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散文詩

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#純粋

悪魔と青く深い海のあいだで 《詩》

悪魔と青く深い海のあいだで 《詩》

「悪魔と青く深い海のあいだで」

その水は何処までも
透明で純粋だったんだ

それを知る者は誰も居ない

灯りすらない夜の闇 

誰かの足音

くだらない
辻褄合わせに僕等は泣いている

銃声の音が聴こえますか

また大切な何かが失われて行く

知らぬ間に

目隠しをしていた愛の調べ

不釣り合いな恋に

傷付くのが怖かった

水平線の向こうには
花は咲いていますか

僕等の話を聞いてください

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道化のグラス 《詩》

道化のグラス 《詩》

「道化のグラス」

僕は其の限り無く純粋な水を

道化と言う名のグラスに注ぐ

華麗な結晶が輝くとか

輝かないとか

僕等は瓦礫の山の
赤茶けた地面にトンネルを掘り

銀行を襲う計画なんだ

僕は才能の枯れ尽きてしまった

作曲家と写真家と絵描きを誘った

才能の枯れ尽きた
詩書きなら此処に居る 

そう言って笑った

失われた音符と失われたフィルム

失われた絵の具と失われた言葉

それでも其

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オッドアイ 《詩》

オッドアイ 《詩》

「オッドアイ」

静かで濃密な確信が其処にはある

疑いの無い確信が恒常的に

内紛の火種を抱える

汚く猥雑で出鱈目な街 

それでも街の夜景は綺麗に見えた

屈曲していない純粋な微熱を帯びる

イエスかノー 
其処には一切の保留条項は無い

窓から海が見えた 

白い海と黒い海 波は無い

僕は轍を見つけては其れを辿る

強固な世界観を有した
偽装社会の中で

夕暮れの空を背景に観覧車が廻る

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方舟と幸せの鐘 《詩》

方舟と幸せの鐘 《詩》

「方舟と幸せの鐘」

心を失くした

深い森の中を彷徨っていた

全ては無音のうちに始まり

邪悪な野獣と

純粋な精霊の吐息を聞いた

不確かな人生の灯りが揺れる

暗い終末の気配を含んだ
湿り気を帯びた風

彼女は方舟…そう一言だけ呟いた

特別な生命の匂いを彼女に感じた

僕等に歌う歌があるとしたなら

僕は漠然とそんな事を考えていた

僕の純粋な仮説が

保留の無い激しい愛を呼ぶ

彼女に

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落命 《詩》

落命 《詩》

「落命」

車のヘッドライトに

照らし出され路上で硬直した猫

決断も行動も無く指示された事を

従順に遂行する世界が周る

遠くの海鳴りがはっきりと聞こえる

捕縛し続けて来た物の
瓦礫が横たわる

意志を備えた濃密な霧

血の通った泥の中にうずくまる

全ての感情を奥に隠した邪悪な血

僕自身が宿る肉体が抹殺した幻

其処にある
光景から目を反らず直視しろ

根源的な邪悪は僕自身の中にある

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純白 《詩》

純白 《詩》

「純白」

細い糸を手繰り寄せる様に 

記憶の痕跡を辿る

この世界の基準から外れた

異形の物を

手に取り静かに口づけ

小説や戯曲の中に深く身を沈めた

奇妙な輝きを持つ月と
瞬きを忘れた星

僕を誘うある種の力が漲っていた

序曲に続く第一幕 

その先にある物語

何ひとつとして

生み出せない日々の中

僕は僕自身と対面し
肖像画を描き続けている

其処にあったはずの想いを

言葉に

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最終章 《詩》

最終章 《詩》

「最終章」

其処に君が居ると

思い込むんじゃ無くて

其処に君が居ない事を

忘れてしまえばいい

それが僕の恋の始まりだった

僕等を隔てる
距離や周りの雑音は消え去り

僕は常に君を感じる事が出来た

遠くに輝く星はいつも

僕の手を伸ばした少し先にある 

決して触れる事の出来ない虚しさに 

押し潰されそうになっていた

数々の記憶の中から

質の良いものだけを

セレクトして再生した

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ジャンピン ジャック フラッシュ 《詩》

ジャンピン ジャック フラッシュ 《詩》

「ジャンピン ジャック フラッシュ」

流星が繋いだ影と月 

風は今でも吹いている

意味の無い
光景が目の前を通り過ぎる

幾つも幾つも

折り重なる様に終わりなく

夜の闇に突き刺さった

高層ビルが僕を見下ろし

稲妻に撃たれた夜を
想像し雲を呼んだ

彼女は ただ電話しただけだよ

声が聞きたかったから 

そう答えた

正しい生き方なんて知らない

正しい死に方も 

何処かに忘れた綺

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無彩色の虹 《詩》

無彩色の虹 《詩》

「無彩色の虹」

雨はもう止んでいた 

知らぬ間に

例の話しの続き 
もういいだろう

無彩色の虹を吸い込んだ肺の中

誰かが段取った安物の改造拳銃

トリガー引いた暴発 

血だらけ
あちこちに飛び散った指先

残された薬指と小指で挟んだ煙草

深く抉ったナイフ 

捲れかけたヤマ 

死神 道連れ 病院か地獄か独房か

探し続けた答え 匠な作り話

膨らみ続けりゃ 

いつかは破裂する

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オレンジジュース 《詩》

オレンジジュース 《詩》

「オレンジジュース」

純粋で透明な氷が
オレンジジュースに溶けていく

透かして窓の外を見渡す

不均一な混ざり合いの中 
屈折した街の灯りが見えた

押し付けがましく喋る
テレビのスイッチを切り

君を抱き寄せた

僕は剥き出しになった
正直さを隠しきれず

欲望と正比例する様に

深く君の中に沈み込む

真実を示す必要も無く 

リスクを回避する必要も無い

凡庸を固着させ
切り取った様な絵

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クィーンズ パーク 《詩》

クィーンズ パーク 《詩》

「クイーンズ パーク」

キャンディーレッドのピーナッツタンク

オレンジと黄色のファイヤーパターン

黒い縁取り 
リジットサスにCCバー

走り去るチョッパー
ジンビィーンズあおりながら見惚れてた

探してるのはクィーンズ パーク

真実の愛が眠る場所

権力と武力 空に破った L.A.M.F

色と欲とドス黒い感情を捨て去った後

欲し残るものは きっと
星の輝きに似た純粋な光

穏やかに

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