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ひらり、ひらり

ひらり、ひらり








ひらと
舞い落ちる
赤や黄色に染ま
ったはっぱ。びゅ
うと風がどこか
へ連れて消え
てった






ひらと
舞い落ちる
あなたへの想い
せっかく鮮やかに
色づいていたのに
いつの間

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ねえ、こっち向いてよ。

ねえ、こっち向いてよ。

風の向くまま、気の向くまま。
君は、ひらひらと揺れている。

せっかくかわいい顔してるのにさあ。
なんで、こっち向いてくれないの?

あっちに何があるんだよ。
教えてよ。

「ねえ、こっち向いてよ」

前を歩く君の背中に投げてみた。

風がふわりと吹いて、
君の頭がゆらりと動いて、

一瞬だけこっちを向いた。

とびっきりの笑顔がかわいくて、
僕の目は釘付けになったのに、

あっという間に君は前を

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ぽっかりと空いた穴が、教えてくれる。

ぽっかりと空いた穴が、教えてくれる。

冷たい風が吹いた。

風は肌を撫ぜる。
肌を撫ぜたはずだったのに、
風は僕の中に入ってきて
僕は体の中に穴が空いてるって気づいた。

知りたくなかった。

ぽっかり空いた穴なんて。

秋はこれだから嫌だ。
寂しくなる。

春に花が咲いて、
夏に弾けて、

いつの間にやら穴が空いて
秋になって落ちてゆく。

僕は地団駄を踏んだ。
踏めるだけ踏んだ。

足元が緩んでいく。
足が沈んでいく。

僕は泣い

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空洞と波紋

空洞と波紋

ぽこん

体の中から音がした

理想と現実のその隙間
何やら怪しげな空洞ひとつ

空洞は

飯を食っても
酒を飲んでも
肌を合わせても
本を読んでも
歌を歌っても

何をしたって空洞のままだ

涙を堪え
ぎゅっと瞑り
再び体内へ
帰ってゆく涙が

ぽとん

体の中に反響して
波紋が広がって

少しだけ許される気がした

誰も責めてなんかいないのに

たまにどうしようもなく泣きたくなるような時があっ

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真実のような顔をして

真実のような顔をして

僕の脳内に現実が流れ込む
僕の2mmほどの皮膚はフィルターと化し
少しばかり現実の解像度を下げて
僕が傷つかないように
ささやかに気を遣う

僕の脳内から妄想が溢れ出す
じわじわと滲み出すように
解像度の高い妄想が
にじりにじりと現実を
侵食していく

僕は脳内で全てをないまぜにする

攪拌し
攪拌し
攪拌し

酢と油のように
混じるはずのない現実と妄想が
僕を介して乳化され
いつの間にかドロドロ

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詩|monochrome

詩|monochrome

あいちゃんは
行ってみることにしました
生まれて育った家に

遠足気分でたどり着いた家には
思い出がいっぱいありました

かえるの鳴き声
綺麗な星空
草のにおい
喧嘩したこと

子どものころの思い出がいっぱいです

寂しいできごともありました
しあわせなできごとを
少しだけ
背中を
そっとおすように思い出しました

立ち上がればこんなに色んなものが
小さかったのだろうかと思いました

冷たい水で

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詩|あのこのふうせん

詩|あのこのふうせん

ふんわりと
あの子の願いを
乗せて、風船は飛んで
いく。赤や黄、青や緑。色
とりどりの風船はいったいどこ
まで旅するのだろう。川を越え
山を登り、海を渡り、どこま
でも飛んでいく。あの子
はいつまでも手を振
って、お願いご
とが叶う


