愛着障害は治ります。PTSD(親が原因)だから|ただトラウマ治療では治らないかも
愛着障害関連で売れている本についての感想をいただきました。その一部の引用についての考えをお伝えします。
※今回の記事はラジオでも視聴できます。テキストを見ながらどうぞ▼
※この記事は、Twitterの質問箱に来た質問を深掘りして回答したものです。
■愛着障害には原因がある
愛甲先生の本は読んだことはありませんが、DSM-5が見立ての基準になります。それによると愛着障害は、下記のように明記されています。
愛着障害はPTSDである
その原因は養育者との間に情緒交流が希薄な(あるいはなかった)ことによる
PTSDである限り、そこには「外的な原因がある」ということです。そしてそれは「その原因」によって発症しているということです。PTSDとはそういうものです。
愛着障害についても、DSM-5の診断基準に基づいて治療が行われるべきだと思います。
となると、トラウマ治療をすることになりますが、世の中の多くのトラウマ治療は単一トラウマへの治療ですので、それを愛着障害に横展開するには無理があるのも事実です。注意しないとトラウマ治療がトラウマを作ってしまうことになりかねません。これを治療トラウマといいます。
では愛着障害へはどのようにアプローチするのか?それは皮肉にも愛甲先生の主張の中にヒントが隠されていました。
■愛甲修子先生の主張の検証
愛甲先生の本の出版が2016年ですので、私の著書「孤独と愛着」が出た年と同じですね。愛甲先生も私も違う立場から、愛着という深淵な海を紐解いていったということです。愛甲先生の本とは違って、私の本は地味に(笑)、根強く読まれ続けているので、よろしければ手に取ってください。
精神分析ではかつては「虐待は子どもの幻想である」なんて、トンデモ理論があったりしました。それが今ではPTSDのトップバッターになり正常化されましたが、まだその幻は生きているのでしょうか。質問者さんが引用いただいた愛甲先生の本の箇所について、私なりの考えをお伝えします。
結論から申し上げると、臨床の現場で愛甲先生が出会っている人々は、愛着障害ではなく【愛着不全】で、それも軽い不全感のある人々ではないでしょうか。これは岡田先生のいうところの愛着障害スペクトラムの中に入ってくる人々です。
愛着障害を虐待の文脈で語ることについては正しい見方です。異論をさしはさむ余地がありません。ですから愛着障害はPTSDの仲間として取り上げられているのです。
確かにそういう人々はいます。その多くは愛着不全の人々です。あるいは愛着障害二世(異邦人二世)であって、愛着障害の親をもつ子どもたちの話です。ですから彼らは、愛着障害ではありません。
しかし愛着障害に似ている症状を呈す場合もあります。愛着臨床の長いカウンセラーでも、愛着障害ではない人を愛着障害とミスリードしてしまうことはたまに起こることです。そのくらい愛着障害は見立てが難しいともいえます。
愛着障害は治ります。これは事実です。しかしDSM-5によると、愛着障害はPTSDです。とすると、誰かからの影響が原因となって発症したものです。その原因は養育者との関係であるとDSM-5には記載されています。
誰かのせいにする傾向があるのは学童期や思春期心性の人々に多く、彼らの多くは愛着不全です。自分では持ちきれないほどの愛着対象への愛情の飢餓感があるので、誰かのせいにせずにはいられないのです。
そして愛着障害の人で、その傾向が見られるのは思春期の人々です。
これについては「回避性愛着スタイルは不安型にみえるときがある|すぐに答えを求めたがるのは学童期・思春期の特性」をご覧ください。
成人になった愛着障害は誰かのせいになどしません。ということを、臨床を通して学ばせてもらっています。
以上から、おそらく愛甲先生は、20代~30代の愛着障害の人、あるいは愛着障害でなくて愛着不全よりの話をしているのかもしれません。
先に述べましたが、愛着障害にトラウマ治療を使うことは治療トラウマを作ることもあります。かなり注意が必要で簡単なことではありません。愛着障害は単一トラウマによるPTSDではなく、複雑性PTSDだからです。
ですから、愛甲先生のいうように「愛着障害は親のせいではないから、カウンセリングで受容されていけば治るよ」というのは結果的には良い効果をあげるでしょう。なぜなら受容と滋養に満ちたカウンセリングはこころの傷に一番効くからです。愛着障害のような無数の傷を負った複雑性PTSDには一番効きます。愛甲先生の主張の前半部には異論がありますが、後半部は確かなことです。つまり愛甲先生の主張を訂正させていただくと…、
養育者が原因で愛着障害を発症するが、カウンセリングで受容されていけば治るよ。
◇誰かのせいにすること
愛着障害の人は心理的に「かりそめの成人期」を生きています。ということは完全な「成人期」ではないということです。
こころが成人期に達した人は、すべてを自分のせいにします。誰かのせいにしません。そのためにうつ病になることもあります。自分のせいにする、大人になるとは、そういうリスクと背中合わせなのです。
ところで愛着障害の人はかりそめの成人期なので、対象へのアクションが誰かのせいにしているようにみえる場合があります。彼らも、愛着障害から回復し、かりそめの成人期を卒業して成人期になれば、誰かのせいにすることもなくなります。
◇自分のせいにする
いっぽうで愛着障害の人は、自分の周囲に対して常に緊張状態にあります。誰からいつ攻撃されるか分からないために、敏感に高性能レーダーで周囲を疑ってかかっています。
安心感がない環境を生きています。この状態では自分のせいにしておかないと、いつ周りから攻撃されるか分かりません。そのため生きのびるために自分のせいにすることが多いです。
これは成人期の自分のせいにすることと根本的に異なっています。
成人期は安心感があるから、自分で責任を取れて自分のせいにします
愛着障害は安心感がないから、何でもかんでも自分のせいにします
■まとめ
愛着障害はPTSDであって原因は養育者にあることが、DSM-5に記載されている。
愛着障害はトラウマ治療ではうまくいかないことも多い。なぜなら複雑性PTSDだから。
トラウマ治療よりも受容と滋養に満ちたカウンセリングが効く
愛着不全や愛着障害の子どもを愛着障害と誤診されている場合も多い。
■他の助けを求めるのもいいでしょう
あなたが愛着の問題を抱えている場合は、自分の物語を十分に話せる臨床心理士などの専門家に相談するとよいでしょう。もし、いまのカウンセラーがいまいちと感じるのなら、別のカウンセラーを探しましょう。あなたにとって良いカウンセラーはあなたの一生の財産になります。あなたのカウンセリングがうまくいきますように。
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