野村恭彦(Slow Innovation代表 / KIT虎ノ門大学院教授)

「渋谷をつなげる30人」「京都をつなげる30人」などを数年間続けてきて、イノベーション…

野村恭彦(Slow Innovation代表 / KIT虎ノ門大学院教授)

「渋谷をつなげる30人」「京都をつなげる30人」などを数年間続けてきて、イノベーションは「スローフード」のように、プロセスを大切にし、人と人との関係性をつくり、小さな変化がさざ波のように社会を進化させていく「スローイノベーション」に向かっていくのだと実感しています

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記事一覧

トモダチ経済圏〜「終わっても仲間」がイノベーションを生む

このところ、大企業のアルムナイ(同窓生)ネットワークが花盛りだ。終身雇用が終わりを告げ、雇用の流動性が高まったため、社員の持つ知識や経験をつなぎとめたい企業の思…

スロー・イノベーション〜「スローと経済成長」の矛盾を超える視点

「スロー」を掲げて仕事をしていると、忙しい毎日を送りながらも、実は整った生活をしたいと願っている人が、実に大勢いることがわかる。みんな、「スロー」にすることを感…

「私は男でフェミニストです」に学ぶジェンダード・イノベーション

この世界はバイアスにまみれてできている。バイアスを完全になくすことは不可能だが、自分のバイアスがほかの誰かを生きにくくしているとしたら?と思うと、なんだか居心地…

市民協働まちづくりのプラットフォーム〜門川大作京都市長の本当の功績

門川大作京都市長の任期終了先週末、いつも着物の名物市長、門川大作さんが、16年間にわたり務められた京都市長の役割を終えた。 私の京都への移住と本社移転の理由は、…

100年思考〜未来の価値観で現在の文化は裁かれるのか

毎年、日本各地で開いてきた「つなげる30人」。一つの都市に関わる行政、企業、NPOから30人の主体的な参加を促し、30人が一つになって「都市の未来」をつくる、社会イノベ…

ファミリーキャリア起点の組織開発

KIT虎ノ門大学院のゼミでは、それぞれの社会人学生が自分自身の問題意識から研究テーマを選びます。その一人の修了生の研究テーマが、「自分らしい働き方」だったのですが…

「食」という魔法〜あっという間に関係性を変える圧倒的な体験価値

人との深いつながりを作ろうとしたとき、どういう形で会うのかはとても重要です.。会議室で会う、相手の家を訪問する、こちらの家に来てもらう、ランチを食べる、夜ご飯を…

週休3日制のムーブメントはホンモノか〜一緒に試してみませんか?

週休3日。なんて素敵な響きなのでしょうか。水曜日を休みにすれば、月曜火曜と働くと休みがあって、また木曜金曜ともう二日働くと、土日がきます。月曜から金曜まで毎日残…

公園3.0:地方の駅前をぜんぶ、みんなでつくる公園にすることは可能か?

まちづくりにおいて、公園は大きな可能性だと思います。渋谷にいたときは、笹塚・幡ヶ谷・初台を横断する緑道公園の整備に、地元区民のアイデアと実験を取り込むためのファ…

サステナビリティ時代のグローバル経営とローカル経営〜世界経営者会議からの示唆

最近はSDGsバッジをする人も影を潜めてしまいましたが、サステナビリティ時代への転換が当たり前になったからでしょうか、あるいは、一時の流行が過ぎて、忘れかけてしまっ…

地域の未来を観光に頼っちゃって大丈夫?

観光産業は税収につながりにくいと言われています。その証拠の一つに、京都市はこれほど多くの観光客が来ているのに、財政ワースト市町村の上位に名を連ねています。しかし…

町内会はDX(デジタルトランスフォーメーション)すべきか〜京都で感じた町内会の「濃いつながり」

地域コミュニティっている?と思いながら渋谷区に長いこと住んでいましたが、いま京都市に住んでみて、地域コミュニティの中に、ウェルビーイング(心身ともに満たされた状…

短期的に「文化で稼ぐ」だけ?〜100年後に「もっと美しい京都」をつくるために

京都は長年にわたって、文化と経済のトレードオフのバランスをとってきました。その結果、じわじわと文化や街並みを削って、経済を回してきたと言っても間違いはないでしょ…

能のお稽古を始めてみると〜ビジネスリーダーにおすすめしたい3つの理由

京都に移住してみると、能というものがたいへん身近にあることに気づいたんです。神社含め、能舞台はあちこちにあるし、お稽古をしてくれるお師匠さんもたくさんいらっしゃ…

ガソリンは高くしちゃった方が良いのか

自分ごとで言えば、ガソリンスタンドの料金表示を見るたびに、高くなったなーと感じるが、ほんとうはどうしたらいいんだろう。 ガソリン・電気・ガスの補助延長ガソリンの…

どうしたら女性優位の組織を増やし、日本社会に包摂のカルチャーをひろげていけるだろうか

私が教員をしているKIT虎ノ門大学院。これまでビジネススクールに通う人は男性が圧倒的に多かったのだが、昨年度くらいから、入学する社会人学生の男女比が女性優位に反転…

