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虐待の証拠はマイルドに|愛着の治療には、トラウマ治療は封印するくらいがちょうど良い☺

今回は、昨日の記事に対しての質問です。昨日の記事はこちら▼

トラウマに向き合うなんてできません|【回答】向き合う必要はありません。

愛着障害の治療においてトラウマは話さなくてもいいが、虐待の告知は必要なのですよね...。トラウマを少しずつ語ることで認めざる得なくなり、そのタイミングで虐待の事実確認が為されるのかと思ってましたが。

高間しのぶの質問箱より

※今回の記事はラジオでも視聴できます。テキストを見ながらどうぞ▼

※この記事は、Twitterの質問箱に来た質問を深掘りして回答したものです。

■愛着障害のトラウマとは

愛着障害の治療とは、①虐待の事実を受け入れてファンタジーが壊れること、②安全基地を構築していくこと、この2点でした。ここではまず①が大切です。
それには虐待についての告知をすることが必要です。この告知のためには、(小さな)トラウマを拾っていくわけです。その積み上げが重要です。
ここでいう小さなトラウマとは、トラウマ治療にも乗ってこない程度の、小さな、しかし確実な、トラウマ事象のことです。

これは何かというと「情緒的ネグレクト」ですね。これについては、「相談者が語ろうと思って語っているものではない」ことが多いです。相談者はそれをトラウマと思っていない節(ふし)がある。知らず知らずに語っていることの中に、それらは含まれています。ここを治療者は見逃さないことです。ちゃんとメモしていく。私はジェノグラムにぎっしりとメモします。

性的虐待、心理的虐待、身体的虐待、ネグレクトなどは目に見える虐待と言って、分かりやすいですね。ですから「トラウマ」と本人も周囲も同定しやすいです。

それとは違って情緒的ネグレクトは目に見えません。ですから、本人の何気ない会話にそれは表現されていきます。本人もトラウマと思っていないので、話しやすいわけです。

ここを拾っていくのです。本人もトラウマと思っていないので、治療者側も、ここはそれほど突っ込みません。相談者、治療者の双方で、何気に過ぎていく事象ですが、治療者は「そのこと」を知っているわけです。「そのこと」とは、それがトラウマであることを知っているということ。

また、質問者さんの「虐待と認めざるを得なくなり…」というのは、ちょっと違います。それをやると、追い詰めていくような感じになって、昨日紹介した中井先生の本の中の「検事的立場」になってしまいます。事実だけで積み上げてグーの音も出なくさせるのは裁判の場であって、臨床ではありません。侵襲的(しんしゅうてき)でさえあります。そこは避けていかないと、逃げ道を用意しておかないと、途中で愛着障害の治療が座礁するでしょう。

虐待の告知は早い段階で為されますが、侵襲的にならないようにする必要があります。

検事的立場にならないためには、事実収拾よりも大切なものがあるということです。まずは全体像ー家族の風景ーをつかんでおくこと、真実は不正確であってもいい(中井久夫)。こういう見方がカウンセラー側でできるようになると相談者も安心します。これが、カウンセラーとの間で構築する②安全基地ですね。これがあってこその虐待の告知につながります。中井先生の本には、次のような記述も見られます。

虐待の証拠は、治療者が鬼の首を取ったようにしないほうが良いというのが私の経験です。ご両親が早く亡くなっていますね、といったら、その後の虐待を一気に話されたわけですけれども、それから非常に関係が不安定になりました。

徴候・記憶・外傷|中井久夫(p.154, みすず書房, 2004)

■トラウマ治療よりも愛着治療を優先させる理由

例えば実父や養父による性虐待を考えます。性虐待のトラウマは大きなものですが、愛着臨床では、実母と子どもの間の愛着をチェックしつつ、母子関係へメスを入れて行きます。

性虐待はそう簡単には癒えないトラウマですが、そこに集中してしまうと養育者(母親)との愛着関係が置き去りにされます。

愛着障害の「親密が怖い」病理は、養育者との愛着関係が適切に形成されなかったところに起因しますので、養育者との関係を見て行く必要があるのです。養育者は、多くの場合、父親でなく母親です。
つまり本丸(ほんまる)は、父親ではなく母親なのです。父親との性虐待を中心に置いてしまうと、江戸に敵(かたき)が居るのに、長崎で合戦(かっせん)をやっているようになってしまいます。

そうならないよう、治療者はどこが本丸かを常に意識している必要があります。その中で、トラウマが話されればその治療を随時行っていくことになります。話されなければ、それが本丸でない限り、スルーしていて大丈夫です。相談者の話せないという苦悩に寄り添いながら、訥々(とつとつ)とした話に耳を傾けていれば十分です。暴く(あばく)のは止めましょう。

■トラウマがファンタジーと結びついている場合

もし、そのトラウマが本丸であるなら、トラウマを話さないのは強固なファンタジーがあるからで、そのファンタジーを尊重しながら進まなければいけません。これも愛着臨床の鉄則ですね。

ですから、この場合でもトラウマをこじ開けるようなことをしてはいけません。そんなことをすると、相談者との間で安心感や信頼感が形成されていたとしても、一瞬にして吹っ飛びます。そしてその関係は再生不能に陥るでしょう。相談者としては、もうカウンセラーを変えるしかない事態に追い込まれてしまいます。

相談者がそれを話しだすまでは時間がかかるかもしれません。1年や2年の時間はザラです。そこをカウンセラーは本丸を見失うことなく、話を聴き続ける必要があります。しかし、見立てがしっかりしていれば見失うことはありませんので、どっしりと落ち着いて愛着臨床を進めることができるでしょう。

そのくらいトラウマに対しては慎重にやっていかないと、中井先生の言葉を借りると、「用心していないと」いけないということです。

■まとめ

  • 愛着障害で語られるトラウマは本人も気がついていないくらい小さな、しかし確実な、情緒的ネグレクトである。本人はそれをトラウマと自覚していない。

  • トラウマの証拠は明確にしないほうがいい。(つまりトラウマと向き合う必要はない)

  • 養育者との愛着を扱っていくのが愛着障害の治療であって、養育者以外の誰かとのトラウマを追っていくわけではない。そのトラウマは随時処理して、愛着を扱う作業に戻る。

  • トラウマがファンタジーと結びついている場合は、トラウマをあえて扱わない配慮も必要。時とタイミングを計ること。

■他の助けを求めるのもいいでしょう

あなたが愛着の問題を抱えている場合は、自分の物語を十分に話せる臨床心理士などの専門家に相談するとよいでしょう。もし、いまのカウンセラーがいまいちと感じるのなら、別のカウンセラーを探しましょう。あなたにとって良いカウンセラーはあなたの一生の財産になります。あなたのカウンセリングがうまくいきますように。

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