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出さない手紙を書こう

自分と向き合う

あなたは、育つ課程で、酷く酷く傷ついたことはありますか。
私はあります。何十年経っても、話すだけで涙が出るような辛い記憶も抱えています。もう大丈夫だろう、と思っても、やっぱまだ癒えてない。それでも日々は続いていく。だからまた心の隅に追いやって、日常を送る。

私達は、大なり小なり、みんな、何かしらの傷を抱えています。英語だとBaggageという言い方をします。荷物。背中に背負った重たい荷物。下ろしたくても、下ろせない。肩にズシッとへばり付いた重い重い記憶。
親から、兄姉から、友達から、先生から、同僚から。心無い一言に酷く傷ついたり、ネグレクト (無視) されたり、時に暴力を受けた人もいるでしょう。

それに向き合ってきた人も、
まだ向き合えていない人も、
向き合うつもりもない人もいるでしょう。

私は、幸い素晴らしいカウンセラーの先生たちに出会い、沢山のお金をかけ、心を整頓してきました。また、ストレスや恐怖感を感じた時の対処法もいっぱい教えてもらって、だいぶ人生の荒波に振り回されず、乗りこなせるようになってきました。

ですが、まだ「その一人」に出会えていない人も沢山いるでしょう。私も、開始10分、その場で立ち上がって帰ろうかと思うくらい、最悪のカウンセラーに出会ったこともあります。6000円返せ。でも諦めずに探し続けました。

人と話すことなんて何の意味もないよ
私は自分のことを話すタイプじゃないんだ
どうせ話したって誰にも私の気持ちなんて分からない
以前人に話したらバカにされたからもう二度と話したくない

そう思ってカウンセリングを受けない人もいるでしょう。

そんなあなたが、出来ることがあります。オーストラリアのカウンセラーの先生に教わった方法です。かなりパワフルなので、ご紹介したいと思います。

出さない手紙を書こう

これです。この方法には二種類あります。
1.昔の、または、現在の自分に手紙を書く
2.自分を傷付けた相手に書く
このあと、詳しく説明していきます。

自分にかける言葉のチカラ

私は、アンジェラ・アキさんの、「手紙~拝啓十五の君へ~」を聞くと、今だに泣いてしまいます (2008年リリース)。

十五の私は、しょっちゅう親と喧嘩しては、定期入れひとつを持って家を飛び出し、駅前の電話ボックスから泣きながら友人宅にテレホンカードで電話し、友人のご両親が車で迎えに来てくれて、泊めてもらっていました。誰にも話せない、誰にも理解されない。泣くしかできない。

今 負けそうで 泣きそうで 消えてしまいそうな僕は
誰の言葉を信じ歩けばいいの?
ひとつしかないこの胸が 何度もばらばらに割れて
苦しい中で 今を生きている
今を生きている

アンジェラ・アキ「手紙~拝啓十五の君へ~」

それを上手に隠し、学校では笑顔を振りまき「問題を起こさないいい子」を演じていました。また、中学1年の頃、足に障害を負い、足が不自由になったことで、自己肯定感は底辺に。息が出来ないくらい辛い日々でした。

そして、私は、中島美嘉さんの「僕が死のうと思ったのは」を聞くと、泣きそうになります。歌うとかなりの確率で泣いてしまいます。

僕が死のうと思ったのは
少年が僕をみつめていたから
ベッドの上で土下座してるよ
あの日の僕にごめんなさいと

中島美嘉「僕が死のうと思ったのは」

両方の曲に共通しているのは、
自分にかけることば。

自分が自分にかける言葉ほど、
ココロを揺さぶるものはありません。

自分に書く手紙:私へ


私は、まず、自分に手紙を書きました。

大事なのは「紙に」「手書き」で書くことです。
後でなぜ紙に書くことが重要である理由を述べます。

親愛なるShihoへ。

今のあなたでも良いです。過去のあなたでも良いです。
優しさを必要としている「あなた」に。

あなたが、あなたの友達だったとして
傷付いている友達に、どういう言葉をかけるか。

「そんなことで傷ついてんの?バカじゃないの?」
って自分に何度言い聞かせてきたことでしょう。

傷付くことの辛さを誰よりも一番分かってるあなたは、
あなたは、傷ついて泣いてる大事な人に
そんなことは言いません。

その大切な大切な友人が、ここでは「あなた」です。
あなたは「あなた」に、語り掛けます。
あなたの名前をした、その人に、語り掛けます。

辛かったこと一つ一つ思い出して、
それをどうやって乗り越えてきたか。

手紙は何ページにも亘りました。いったん手紙は中断しています。思い出の中では、ここから先はもっと辛い事が、次から次に起こり。これを書きだすエネルギーは膨大。もう少し心に余裕が出来たら、また続きを書きます。