トモダチ経済圏〜「終わっても仲間」がイノベーションを生む

トモダチ経済圏〜「終わっても仲間」がイノベーションを生む

このところ、大企業のアルムナイ(同窓生)ネットワークが花盛りだ。終身雇用が終わりを告げ、雇用の流動性が高まったため、社員の持つ知識や経験をつなぎとめたい企業の思惑と、懐かしい仲間と繋がっていたい社員の気持ちが一致する。アルムナイのネットワーク化のその先に、どんなイノベーションの苗床が生まれるか考えたい。

ネットワーク1.0:同窓会次の記事は、パナソニックが中途退職者の交流ネットワーク「アルムナイ

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スロー・イノベーション〜「スローと経済成長」の矛盾を超える視点

スロー・イノベーション〜「スローと経済成長」の矛盾を超える視点

「スロー」を掲げて仕事をしていると、忙しい毎日を送りながらも、実は整った生活をしたいと願っている人が、実に大勢いることがわかる。みんな、「スロー」にすることを感覚は求めているのだけど、頭は「ファスト」を手放すことを恐れているのだ。しかし語義矛盾的ではあるが、「スロー」にすればするほど儲かる(つまりイノベーションが起こせる)ならば、「ファスト」でいることに何のメリットもないのではないか。「スローで経

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「私は男でフェミニストです」に学ぶジェンダード・イノベーション

「私は男でフェミニストです」に学ぶジェンダード・イノベーション

この世界はバイアスにまみれてできている。バイアスを完全になくすことは不可能だが、自分のバイアスがほかの誰かを生きにくくしているとしたら?と思うと、なんだか居心地が悪い。今回は、「ジェンダード・イノベーション」というキーワードに注目し、ジェンダー平等を精神論だけではなく、イノベーションの機会として捉え直す可能性について考えたい。

ジェンダード・イノベーション日経の記事に、「ジェンダード・イノベーシ

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市民協働まちづくりのプラットフォーム〜門川大作京都市長の本当の功績

市民協働まちづくりのプラットフォーム〜門川大作京都市長の本当の功績


門川大作京都市長の任期終了先週末、いつも着物の名物市長、門川大作さんが、16年間にわたり務められた京都市長の役割を終えた。

私の京都への移住と本社移転の理由は、門川市長のつくってこられた「市民協働まちづくり」がもたらした、「市民協働に関わるたくさんの仲間」の存在である。市長の16年の終盤は、財政再建、コロナ対策、いまは人口減少対策に取り組む姿ばかりが目立っていたが、私の目からみると、門川市長の

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100年思考〜未来の価値観で現在の文化は裁かれるのか

100年思考〜未来の価値観で現在の文化は裁かれるのか

毎年、日本各地で開いてきた「つなげる30人」。一つの都市に関わる行政、企業、NPOから30人の主体的な参加を促し、30人が一つになって「都市の未来」をつくる、社会イノベーションプログラムです。先日、今年度の「京都をつなげる30人」の最終報告会がありました。今年度の京都をつなげる30人で検討されたテーマの共通点は、「100年先の京都を考える」でした。100年後を嬉々として語り続けられる都市は、京都し

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ファミリーキャリア起点の組織開発

ファミリーキャリア起点の組織開発

KIT虎ノ門大学院のゼミでは、それぞれの社会人学生が自分自身の問題意識から研究テーマを選びます。その一人の修了生の研究テーマが、「自分らしい働き方」だったのですが、大企業に勤めながら2人の子育てをする社会人学生の彼女は、何度も「マミートラック」という言葉を使っていました。男性性を中心とするその伝統企業では、良かれと思って女性の成長機会を奪っているようでした。日本企業でのジェンダー平等の実現には、制

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「食」という魔法〜あっという間に関係性を変える圧倒的な体験価値

「食」という魔法〜あっという間に関係性を変える圧倒的な体験価値

人との深いつながりを作ろうとしたとき、どういう形で会うのかはとても重要です.。会議室で会う、相手の家を訪問する、こちらの家に来てもらう、ランチを食べる、夜ご飯を一緒に食べるなどなど。あなたが本当に相手との良い関係を作ろうと思った時は、いつもどうしていますか。ここでは、ただ食べるを超えた、「食の特別な体験価値」について考えてみたいと思います。

食を通して文化を知る食は、文化的な壁になることもありま

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週休3日制のムーブメントはホンモノか〜一緒に試してみませんか?

週休3日制のムーブメントはホンモノか〜一緒に試してみませんか?

週休3日。なんて素敵な響きなのでしょうか。水曜日を休みにすれば、月曜火曜と働くと休みがあって、また木曜金曜ともう二日働くと、土日がきます。月曜から金曜まで毎日残業して、それでも仕事が終わらずに土日にもはみだすような働き方をしてきた人にとって、週4日しか働かないというのは「成長の放棄」に見えるかもしれません。この週休3日の波に、企業の経営者はどう対処したらよいのでしょうか。

日本でも広がる週休3日

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公園3.0:地方の駅前をぜんぶ、みんなでつくる公園にすることは可能か?

