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俺は捕まった。今まで真っ当に生きてきたつもりだった。しかしそれは自己満足に過ぎなかったようだ。なぜなら今こうして網で捕獲されている。もう逃げられない。俺はこの先どうなるのだろう。そんな不安を抱えながら何もできずにいた。

次の瞬間、水が降ってきた。大量の水だ。ああ、俺はこのまま沈められてしまうのだ。覚悟を決めたその時だった。水が渦を巻きだした。渦潮なのか。なんてついていないんだ。これじゃ助からない。激しく音をたてながら回転する渦に巻き込まれる。

俺は生きていた。奇跡だ。だんだんと水が引いてきた。なにが起こったのかわからない。だが確かに俺は生きている。俺はまだ回り続けている。こんな処罰を受けるような行為をしただろうか。自問自答を続けた。

回転が終わると俺たちは部屋から出され、別の部屋に入れられた。しかしその部屋でも回転は行われた。さっきまでは横回転だったのに、次は縦回転だ。なんとも言えない浮遊感が気持ち悪い。誰か俺を助けてくれ。心の底からそう思った。しかし無情にも助けはこなかった。

やっとだ。やっと俺たちはその部屋から出された。だが最後に最も苦しいことが待ち受けていた。俺たちは鉄で押し潰された。しかも高温の鉄だ。その結果形が変わってしまった。なんて仕打ちだ。

だがシワが伸びて清潔になった。これで人前にでても恥ずかしくないだろう。

そうか。俺はシャツだった。

丸一日着用された俺は洗濯機で洗濯され、乾燥機で乾燥された。そしてアイロンで綺麗にシワが伸ばされた。

さあ明日からも頑張ろう。

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