると、誇大型NPDは学童期、過敏型NPDは幼児期(かりそめの成人期)、BPDは幼児期~思春期まで幅広く入っていくように思います。

もう15年くらい前に書いた記事ですが、まだ古臭くなっていないと感じます。参考にしてください▼

境界性パーソナリティ障害とは情緒が不安定な障害です。

■まとめ

  • DSM-5をみると分かるように、パーソナリティ障害はそれぞれ適切な疾患へと統合されつつある。

  • 次期DSMの改訂では、10類型→6類型に縮小され(DSM-5セクションIII)、ゆくゆくは反社会性パーソナリティ障害だけになるかも?(高橋和巳)

  • 臨床的には、BPDが納まっていくと、NPDへ移行していくように見える。

□離島の本屋|ラジオおやすみカフェ


今日のラジオおやすみカフェのテーマは…この夏読んでいる本です。詳細はラジオをお聴きください。

離島の本屋(ふたたび)

■他の助けを求めるのもいいでしょう

あなたが愛着の問題を抱えている場合は、自分の物語を十分に話せる臨床心理士などの専門家に相談するとよいでしょう。もし、いまのカウンセラーがいまいちと感じるのなら、別のカウンセラーを探しましょう。あなたにとって良いカウンセラーはあなたの一生の財産になります。あなたのカウンセリングがうまくいきますように。

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