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異世界衝突カードバトルパルプ小説、「ヴァリバブル・サーガ」の連載小説をすべて纏めたマガジンです。公式略称はヴァリサガです。
私が描いたウキヨエをニンジャ名鑑カードとしてまとめたものです。
筆者が「ニンジャスレイヤーTRPG」で身内向けに回したセッションを元に 書かれた小説群です。ソウカイヤとザイバツが消滅した後のネオサイタマで、元フリーランスのニンジャ達が頑張るおはなしです
かつて、一人の拳士がいた。男の拳は、あらゆるものを滅ぼすことができた。はじめは一つの山を。次に十数の平原に広がる大軍を。そして、数百の刻に渡って君国を支配した、大いなる戎の神龍を。暴虐の根源が打ち倒され、人々ははじめて暴虐と混乱から解放された。神滅の拳士は紛れもなく救国の英雄であった。 だが、その男の名も、彼が救ったという国の名は闇に消えた。そればかりか、その国土も、生きた人々も、すべて久遠の彼方に消えて久しい。これは、世界がまだ無数の泡になる前の、失われた物語の一つで
【前回】 「凄いな。これも魔札というやつか」 騒動があった夜、リユウが外に出ると、見慣れぬ巨大建造物がそこにあった。傍らにはナットが立っており、指示を出している様子であったため、リユウはそのように推理した。そして実際、その予想は当たっていた。ナットが手にしていたのは、《機顔城ガイダン・ダ・イン》という魔札であった。 「なんだ、眠れなかったか? 鉄の雪崩に当たらねえよう気をつけろよ」 機顔城は凄まじい速度で鉄屑を吐き出していた。リユウが空けた穴の底は既に塞がっ
白状するが……おれは今までライナーノーツというものを書いてこなかった。語るべきことは作品で語るべきだという意識と、本音をあまり語りたくない気性が合わさり、あまり楽屋裏の話を出すべきではないと考えていたのだ。 ところが今回書くことになった。なぜか。一つは酔いの勢いであり、もう一つはここ1、2年で直接お会いしたパルプスリンガーの面々が皆やっているので気持ちが変わったのだ。今後いざこういうものを書こうとするときに、練習するのも悪くない。というわけでライナーノーツをやる。おまえ
三日前に起きた月の消失に、吸血族はむしろ困惑していた。夜の一族と呼ばれてはいるものの、視界は光源を頼っている。獲物の血が吸いにくくなり、不利益しかなかったのだ。なのに彼女は、事もなげにこう言った。 「月光って要は反射した日光でしょ? チクチクしてウザかったのよね。だから食べてやったの」 一族が処分を決めかねてる間に、彼女、ルナギアは忽然と姿を消した。果たしてどんな手段で宙を渡ったか、いかなる手段で月を消したのか。それらが不明なまま、今度は太陽が小さくなり始めた。星見の
白石瓜生の数年ぶりの帰郷は、水深20メートルの湖の中だった。 陽光は遠く、深く暗い湖中の中。ダイバースーツに内蔵された水中ライトが、懐かしい実家を照らした。窓が開いていたので、彼は二階から入り込んだ。かつての己の部屋であった。 散乱した室内を想像していたが、予想に反し、ほぼ記憶のままの光景がそこにあった。ベッドがあり、机があり、本棚がある。それらを目の当たりにし、白石はようやく自分が帰ってこれたのだと実感した。 大学生三年の夏であった。大地震と土砂崩れ。度重なる
21世紀の末にもなって、俺は馬に乗って走っていた。車じゃ駄目だ。バイクもヘリも飛行機も、無機物は奴に喰われちまう。全身がクリップで出来た怪獣、クリップビーストに吸われちまう。人類未曾有の危機、くそったれの終末の獣が、つい俺の背後まで迫っていた。 ビル並に大きく、チーター並に早い。磁力もある。そして奴に触れると、全身が無数のクリップになって体の一部になっちまう。俺はそんな死に方は御免だ。 「シュナイダー! もっとスピード出せねぇか!?」 馬に向かって叫んだ。本当の名
【前回】 ……。 …………。 ………………。 …………………………目を覚ました直後、リユウは己の首に突き付けられた刃を自覚した。処刑人は見上げるほどに長躯であり……そして、己の目線が常よりも低いほどを自覚する。まるで急に背が縮んだような錯覚……だが、すぐにリユウは思い至った。これは夢だ。十歳になって間もないころの記憶だ。そうなれば……眠っている筈の脳裏に、この先に起こる出来事が想起される。彼がこれを夢に見るのは、初めての事ではない。彼を苛む幾つもの悪夢の記憶、
ヴァリサガ登場人物メモ 【贄の神】 人と神との交信手段がなかった時代、 初めに生贄というコミュニケーションを発案した神。 流血と引き換えに人々は知恵を得、言語を授かり、文明を築いた。 ただし、この神自身は嗜虐と邪悪の塊である。 神々に序列はないが、”贄”の力は他の神より低い。
