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食〈べ〉物語(たべものがたり)第1話〜白秋の林檎


今日11月2日は詩人、北原白秋の命日。
「からたちの花」「ゆりかご」「この道」など童謡で白秋の詩に触れた経験のある人も多いだろう。
繊細かつ郷愁を誘う詩を数多く生み出した白秋だが、私生活はヘビースモーカーで自信家、それ故人間関係のトラブルを幾度となく経験し、大変浮き沈みの激しい人生を送ったという。
そんな彼の人生を彷彿させるこんな短歌がある。

君かへす 朝の舗石さくさくと 雪よ林檎の香のごとくふれ

在りし日の白秋は、ある女性と恋仲になった時期があった。女性は結婚しており、夫と別居中の身。不義の恋は刑法で罰せられた時代だ。雪よりも冷たく重い現実が二人の肩に降り積もる。

…朝になり家へ帰る恋人が歩く舗石に、雪が積もっている。さくさくと鳴るその音は、私に林檎の咀嚼音を想起させた。我に帰れば重く冷たい現実だが、今この瞬間だけは林檎の香りのように涼やかで瑞々しくあって欲しい。彼女の肩に降る雪が、どうか冷たくありませんように。

道ならぬ恋の後ろめたさを林檎という単語のイメージで帳消ししてくる白秋のセンスよ。これぞムーサに愛された男、ズル過ぎて地団駄踏むほど羨ましい。

白秋にとって、林檎は特別なモチーフだったらしく、この詩以外にも林檎が登場する作品がいくつか登場する。
没する前、最期に口にした食べ物も林檎だったとか。

11月の食物語は白秋忌にちなんだ林檎のパブロバ。パブロバの上に粉糖をあしらい、舗石に降る雪を表現した。さくさくとした食感と音、林檎の爽やかな酸味をご賞味あれ。

☆林檎のパブロバ☆

材料(6cm円型 10個)

●パブロバ●
卵白 卵Mサイズ2つ分
塩  ひとつまみ
グラニュー糖 130g
コーンスターチ 小さじ1
お酢 小さじ1
カルバドス 小さじ1

●飾りつけ●
林檎 50g
粉砂糖 少々
蜂蜜 適宜

●ヨーグルトクリーム●
ギリシャヨーグルト 大さじ2
生クリーム 100ml
グラニュー糖 20g

作り方

①最初にオーブンを180℃に予熱する。林檎は洗っていちょう型に切る。
②ボウルに卵白と塩を入れ、泡立て器で泡立てる。
③コーンスターチを振るい入れ、グラニュー糖を少しずつ加えながらかき混ぜる。卵白がよく泡立ち角が立ち始めたらお酢とカルバドスも加えてそっと混ぜる。卵白がツヤのあるメレンゲ状になったら泡立て終了。
④メレンゲをクッキングシートを敷いたバットの上にスプーンで落としていく。直径6センチ程度の円形に整える。(10個くらい作れます)
⑤180℃に温まったオーブンへバットを入れたら庫内の温度を150℃まで冷ます。
⑥150℃で20分焼く。焼き上がってもすぐに外に出さないこと。メレンゲがしぼみます。
⑦オーブンで焼いている間にヨーグルトクリームを準備する。生クリームとグラニュー糖を合わせて、冷たいボウルに入れたら泡立て器で泡立てる。クリームをすくいあげて角が柔らかく立つ位になったらヨーグルトを加えてさらに泡立てる。ヨーグルトを加えたクリームは生クリーム単体より硬くなりにくいので、ほどほどに角が立つようになったら泡立てをやめる。
⑧メレンゲが完全に冷めたら飾りつけ。ヨーグルトクリームをメレンゲの上にかけ、林檎を扇状に広げたらクリームに刺す。上から粉砂糖をふり、蜂蜜少々を回しがける。

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