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詩 雨粒


この詩は、リストのラ・カンパネラを聞きながら読んでください。
ダニール・トリフォノフが弾いているやつです。
あれ、好きなんです。雨粒の音がして。
ああ、でも、詩を読むのには合わないかもしれません。
少しテンポが速くてね。
もし邪魔だったらラ・カンパネラだけ聴いてください。
この詩は読まなくていいから。
 
さて、君がラ・カンパネラを再生したところで、
詩の話でもしましょうか。
僕が詩を書きはじめたのはずっと前です。
君と出会う前から書いていました。
詩は好きですか。
僕は好きです。書いているんだもの、当たり前か。
昔は、もっと真面目に書いていました。
頑張って七五調にしてみたり。
昔の人に憧れて、慣れない文語で書いてみたり。
今思うと恥ずかしい。
拙い詩でした。まあ、良い詩だったけどね。
君も知っているかな。見せたことはあったっけ。
きっと駄目出しするでしょう。
 
君はいつもつまらなそうな顔をしているね。
つまらなそうな顔で詩を読んでいる。
でも、君が僕の詩を実は好きだってことは、知っていますよ。
だって、好きじゃなきゃここまで読まないでしょう。
君はつまらないと思ったらすぐにやめる。
小説でも詩でも映画でも、つまらないなと思ったら、
ぽいと投げ出すたちでしょう。
だからここまで読んだのは、
僕の詩が気に入ったからじゃあないのかな。
 
君はいつも生真面目で、詩や小説で僕を判断していましたね。
君と僕とが繋がる手段が、それしかないのもありますが。
例えば僕が詩でパスタをうまそうに描いたら、
こいつはパスタに目がないと君は言うでしょう。
例えば僕が小説で手について細かく書いたなら、
こいつは手フェチだと君は決めつけるでしょう。
例えば僕が短歌で女性について詠んだとしたら、
こいつは女好きだと君は揶揄する。
正直に言おう、当たっているよ。
全部当たってる。赤面します。
でも君が僕を判断するとき、創作だけを見るんじゃないか。
創作に全てが表れると思っているでしょう。
詩を読むだけじゃわかりませんよ。
僕の中はもっと広々としているから。
例えば、僕の好きなこととか。
僕がクラシックを聴くだなんて知らなかったでしょう。
他にもあります。
休日にはよく美術館へ行くし、
実は漫画も読んだりする。
あと、雨の日に傘を差して出掛けるのが好きです。
少し変わってるかな。
 
この詩は、リストのラ・カンパネラを聞きながら読んでください。
ダニール・トリフォノフが弾いているやつです。
あれ、好きなんです。雨粒の音がして。
ああ、でも、詩を読むのには合わないかもしれません。
少しテンポが速くてね。
もし邪魔だったらラ・カンパネラだけ聴いてください。
この詩は読まなくていいから。

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