本当に可哀想だったね。あれは辛かったね。あの時も苦しかったね。それなのに、Shihoは、よく今まで生きてきたね。あんなこと言われるなんて、酷いよね。誰だって傷ついて当たり前、泣いて当たり前だよね。Shihoは、何度も何度も諦めそうになったよね。でも歯を食いしばって乗り越えたよね。ああ、誰にも話せないってなんて辛かったろう。自分の事責めて、全て自分が悪いと思うことで、心の整理を付けてきたね。Shiho、もうそんなことしなくていいよ、自分が悪くないことだってあるよ。
未来の私も、きっと今を乗り越えてる自分を褒めてる。だから、Shihoは大丈夫だ。今回もきっと乗り越えられる。だっていつも私がついてるから。

あなたが、あの時、誰かにかけて欲しかった数々の言葉。
それをあなたに贈りましょう。

出さない手紙:私を傷付けたあなたへ


そして、私は、父にも手紙を書くことにしました。

父は私が27歳の時に亡くなりました。27歳、私は晴れて自由になりました。もうこれ以上、私をちっぽけに思わせて来る人間はいないのだと。私を縛りつけてきた言葉も、今切るのだと。数々の人の心をズタズタにする彼の言葉の数々が、私に、家族にどんな思いをさせてきたのか、本人にぶつける機会なく、彼は逃げてしまいました。

なので、もう二度と関係修復は出来ません。私の中で折り合いをつけるしかない。生きていたとしても、きっと和解は一生出来なかったことでしょう

だから出さない手紙に、すべてをぶつけました。

カウンセラーの先生は「どんな言葉遣いをしてもいい。本人が見る訳じゃないんだから、怒りも、悲しみも、憎しみも、恨みも、自分の心の傷を、すべて紙の上に書いてぶつけるんだ」と。

もうゴミ箱がティッシュでいっぱいになるほど、泣きながら、鼻水をかみながら、書きました。怒ったり、悲しんだり、感情の波をいくつも超えて、書き続けました。

手紙が書けたら、その次のステップは、何度も読み返すのだそうです。
何度も何度も、また泣いたり怒ったりしながら、読み返す。

繰り返して、繰り返して、何も感じなくなるまで、繰り返し読みます。だんだん泣かなくなってきます。だんだん怒らなくなってきます。

…そして


何も感じなくなったら、
それを安全な場所で、
瓶や空き缶に入れて、

燃やす。

私は、なんだか、その火が、私の心に溜まっていた淀んだ感情が、ケムリと一緒に昇華されていくような感覚を覚えました。

私を苦しめてきた、過去の出来事や心の傷の、火葬。

火が消えるまで、ずっと浜辺に座って、静かにじっと見ていました。

さようなら。
もう私は大丈夫。

これが先ほど述べた、
「紙に」「手書きで」書く理由です。

自分への贈り物


思い出したくない過去と面と向き合うのは、本当に辛く、難しいものです。だから人は、見ずに蓋をしようとする。でも、折に入れ、抑えつけた獣が暴れるように。その傷は、何かのきっかけがあれば、牙を向いて、自分や、時に人を傷付けます。痛いから!触らないでくれ!なんで触るんだ!!!って。

だから、たまに外に出してあげて。風に晒して。そうやってだんだんジュクジュクの傷は乾いて。かさぶたが出来て。新しい皮膚が出来て。治ってきます。傷跡は消えないけれど、もう傷が開くことは無くなります。誰かが傷跡を触っても、もう痛くないので、身構えて守ったり、闘ったり、攻撃し返したりする必要は無くなるのです。

親子関係、パートナーシップ、上司や同僚との仕事関係、恋愛関係。
あなたの、その癒えていない傷の多くは、姿形を変えて、色々なところで姿を見せます。時に怒りとして。時に悲しみとして。時に憎しみとして。理由の分からない、そのむしゃくしゃした感じ。

その根っこがどこかにある。思わぬところに埋まってる。

だから、もう蓋をしないで。鍵をかけないで。
あなたが無視したら、その傷は誰にも見えない。
だからあなたが。あなたこそが。
その事実を、その傷を認めてあげないと。

これは、あなたが「あなた」にあげられる
最高の贈り物。

一人で辛い思いをした「あなた」に、
その歩いてきた道のりを、
もう一度、一緒に思い出しながら、
今度はもう一人じゃなくて。

今のあなたが、一緒に歩いてあげてね。

Shiho


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