【前回】 ヴァン・リユウがナットに助けられてから、数日が経過した。リユウは持ち前の膂力を活かして、下層の共同体を手伝う日々を送っていた。主な活動場所は、管の中に設置された作業場である。 下層で暮らしていたのはナットとプーリだけでなく、老若男女、合わせて16人のコミュニティで成り立っていた。ナットが管理者で、他は全員従業員だ。上層にジェムを送る仕事だけでなく、この下層で暮らすための家事もまた彼らの仕事であった。いずれにしろ、リユウの尋常ならざる膂力はどちらにとっても頼り
4月になったので、2023年4月~2024年3月まで……つまり2023年度に鑑賞した映画を振り返っていこうと思う。これで第三回目だ。去年の記録は以下にまとめている。 順番は見た順で、映画館で観たものと配信で観たものが混在している。また、1度過去記事で書いた映画は端折っている。 【1】クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲 友神と話してるなかで話題に出て、ネットフリにあったので視聴。『郷愁』という言葉がこれほど恐ろしい敵になるとは……小さい頃に何度か見
←前話 😎 ☺ 😭 エモジオ! そこは絵文字たちが暮らすふしぎな世界。ヒトはいない。動物もいない。街を歩けばあちこちに顔アイコンの姿。そんな世界で流行っているのは……ヴァリバブル・サーガ、つまり魔札を使った対決だった! 💥「オレに触れたら何かが起こるぜ!」 爆発頭がトレードマーク。スパーク! 🌎「大地のありがたみを知るがいい」 クールな頭にシックなスーツ。アース! 🍃「は……葉っぱの裏からトラップ発動!」 やさしい心にみどりの身体。リーフ! 魔札
3月は相当に険しい月だった。週に2回、3・4日に1回短編を上げるスケジュールをこなしていたからだ。なぜか? カクヨム誕生祭というイベントに参加していたからだ。イベントの概要は以下である。 カクヨムに登録したのは去年中ごろ、つまり私はまだ1年も満たないニュービーカクヨムユーザだ。だが、特に参加資格はなく、ちょうど同タイミングでカクヨムDiscordも解説されたので、せっかくの機会と思い参加した次第である。 カクヨムからのお題は3・4日に1回お出しされる。その後次のお題
←前話 神戸悪魔に、最後のターンが訪れた。 『グックク……最後のカードは《不死身軍団長》。さあ、引くがいい』 悪魔のデッキ最後の1枚、それは大入道が指摘したその通りのカードである。《軍団長》自身の効果でデッキに戻ったので、当然のことであった。 『《不死身軍団長》……それなりには強い魔札生物だが、儂の《悪鬼王》には及ぶべしもなし。小僧よ、どう足掻いてくれる?』 「……俺はドロー前に《塔の再生》を発動する!」 悪魔が唱えた魔札が、山札を光で包み込む。すると
←前話 高峰山の頂上、他世界とのはざまに位置する地にて、ヴァリサガによるカードバトルが行われていた。八尺バベル神戸悪魔、対、大入道。お互いの場には複数の魔札生物が召喚されている。戦力は概ね拮抗自体にあった……すぐ先刻までは。 『グッグッグ……《時重ねの悪鬼》を召喚』 鬼を象った時計が幾重にも表れ、そこから巨大な鬼が姿を現した。悪魔の場にいる生物に比べて圧倒的に巨大な鬼である。 『このまま《時重ね》で攻撃! さあどうする、小僧』 「くっ……《緊急輸送魔》でブ
ここ1週間、ポケモンについての話題が、SNS上で絶えず飛び交っている(その理由については本記事では取り上げない)。そうした話題の中で、特にポケモンのゲームデザインについての言及が目についた。是々非々さまざまな意見があるわけだが、とりわけ『対人戦』についての意見が多かったように思う。 多くのプレイヤーにとって、ポケモンは殿堂入りを目指すゲームだろう。一方で、対人戦の要素は初代の赤・緑から存在した。やがて『ダイヤモンド・パール』でネット対戦が実装され、『ブラック・ホワイト』
←前話 失われた土地、総下県。国家統治をのがれ荒れ果てた無法地帯の地に、人知れずそびえる山がある。年間登山者平均ゼロ。Wikipediaにも個別記事がないマイナーな山、高寧山。野放しになった森は日中さえも光を通さず、文明から見放されたこの危険地帯に、今日、挑む者たちがいた。 彼女たちの風貌は異様であった。みなキャペリンとワンピースを着ており、背丈は4メートルをゆうに超えている。そして皆一様に、2メートル超のストレージボックスを装備していた。人の手が入らない過酷な山道を