 日

 待



詩|tomorrow

詩|tomorrow

あしたに
いろをつけよう
うんとすてきな
えのぐで

おもいのままに
カラフルに
きれいじゃなくてもいい
クレヨンでもいいよね

けしごむで
こすってもきえないぐらいえがこう

さっそうと
しずかに
すずしげなかおしてあしたはやってくる

せなかばかりおいかけそうになるけど
そんなのごめんだ

たまには
ちょっとくらいだけでも
つまさきだけでもおいぬきたい

てをたたいてよろこんで
とまったしゅん

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詩|影とダンスを

詩|影とダンスを

私は影を見つめる

私の足元に落ちた影を
踏み潰し、連れ回す

日が昇ると、次第に影は小さくなる

私は影があったことさえも
忘れてしまう

あちいあちいと日陰を探し
無機質な影にすっぽりと包まれ
ほうと一息安堵する

夕暮れに影が伸びる
私はおかえりと言う

踏み潰して、連れ回して
なんだか要らぬもののように
扱ってきたのに帰ってきた

懐かしい友との再開に
私は橙色のスポットライトを
浴びてダ

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詩|afternoon tea

詩|afternoon tea

あしたもたべたい
いつでもたべたい
うんとたべたい
えがおでたべたい
おなかいっぱいたべたいな

カロリーなんか
きにしないで
クリームたっぷりぬっちゃって
けっとうちも
このさいむしして

さわやかなかぜにふかれながら
しあわせなきぶんで
すてきなじかんをすごしたい

せかいじゅうが、あまいものでいっぱいになっちゃったら?!

そんなせかいにいってみたい!!

たいじゅうなんて
ちっともふえなく

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詩|花弁にファスナー

詩|花弁にファスナー

お水を
あげても、
咲かない花が
あって。もしかし
たら満月の夜に咲く
のかなと楽しみにしてた
のだけど。咲いてちょうだい
よと、頭を撫でたら、ファスナー
がついてたの。白いお花に白いファ
スナー。私は恐る恐るファスナーを開け
たわ。ゆっくりと、とてもゆっくりと。白
い花は唇をあけるように一枚ずつ花弁を広げ
少しずつ匂いを放ち、あたりは甘い匂いに包
まれた。飲み込まれてしまいそうなその匂い
に、私

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詩|階段、おりるか、のぼるか

詩|階段、おりるか、のぼるか

のぼり続け
て苦しくな
って一気に
駆け下りた。のぼる時
よりも足取りは軽いが
焦れば焦るほど、もつ
れそうになる。焦るな焦るな慌て
るな。誰も追ってきてやしない。
勝手にのぼってきただけで、誰か
に要求されたわけじゃない。自分でのぼると
決めただけだ。降りるのに理由は必要ない。
のぼるも降りるも、自分の好きにすればいい

くだらない。格好悪いぞ、情けない。諦める
にはまだ早い。ここまでのぼってこ

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詩|こぼれて、おちる。

詩|こぼれて、おちる。

春が淡い桜色のカーディガンを羽織る頃、
そわそわとついたため息が、私の鼻をくすぐった。

むずむずした私を見て「大丈夫?」とあなたが笑う。
大切にしまっていた四文字は、くしゃみと一緒に、

こぼれて、おちる。

ひらひらと落ちた四文字は、桜色の絨毯に埋もれてしまった。

夏が白いシャツから肌を覗かせる頃、
太陽からの視線に、私は思わず目を細めた。

汗を拭うあなたの笑顔の眩しさに、私の体温は上昇す

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詩|魔女は、ファスナーを抱え空を飛ぶ。

詩|魔女は、ファスナーを抱え空を飛ぶ。

ある日、魔
法の箒を手
にいれて、
私は魔女に
なった。す
べての仕事
を放棄して
夜な夜な空
を飛んだ。
ある晩、満
月にファス
ナーをつけ
て私は満月
を二つに割
ったんだ。
ひとつは、煎
餅にして、お師匠
様に渡そう。もうひと
つには、もくもくの雲のク
リームをのせて、キラキラのア
ザランみたいな星をちらして私がぱ
くりと食べちゃおう。その晩はまっくら
闇になっちゃうけど、それも魔女のお仕事

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