河辺宏太

Do共同代表。『模像誌』副編集長。東京大学文学研究会副代表。

河辺宏太

Do共同代表。『模像誌』副編集長。東京大学文学研究会副代表。

記事一覧

固定された記事

小説 手

 女の手を見ていた。  六月十五日、十三時二十分頃、私が大学の食堂のテーブルで本を読んでいると、女が私の前の席に座った。前と言っても真正面ではなく、真正面から一…

河辺宏太
1年前
3

『ムーンライト・シャドウ』月明かりの下で鳴る鈴の音色

私は幸せになりたい。長い間、川底をさらい続ける苦労よりも、手にしたひと握りの砂金に心うばわれる。そして、私の愛する人たちがすべて今より幸せになるといいと思う。 …

河辺宏太
3日前

私の好きなもの

・ラーメン ・寝ること ・遠野遥 ・YouTube ・牛乳 ・眼鏡 ・お金 ・人に教えること ・服 ・ネクタイ ・Billie Eilishの歌声 ・焼肉 ・雨 ・カップラーメン ・晴れ ・カラ…

河辺宏太
3日前
2

嘘の自己紹介

課題で自己紹介の記事を書けと言われました。 でも自己紹介は苦手です。 自分の言葉で自分を説明する。 自分を説明する時に使う言葉を、自分で自由に選択できる。 「高校…

河辺宏太
3日前
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2024/6/25 日記

何時に起きただろう。ひどく眠りが浅かった。昨日寝る前に頭痛がして、体温を測ったら37度あった。今日は休みたくない授業があったので祈りを込めて床に入ったのだが、微熱…

河辺宏太
2週間前
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日記 2023年9月

04.月曜 早起きして国会図書館に行こうと思っていたが、夢の中で行ってしまったので諦めた。 14時から学生相談室の予定が、15時頃に着いた。発達障害の相談なので、別に…

河辺宏太
4か月前
5

大学に泊まろうと思ったら追い出されたので野宿することにした。【ヒッチハイクなし】

字数:4,930字 推定読了時間:約13分 朝起きれない。 でも、明日も一限から授業だ。 そんな時に、絶対に遅刻しない方法を知っているだろうか。 そう、それは、大学に泊…

河辺宏太
8か月前
16

【改革しよう!】大学生、全く分別しない問題① 現状を知ろう編

字数:5,338字 推定読了時間:約14分 許せないことがある。 大学に入学してから、ずっと。 それは、大学にあるゴミ箱のゴミが、全く分別されていないことだ。 許せない…

河辺宏太
9か月前
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何者かになりたい欲求は私になりたい欲求だった。

何者かになりたいという欲求は、私になりたい欲求だった。 私は私に潜在する私性を凝縮して、ハイエンド私になりたいのだ。 今の私はそれを言語化するには少し眠すぎるた…

河辺宏太
9か月前
8

『あかご』

友人が書いたものを転載。 あの日、燃え盛る炎に溺れながら 血に濡れた少女が吠えた 『お逃げなさい!早く!!』 投げ渡された御守りを手に、今にも閉じようという門へ、…

河辺宏太
10か月前
4

短歌 愛情

モナリザの首にキスマーク 自分を隠すために洋服を着ている あの人は頭が固いからそれだけ馬鹿正直に私を愛す 愛される ことばが飛んでくる 水が落ちる 怖がる ほら…

河辺宏太
1年前
3

詩 雨粒

この詩は、リストのラ・カンパネラを聞きながら読んでください。 ダニール・トリフォノフが弾いているやつです。 あれ、好きなんです。雨粒の音がして。 ああ、でも、詩を…

河辺宏太
1年前
9

詩 信号

歩いている男 黒い革靴 手に持った傘 汗に濡れたシャツ どこかに向かっている 走っている女 白いスニーカー 膨らんだリュック 少し乱れた呼吸の音 どこかに向かっている …

河辺宏太
1年前
1

詩 だし巻き

うん、うん、そうだよね ばあちゃんは言いました 家へ帰る道のりでした ばあちゃんが夏服を買ってくれると言ったので 一緒に歩いて買い物に行きました 今はその帰りの道の…

河辺宏太
1年前
2

詩 本当

テーマ「嘘」に投稿した詩 わたし、尊敬しているんです 本当にきれい  代わりつくらない 明かり、おかげで好きになれた 適さない場所  絡みつく飾り 他愛、ない沈黙が…

河辺宏太
1年前
5

どうしても正解 ―『知の体力』を読んで―

過去の私が書いた読書感想文のようなもの。 どうしても正解 ―『知の体力』を読んで―  私は何事にも結論や理由を探してしまう性格である。自分は/彼は、結局何が言い…

