- 運営しているクリエイター
記事一覧
遅刻する僕と人生のお話【掌編小説(約2000字)】
思えば僕の人生は、つねに遅刻の言い訳とともにあった。
幼稚園の時、遊ぶ約束に遅刻した僕は、「なんでちこくしてきたの」と幼馴染のカエデちゃんに言われて、「まいごのドラゴンさんがいたから、いっしょにおうちを探してた」と伝えた。信じてもらえなかった。
小学校の時、スピーチ大会の日に遅刻した僕は、「なんで遅刻してきたの」と先生に言われて、「妖精に会ってました。正直者だから、って、一時間だけ死期を
書き殴り、書き、殴る
むかしガチュクチュの花は植物学者の血を啜って花弁を青に染めていた。ガチュクチュは造花ではなく、死花には自身を生花として過ごした一生があった。カベイロは壁のとりもちに付着した木乃伊の頭に差したストローから女の体液を啜って木乃伊として過ごした余命一年の一年もあったが、結局彼が生きたのは三百年だった。藪医者を責めようと思った時にはすでに医者は壊れていて新たに取り替えられていたから怒りのやり場はなかった。
もっとみる僕の反撃【掌編小説(約1100字)】
朝、目を覚ますと、僕は眠っていた。僕は、僕の身体を揺する。僕は横になったまま、僕の顔を殴る振りをした。
「ほら、さっさと仕事へ行けよ」
と僕は言った。僕は今日もずっと自宅に寝転がりながら、一日を過ごす。僕は僕を愛しているし、僕もまた僕を愛している。ただ、僕は愛情と同じくらい僕を憎悪しているのだが、僕は僕を憎んでなどいない。僕は僕がいなくても困らないが、僕は僕がいなくなると生活ができなくなる
私が一番欲しかったもの
「サンタさんは子どもたちを夢と希望に溢れさせたい、って思っているから、良い子にしているとイブの夜にあなたたちの一番欲しい物を運んでくるのよ」
たしか小学校の低学年くらいのことだったでしょうか。クリスマスに向けて飾り付けられた教室で、給食の時間に、あわてんぼうのサンタクロース、がラジカセから流れる12月の中頃だった記憶があります。例年よりも早めの雪がグラウンドを覆う、とても寒い日に、担任の先生が