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#此処

邪悪な光 《詩》

邪悪な光 《詩》

「邪悪な光」

悲観的な色あいを帯びた幻想と

攻撃的な響きを持つ光が仄かに漂う

表に現れているのは 

ただの見せかけに過ぎない 

徹底された秘密主義 

歪んだ鏡が映し出す

恐ろしく執拗な性質を持つ陽の光

何かの始まりを意味するもの

もう全ての時が動き始めている

その光に恐怖し逃げ出した人々

次第に力を増す
その邪悪な光に眼を背けた

そして誰ひとりとして居なくなった

僕ひとり

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半月の夜 《詩》

半月の夜 《詩》

「半月の夜」

風か吹き始めたのは そう 

孤児の様に置き去りにされた

野良猫と出逢った時からだった

その夜 
君に眼隠しをしてSEXをした 

君の望み通りに

半月の夜は何故か無口になる

空は雲に覆われて雨が降り始めた

鮮明に見た夢が
不鮮明な現実に呑み込まれてゆく

いつか見た半月 

雨はまだ降り続いている

窓を打つ雨音 

青い海風が

忘れられた
深い森の木々を洗い淘汰する

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マーマレード 《詩》

マーマレード 《詩》

「マーマレード」

薔薇の模様の透かし彫りのカーテン

揺れた気がした 閉ざされた窓

きっと気のせいだ

明かりの灯って無いシャンデリア

それは何処か悲しみに似ていた

夜の翼が見えない糸を作り

その細い無数の糸が
僕を縛り付けていた

此処はいったい何処なんだろう 

独り呟いた

忘れなさい 誰かがそう答えた

確かに聴き覚えのある女の声だった

ホットウィスキーに
スプーンですくった

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真夜中のジュリエット 《詩》

真夜中のジュリエット 《詩》

「真夜中のジュリエット」

心の中に誰の言葉が残ってますか

誰の温もりが残ってますか

またひとつ 

命が消え去り 
命が芽生える

全ての星は君の為に歌う

真夜中のジュリエット

僕は残像の中に手掛かりを探す

失ったものと 手にしたもの

今 見えない強さだけが此処にある

夏の太陽 《詩》

夏の太陽 《詩》

「夏の太陽」

気まぐれな風

実体の無い言葉を撒き散らした

誠実で間違えなど無い 
時計の針の音が全てを支配してゆく

僕の知らない太陽が
僕の知らない空に輝いていた

それも見慣れてしまえば 
何も感じない

適当なものなど何ひとつ無く

それと同様に
明確なものなど何ひとつ無い

僕はいったい何処に居るんだろう

君と居た場所からは 
そう遠くないはず

確か昨日まで此処にあった気がした

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口紅 《詩》

口紅 《詩》

「口紅」

君が僕を求めたから 

僕は此処にいる

僕が君を求めたから

君は此処にいる

彼女の髪に触れていた

彼女は半分吸った煙草を
僕に手渡した

フィルターに付いた口紅を
愛おしく眺めて 

僕は煙草を口にした

午後の強い日差しが包み込む 

違う場所でしか叶わない夢を持つ
ふたりを同化していく様に見えた

夏も終わりに近づいていた

夢の断片 《詩》

夢の断片 《詩》

幾筋かの線を引き

流星が流れ闇を切り裂く

満ちた静寂は消えた

何もかもが夢で何もかもが現実

眠れない夜に微笑む
あの娘の様に見えた

僕が此処に来たのは 
君が僕を呼んだから

死んでしまった夢の断片 

時間を彷徨い 

今 光となり共に歩む

九月の風 《詩》

九月の風 《詩》

「九月の風」

時の彼方から吹き込む九月の風

混じり合った何種類ものピース

そんな物でこのパズルは出来ている

繋がる事の無い断片と断片で
違和感を生み出す

別に私に名前が無くたって
誰も困らないわ

そう言って彼女は笑った

その時の笑顔と声が
今でも僕の中に眠ってる

入り口があれば出口もあるよ 
安心しなよ

僕は最後にそう付け加えた

九月の風はもう此処には居なかった

あの娘の夢 《詩》

あの娘の夢 《詩》

「あの娘の夢」

これが最後だと 
それだけ聞かされた

別に驚いたりしないよ

だって それが君だから

全部知ってる

君の嫌なところ 嫌いなところ
幾つだって言えるさ

僕の嫌なところも 嫌いなところも
君は沢山知ってるよな

それでも僕は此処に居る

それでもまだ君は傍に居る

それが答えだと思う

涙が乾いたら笑って歩こう

言葉はもう何処かに忘れた
心だけが残った

夢だけ見てる 

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此処に居る 《詩》

此処に居る 《詩》

「此処に居る」

別に綺麗じゃ無くてもいい

汚れていたって
欠落していたって構わない

吠え続ける獅子の叫び

止まない蝉時雨 
過去の残像

音を消し去り色彩を失くした世界

約束するよ 必ず守る

静寂の中の迷子

欲しいものはただひとつ

僕はいつまでも此処に居る 

君の直ぐ傍に

Photo : Seiji Arita

此処に 《詩》

此処に 《詩》

「此処に」

放り出された街

人並みに飲まれ途方に暮れる

手を離さない
最後の約束

僕は此処にいる
見えないの

細く繋ぐ蜘蛛の糸
輝く雫は君の涙

ずっと此処に

君の傍に

Photo : Miho