河辺宏太
1年前
2
小説 手

小説 手

 女の手を見ていた。
 六月十五日、十三時二十分頃、私が大学の食堂のテーブルで本を読んでいると、女が私の前の席に座った。前と言っても真正面ではなく、真正面から一つ、私から見て右側にずれた位置だった。なので、向かい合わせになった訳ではなかった。それは既に三限の講義が始まっている時間で、百二十席ほどある食堂には私と女を含めて四人しか座っていなかった。これだけ席が空いている中、なぜ、わざわざ私の前に座っ

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『ムーンライト・シャドウ』月明かりの下で鳴る鈴の音色

『ムーンライト・シャドウ』月明かりの下で鳴る鈴の音色

私は幸せになりたい。長い間、川底をさらい続ける苦労よりも、手にしたひと握りの砂金に心うばわれる。そして、私の愛する人たちがすべて今より幸せになるといいと思う。

『ムーンライト・シャドウ』は新潮文庫『キッチン』に収められている短編です。
吉本ばななの小説には生死や愛をテーマにしたものが多いですが、本作はその代表作と言えるでしょう。

吉本ばなな1964年、東京生まれ。
日本大学芸術学部文芸学科卒業

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私の好きなもの

私の好きなもの

・ラーメン
・寝ること
・遠野遥
・YouTube
・牛乳
・眼鏡
・お金
・人に教えること
・服
・ネクタイ
・Billie Eilishの歌声
・焼肉
・雨
・カップラーメン
・晴れ
・カラオケ
・字を書くこと
・帽子
・たまにコンタクトを着ける日
・平仮名で書く「ほんとう」
・アマレット
・布団
・小説
・村田沙耶香
・人見知りで寡黙な女の子が、話に共感するときに珍しく私と目を合わせること

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嘘の自己紹介

嘘の自己紹介

課題で自己紹介の記事を書けと言われました。
でも自己紹介は苦手です。

自分の言葉で自分を説明する。
自分を説明する時に使う言葉を、自分で自由に選択できる。

「高校を二回退学しました……」
「600人規模の赤十字ボランティア団体で会長をやっていました!」
「趣味は散歩と読書、好きな歌手は米津玄師です」

上記の3つは実際に私がよく使う”自己紹介”の言葉です。
この3つは全て本当だけれど、全てほん

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2024/6/25 日記

2024/6/25 日記

何時に起きただろう。ひどく眠りが浅かった。昨日寝る前に頭痛がして、体温を測ったら37度あった。今日は休みたくない授業があったので祈りを込めて床に入ったのだが、微熱のせいかよく眠れなかった。しかし普段10時間は眠りたい私が5時間程度の睡眠で起きられたのはおそらく眠りが浅かったおかげで、そう考えるとある意味僥倖かもしれない。

そう、今朝はTに電話をかけようと思っていたのだった。Tが恋愛をしようとして

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日記 2023年9月

日記 2023年9月

04.月曜

早起きして国会図書館に行こうと思っていたが、夢の中で行ってしまったので諦めた。

14時から学生相談室の予定が、15時頃に着いた。発達障害の相談なので、別にいくら遅れても説得力が増すだけなのでいいだろうと思っていたのが原因だった。事実特に問題はなかった。

ターバンを巻いて行った。Kさんのインド土産。

行きの電車で悲しみよ こんにちはを読了した。中々良い。良いですねー。残りは、文章

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大学に泊まろうと思ったら追い出されたので野宿することにした。【ヒッチハイクなし】

大学に泊まろうと思ったら追い出されたので野宿することにした。【ヒッチハイクなし】

字数:4,930字
推定読了時間:約13分

朝起きれない。

でも、明日も一限から授業だ。

そんな時に、絶対に遅刻しない方法を知っているだろうか。

そう、それは、大学に泊まることだ。

大学に泊まりたい事前準備

大学に泊まるにあたって、私は周到な準備を進めた。

私の大学は22:00に完全消灯する。
そして、図書館は21:50まで開いている。

警備員は恐らく常駐しているが、消灯する前後の

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【改革しよう!】大学生、全く分別しない問題① 現状を知ろう編