公園3.0:地方の駅前をぜんぶ、みんなでつくる公園にすることは可能か?

まちづくりにおいて、公園は大きな可能性だと思います。渋谷にいたときは、笹塚・幡ヶ谷・初台を横断する緑道公園の整備に、地元区民のアイデアと実験を取り込むためのファシリテーションをしました。当時は、南池袋公園が話題になっていて、訪れると、カフェを中心に気持ち良い芝生の空間が広がり、公民連携の公園づくりの力を感じたものでした。今回の記事では、公園の民営化のその先の可能性を考えたいと思います。

民間のお

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サステナビリティ時代のグローバル経営とローカル経営〜世界経営者会議からの示唆

サステナビリティ時代のグローバル経営とローカル経営〜世界経営者会議からの示唆

最近はSDGsバッジをする人も影を潜めてしまいましたが、サステナビリティ時代への転換が当たり前になったからでしょうか、あるいは、一時の流行が過ぎて、忘れかけてしまったのでしょうか。グローバル企業はいま何を考えているのか、日経新聞の世界経営者会議に注目しました。

サステナビリティ時代のグローバル経営日経新聞主催の世界経営者会議のなかに、三菱ケミカルグループ社長のジョンマーク・ギルソン社長の「未来を

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地域の未来を観光に頼っちゃって大丈夫?

地域の未来を観光に頼っちゃって大丈夫?

観光産業は税収につながりにくいと言われています。その証拠の一つに、京都市はこれほど多くの観光客が来ているのに、財政ワースト市町村の上位に名を連ねています。しかし、多くの自治体が今後の税収の期待を観光と移住に求めているという現状があります。移住は国内での人の取り合いにすぎないので、どこかが出っ張ればどこかがへっこむだけです。だから国としての頼みの綱は観光になるのですが、それは100年後の未来から振り

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町内会はDX(デジタルトランスフォーメーション)すべきか〜京都で感じた町内会の「濃いつながり」

町内会はDX(デジタルトランスフォーメーション)すべきか〜京都で感じた町内会の「濃いつながり」

地域コミュニティっている?と思いながら渋谷区に長いこと住んでいましたが、いま京都市に住んでみて、地域コミュニティの中に、ウェルビーイング(心身ともに満たされた状態)を支える答えがあると感じるようになりました。たぶん移住者だからこそ、京都の「つながりの濃さ」を前提としたコミュニティ運営が新鮮であったかいものに見えたのだと思います。そして、コミュニティを一番大事な社会インフラなのだと考えるようになりま

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短期的に「文化で稼ぐ」だけ?〜100年後に「もっと美しい京都」をつくるために

短期的に「文化で稼ぐ」だけ?〜100年後に「もっと美しい京都」をつくるために

京都は長年にわたって、文化と経済のトレードオフのバランスをとってきました。その結果、じわじわと文化や街並みを削って、経済を回してきたと言っても間違いはないでしょう。私は、京都で町家保存に取り組む地主の方が「このままだと京都は、ただ世界遺産のある普通の街になるぞ」と怒りながら語っていたのが忘れられません。街並みの保存を個人に任せっきりの行政の政策に対する不満があるからです。一方で、世界的なトレンドと

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能のお稽古を始めてみると〜ビジネスリーダーにおすすめしたい3つの理由

能のお稽古を始めてみると〜ビジネスリーダーにおすすめしたい3つの理由

京都に移住してみると、能というものがたいへん身近にあることに気づいたんです。神社含め、能舞台はあちこちにあるし、お稽古をしてくれるお師匠さんもたくさんいらっしゃる。初心者向けの能舞台のイベントもちょくちょく開かれています。お師匠さんによると、能を鑑賞する人は少しずつ増えているのですが、能のお稽古をする人はとても少ないとのことです。それはそうですよね。能のお稽古をするなんてことは、東京にいたときは考

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ガソリンは高くしちゃった方が良いのか

ガソリンは高くしちゃった方が良いのか

自分ごとで言えば、ガソリンスタンドの料金表示を見るたびに、高くなったなーと感じるが、ほんとうはどうしたらいいんだろう。

ガソリン・電気・ガスの補助延長ガソリンの値上げが止まらない。それに伴い、政府のガソリン費用の補助が続いている。

次の記事にもある通り、「支援の拡充・延長は家計や企業活動への影響を和らげるためだが価格を市場で調整するメカニズムを損なう。財政支出の膨張につながり、脱炭素にも逆行す

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どうしたら女性優位の組織を増やし、日本社会に包摂のカルチャーをひろげていけるだろうか

どうしたら女性優位の組織を増やし、日本社会に包摂のカルチャーをひろげていけるだろうか

私が教員をしているKIT虎ノ門大学院。これまでビジネススクールに通う人は男性が圧倒的に多かったのだが、昨年度くらいから、入学する社会人学生の男女比が女性優位に反転した。その影響がとても面白いので、報告したい。

包摂するカルチャービジネススクールの授業は、グループワークが多いことでも知られている。ビジネスの新たな視点を学び、そのレンズを使って、新事業を構想したりする。

一人ひとりを見た時に、男性

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