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短編小説

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僕が書いた文章たちです。是非楽しんでくださいね。
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Y

俺は捕まった。今まで真っ当に生きてきたつもりだった。しかしそれは自己満足に過ぎなかったようだ。なぜなら今こうして網で捕獲されている。もう逃げられない。俺はこの先どうなるのだろう。そんな不安を抱えながら何もできずにいた。

次の瞬間、水が降ってきた。大量の水だ。ああ、俺はこのまま沈められてしまうのだ。覚悟を決めたその時だった。水が渦を巻きだした。渦潮なのか。なんてついていないんだ。これじゃ助からない

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宵の明星

宵の明星

俺の名前は南雄星。みんなからはゆうせいって呼ばれてる。昔からサッカーが好きで子供の頃の夢はサッカー選手だった。だけど高校に進学して、周りの優秀な選手に敵わず、サッカーから離れてしまった。一時期はふらふらしてた。でも友達といても、飯食っててもサッカーのことが頭から離れなかった。同世代の選手が輝いているのを見ると悔しくて眠れなかった。やっぱり俺はサッカーが好きだ。そう気づいて、大学でもう一度サッカーと

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おもしろい

おもしろい

こんにちは。

週の真ん中水曜日、いかがお過ごしでしょうか。

本日は「面白い」という事について考えたいと思います。

おもしろい

「面白いってなんだろうな」

今年の春から大学2年となった圭太は考えていた。彼はお笑いサークルに所属し、親友の玲央とコンビを組んでいる。

「なぁ玲央、今度の新入生歓迎会の漫才どんなネタにする?」

圭太が尋ねると、気のない声で

「あー俺はなんでもいいよ」

と玲

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猫に小判

猫に小判

こんにちは。

読んでいただきありがとうございます。

「猫」というリクエストをいただきました。

突然ですが「猫に小判」という諺を知っていますか?価値のわからない者に高価な物を与えても無駄だという意味の諺です。

今回はそんな諺を題材に書いてみました。

猫に小判

昔、町の外れの小さな家に佐助は住んでいました。家族はおらず、1人で物書きをして暮らしていました。けれど彼の作品は鳴かず飛ばずで、生

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いつもそこに

いつもそこに

本当に大切な人というものは、なかなかその大切さに気づけない。

だからこそ大切な人達に感謝や愛を伝えられる人になりたい。

私は生まれた時から彼と一緒だった。

彼は、よく泣く子供だった。

お腹が空いては泣き、おむつをかえて欲しいと泣き、眠たいと泣いた。

それから彼はランドセルをかった。

自転車の練習をした。

好きな女の子ができた。

受験をした。

スポーツに打ち込んだ。

一人暮らしを

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ここはどこ?わたしはだれ?

ここはどこ?わたしはだれ?

こんなにも人がいるのに私は1人ぼっちだ。誰も私の存在に気づかない。いや、気づいていても全く関心を示さない。それがこんなにも寂しいことだとは知らなかった。誰か私を見つけてくれ。

思えば私はいつも求められてきた。その度に私は「助けてあげる」という気持ちでいた。いつしか自分が誰かの役に立てる喜びを忘れていたのだ。

だからこんなことになっているのかもしれない。誰も私に関心がない。私は役立たずなのか。い

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ついつい言っちゃう

ついつい言っちゃう

みなさんの周りには人の言ったことを何でも肯定する肯定人間がいませんか?

僕もその肯定人間かもしれません。いやもしかするとそれ以上に厄介な人間かもしれません。

なぜなら僕は人と同じことを言ってしまうのです。誰かが僕に向かって話してくれたことをそっくりそのまましゃべってしまうんです。意識しても直せなくて困り果てているところです。

そんな自分が恥ずかしくて恥ずかしくて嫌になってしまいました。こんな

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P-N-

P-N-

 気がつくとそこは銀世界だった。一寸先も見えないほど強く吹き荒れる雪は視界とともに体温を奪っていった。冷気が身をさし、不安と恐怖が私を襲った。

私はいつからここにいたのだろう。自分は一体何者なのだろう。駄目だ。思い出せない。
途方に暮れて下を向く。そこで初めて私は自分がベルトコンベアに乗せられて運ばれていたのだと知った。

しとしと。私の体は雪が積もり始め真っ白になっていた。いますぐこのベルトコ

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安心安全

安心安全

男とは女を守るものだ。そう教わった。

今まで俺は、適当に生きてきた。
うっかり穴に落ちた事もあれば、夜な夜な宴にも参加したし、自由気ままに宙を舞う事だってあった。

そんな俺を変えたのは、一人の女との出会いだった。それは運命の出会いだった。
その日から俺は、彼女を守ると誓った。
彼女の安全を最優先に考え、彼女が安心して暮らせるように努力した。
そんな俺に対して気安く接してくる奴もいたが構わない。

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ノウ

ノウ

温かい。
いや、そんなはずはない。
安心する。
何故だ。まさか本当に。
ああ、そうだったのか。
それなら、安心して死ねる。

「生まれ変わりって信じる?」
突拍子のない言葉に僕は内心いらだちを感じていた。
彼はノウという。事あるごとに僕にかまってくる。

僕は彼を疎ましく思っていた。
そんな彼に言われた言葉が僕には聞き流すことができなかった。
僕は父親の顔を知らない。僕が生まれる前に亡くなった。僕

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私は二階に住んでいる

私は二階に住んでいる

私は二階に住んでいる。
お気に入りの帽子をかぶっている。
人に見られる仕事をしている。
私にはライバルがいる。
彼は一階に住んでいる。
彼もお気に入りの帽子をかぶっている。
私たちはいつもスポットライトの取り合いをしている。
私が注目される時があれば、彼が注目される時もある。
でも私は彼とは違う。
私は彼より魅力的だ。
彼を見た人々は足を止めずに去っていく。
私を見た人々は足を止めてくれる。
まる

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