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#パルプ小説
バキラが首都にやってくる
「おーい少尉、しょーうい! デートに来たぞう!」
時速500km超で飛行する機動艦の尻に突き刺さった大型砲弾、それを内側から突き破ったのは筋骨凄まじい巨女であった。
銃撃で応えた三人の兵士を、数秒かけてそれぞれ蹴り、頭突き、こぶしの一撃で昏倒させると、顔面装甲にめり込んだ銃弾を指でほじくり返しながら鉄扉を前蹴りでこじ開ける。続く通路は機動艦の先端に向けて作られている。
「ガロフ少尉、あの女は
「迦陵頻伽(かりょうびんが)の仔は西へ」
身の丈七尺の大柄。左肩の上には塵避けの外套を纏った少女。入唐後の二年半で良嗣が集めた衆目は数知れず、今も四人の男の視線を浴びている。
左肩でオトが呟いた。
「別に辞めなくたって」
二人は商隊と共に砂漠を征き、西域を目指していた。昨晩オトの寝具を捲った商人に、良嗣が鉄拳を振るうまでは。
「奴らは信用できん」
「割符はどうすんの」
陽関の関所を通る術が無ければ、敦煌からの──否、海をも越えた
死闘裁判 -Trial by Combat-
法廷の中央で、検察官の須藤と対峙する。
距離二メートル。
裁判官の、被告人の、傍聴席の、検察席の、全ての視線が、俺と須藤の二人に集まっていた。
半年前、足立区で起きた、中学校教諭一家殺害事件。
被告人の沢木に対し、検察は死刑を求刑し、弁護人である俺は、沢木のアリバイや、不当な取り調べ、証拠の不明瞭な点を論拠に無罪を主張した。
死刑と、無罪。
互いの主張は真っ向から対立した。
従っ
「青き憤怒 赤き慈悲」
柔い背に刺棒を挿れる度、琉の華奢な身体は悶え、施術台を微かに揺らす。
額の汗を拭い、俺は慎重に輪郭線を彫る。
もう後戻りはできない。
深呼吸。顔料の鈍い香りで気を静めると、十年来の教えが脳裏に蘇る。
「尋、邪念は敵だ。心が絵に表れる」
師匠は姿を消し、人の背を切り刻む悪鬼へ堕ちた。
発端は、俺の背が青く染まった日。
◇
一週間前。幾年も耐え忍び待ち望んだ独立の記念に、俺は自作
【最期寿司】 #逆噴射小説大賞2023
老舗『なりた寿し』の板前、成田セイゴはまだ二十代中頃ながら、握りの腕も包丁さばきも、店主である父ロクゾウに引けをとらなかった。
そして、すれ違った者は残らず目を奪われる、端麗にして精悍な顔つきの男だった。
客たちはこぞってセイゴの力量と容姿を褒め称えた。政治家や財界人の客はみな、この若人がうちの息子であれば、養子にこないか、などと半ば本気で言うのだった。
父ロクゾウは、いいえ倅はまだまだで
【空港税関-怪物図鑑】 #逆噴射小説大賞2023
空港のバックヤード、冷たい床を背に、腕に渾身のチカラを込めて、俺はチュパカブラの首を締めていた。
なんだってチュパカブラの首なんか締めているのか? 仕事だからだ。
俺は税関職員だ。といっても、一般にイメージされるような薬物取締はしていない。空港に運ばれてきた動物が輸入禁止のものでないかチェックするのが俺の仕事だ。基本、イヌネコと書類を適当に眺めるだけ。
だが、違法な動物を運ぶやつもい
幻獣搏兎 -Toglietemi la vita ancor-
「やめた方がいいよ」
隣を歩く少女は、そう言って顔を覗き込んできた。長い金髪が揺れる。
クリスマスの夜。大通りは、カップル達で溢れている。
行き交う人の中で、少女の姿は浮いていた。バニースーツを着ているのだ。どう考えても屋外で着る服ではないだろう。
だが、通行人達が彼女に目を向ける事はなかった。
何故なら、彼女は俺が脳内で作り出した幻覚だからだ。
「向いてないよ、蓮には、殺し屋とか