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「ええじゃないか!」

時は幕末。

あるうわさが、東海地方や近畿地方を中心に広まっていた。「お札が天から降ってきた!良いことが起こる前兆だ!」

このうわさがきっかけとなり、民衆は「ええじゃないか」と言いながら、踊るようになった。

短期間ながら、全国をまきこむ騒動へと発展。

「ええじゃないか騒動に興じる人々」河鍋暁斎

慶応3年(1867年)7月、現在の愛知県豊橋市にて、最初の「ええじゃないか」発生。(かけ声自体だと、京都発祥説もある)

当時の状況を見てみる。

民は、物価上昇により生活に苦しんでいた。世の中全体も、政治的に非常に不安定だった。 

その詳細を見てみる。

・前年は全国的に凶作。米の価格上昇。

・日本の輸出、超過状態。物価上昇。

・万延貨幣改鋳:金銀比価の違い → 金の国外流出を防ぎたい → 金貨の品質を落とそう。貨幣の実質的な価値下落。物価上昇に拍車。

・徳川幕府と薩長どちらが政権をとるのか、これから先どうなるのか読めず。

これらから、お札降りと「ええじゃないか」の関係は……さっぱりわからない。


お札降りを見てみる。

お札が上流階級やある富家に降った、といううわさが立った。

裕福な人らはこれを吉兆だと思い、知人に伝えた。富家へ人々がお祝いに集まり出した。

来客をもてなすために、商売を休む日が増えた。奉公人や手伝い人に暇(いとま)が出された。

休日をもらった人たちは、昼から酒を飲んだ。酔っぱらいが増えた。

町全体がお祭りムードになった。

と、こういう流れだったそうだ。


「ええじゃないか」

平日だけど仕事に行かなくていいのかな……
ええじゃないか ええじゃないか〜

毎日昼からお酒を飲んでていいのかな……
ええじゃないか ええじゃないか〜

こんな感じだろうか。もしそうなら、心理的には共感しかない。笑 


「ええじゃないか」というキーワードをとり入れた、歌詞のようなものが各地で作られた。

2回目の「ええじゃないか」は、全員で叫ぶ仕組みか。盛り上がりそうだ。

「今年は世直りええじゃないか」(淡路)「日本国の世直りはええじゃないか、豊年踊はお目出たい」(阿波)

世直し訴え系だ。

「御かげでよいじゃないか、何んでもよいじゃないか、おまこに紙張れ、へげたら又はれ、よいじゃないか」(淡路)

なかなかパンチのある歌詞で笑う。性の解放系。

「長州がのぼた、物が安うなる、えじゃないか」(西宮)「長州さんの御登り、えじゃないか、長と醍と、えじゃないか」(備後)

政治的な応援歌だ。


「長州がのぼた、物が安うなる」

歌詞に、ずいぶん “具体的” な内容が出てきた。

倒幕派の関与について。

倒幕派が積極的に「ええじゃないか」に関与していた、という説がある。

倒幕派が「ええじゃないか」騒ぎを利用して、政治的な活動を隠そうとしていたと。倒幕派が意図的に「ええじゃないか」を作り出した、という説まである。

一部の民衆に自分たちを応援させるためや、逆に、多数の民衆の関心を政治情勢からそらすためだとーー。


騒動は1867年の内に収束している。

1867年、大政奉還の年だ。

「大政奉還図」 邨田丹陵 筆

現代では起こり得ない?起こっていない?姿形を変えているだけではないだろうか。エコーチェンバーとかね。

さすがに。お札降りのうわさから(全てが)仕込みであった可能性は、低いと感じる。因果関係が遠く、インフルエンスが起きるまでに距離(時間的になどいろいろ)がかかりすぎで。策や仕込みをわざわざするにしては、運任せすぎる。と私なら思う。

個人的には。仕掛けた側(仮)よりも、集団の心理や行動に興味があるし。トリガーはあくまでもトリガーにすぎない。