【改革しよう!】大学生、全く分別しない問題① 現状を知ろう編

字数:5,338字
推定読了時間:約14分

許せないことがある。

大学に入学してから、ずっと。

それは、大学にあるゴミ箱のゴミが、全く分別されていないことだ。

許せない。本当に許せない。

改革します。

現状を知ろう!分別を知らない人たち

私の所属する二松學舍大学の悲惨な現状をお伝えするには、写真を見せるのが早いだろう。

これ、なんと「燃えるゴミ」のゴミ箱である。
ビニール袋が我が物

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何者かになりたい欲求は私になりたい欲求だった。

何者かになりたい欲求は私になりたい欲求だった。

何者かになりたいという欲求は、私になりたい欲求だった。
私は私に潜在する私性を凝縮して、ハイエンド私になりたいのだ。

今の私はそれを言語化するには少し眠すぎるため、せめてその思考の一端をここに記録しておきたい。

何者かに憧れるということ憧れる人はたくさんいる。
この人すげぇな……とか、この人みたいになりてぇ……とか。
あとは私の場合、「すごい」よりも「面白い」の方が優先度が高い。
こいつ、面白

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『あかご』

『あかご』

友人が書いたものを転載。

あの日、燃え盛る炎に溺れながら
血に濡れた少女が吠えた
『お逃げなさい!早く!!』
投げ渡された御守りを手に、今にも閉じようという門へ、焔の中を駆け抜ける
悲鳴と怒号が飛び交うなか、すれ違う者たちが皆、走る私の後ろを護るように立ち塞がった
『早く!』『早く走って!』
『あの子を護れ!!』
背後で上がる断末魔
その全てを見ないようにして、最後の階段を駆け上がる
『お前一人

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短歌 愛情

短歌 愛情

モナリザの首にキスマーク 自分を隠すために洋服を着ている

あの人は頭が固いからそれだけ馬鹿正直に私を愛す

愛される ことばが飛んでくる 水が落ちる 怖がる ほら悪いこと

抱き締めるときにかぎかっこをつけてみてもいい? 「風船をなくした」

角砂糖 紅茶をそっと飲む むしろ親密な愛のないセックス

詩 雨粒

詩 雨粒

この詩は、リストのラ・カンパネラを聞きながら読んでください。
ダニール・トリフォノフが弾いているやつです。
あれ、好きなんです。雨粒の音がして。
ああ、でも、詩を読むのには合わないかもしれません。
少しテンポが速くてね。
もし邪魔だったらラ・カンパネラだけ聴いてください。
この詩は読まなくていいから。

さて、君がラ・カンパネラを再生したところで、
詩の話でもしましょうか。
僕が詩を書きはじめた

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詩 信号

詩 信号

歩いている男
黒い革靴
手に持った傘
汗に濡れたシャツ
どこかに向かっている

走っている女
白いスニーカー
膨らんだリュック
少し乱れた呼吸の音
どこかに向かっている

歩いている子供
マジックテープの靴
膝の見える半ズボン
赤いランドセル
どこかに向かっている

杖をついている男
くたびれた靴
ねずみ色のハンチング帽
左手の指輪
どこかに向かっている

歩いている女
茶色いローファー

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詩 だし巻き

詩 だし巻き

うん、うん、そうだよね
ばあちゃんは言いました
家へ帰る道のりでした
ばあちゃんが夏服を買ってくれると言ったので
一緒に歩いて買い物に行きました
今はその帰りの道のりでした
大きめのシャツを買いました
ばあちゃんがかわいいと言ってくれた
黄色いかわいいシャツなのでした
わたしは左手に買い物袋を持って
右手はばあちゃんと手を繋いでいました
ばあちゃんは最近少しだけ足が悪くなって
一人で歩くとよろけま

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詩 本当

詩 本当

テーマ「嘘」に投稿した詩

わたし、尊敬しているんです
本当にきれい

 代わりつくらない
明かり、おかげで好きになれた
適さない場所

 絡みつく飾り
他愛、ない沈黙がうれしい
先輩との時間

 やわい服はらり
裸体、知るほど気持ちいい
あなたを慕うこと

 あまり映らない
かがみ、強さで隠しているもの
相槌が少し

 長引くつながり
社会、大丈夫を伝える言葉
遠回りして

 語りつくさない

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どうしても正解 ―『知の体力』を読んで―

どうしても正解 ―『知の体力』を読んで―

過去の私が書いた読書感想文のようなもの。

どうしても正解 ―『知の体力』を読んで―

 私は何事にも結論や理由を探してしまう性格である。自分は/彼は、結局何が言いたいのか、なぜあの行動をしたのか、なぜそれを望むのか。生きる意味を見失って自殺本を読み漁ったことすらあった。「答えのない」ものに意味はないと思っていたし、やる気が出なかった。だからこそ、正解のないものが苦手だった。例えば小論文である。以

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