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それは怪物〜『〆切本』(左右社編集部 編/左右社)
就職か進学か、進路が決まらずとりあえずの保険で論文を複数掛け持ちして書いていたある年の春、ふと鏡を見たら箪笥の裏側から出て来た10円玉みたいな顔色の自分と目が合った。
その数日前、原稿用紙の前で頬杖をついたら(論文の内のひとつは手書き提出指定だったのである、今じゃありえないけど)手の平に毛が当たる感触があった。宝毛が生えてきたんだと思った。良い論文が書けている吉報だと信じて、その毛を抜かずにおいた
「こういうの」って「こういう」の?〜『こういうのがいい』(双龍/YJコミックス)感想文
家宅を夫の同僚が訪れ酒を飲みながら夫とTENGAの話で盛り上がっていた時の事だ。
男は熱弁していた。TENGAがあれば女はいらんと。女と致すより余程楽ちんで気持ちがいいと。
私は肴をテーブルに運びながら、
「今は女性用もあるらしいですね。IROHAでしたっけ?」
と相槌を打った。男は突然興醒めしたようにスンとなり
「あー…ハイ。そっすね」
と話題を切り上げた。
人の家にあがりこんで、人の妻に酒と肴
もう会うことはないKちゃんのこと、それから「明日カノ」の感想(ネタバレ注意)
3月◯日/ショップのスカートコーナーで物色していたら、棚の向こう側からこちらを睨む女性と目が合った。ホラーじみたシチュエーションにギョッとしたが、相手に見覚えがない。あれは誰だったんだろう。
4月△日/思い出した。あれはKちゃんだ。会わなくなって10年くらい経っていたのでたった今まで忘れていた。向こうはすぐ私だと気づいたって事だろう。今さらあんな目で見てくるとは思わなかった。彼女の中で私はどんな