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感情のエッセイ

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気持ちを込めて書いた文章
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#子供

親じゃないからできること

親じゃないからできること

夏休みの終わりに、双子の甥っ子ズがうちに泊まりにきた。

嫁さんのお兄さんの子供で、小学5年生。10歳だ。
僕と出会ったのは小2の頃だったから、ずいぶんおっきくなったなぁとおもう。あのころ見分けのつかなかったふたりが、最近はすっかり別タイプの顔として育ってきている。

夜勤明け。ベッドから重い体を起こしてしばらくするとチャイムが鳴り、彼らはこのアパートへなだれこんできた。来るやいなやリビングに直行

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心の棚に灯りともして

心の棚に灯りともして

そういえば、夏休みに入ったんだなぁ。noteを読んでいてぼんやりとそう思った。

僕たち夫婦に子供はいないので、そういう季節感があまりない。いつだって僕らは2人で、暑い寒いといいながら思い出に色を添えている。
心の棚に飾られたそれらを眺めながら「また2人が彩られたね」と確かめ合う日々。

写真が並んでも埋まらない空白は、子供ができたら埋まるのだろか。

なんて思いながらも、目に見える多忙の毎

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可愛い僕のまぼろし

可愛い僕のまぼろし

むかし、女装をしてたことがあった。

可愛くなりたいって願望をずっともっていた。小学生時代、姉の友人に「かわいいー!」と誉められまくったのがきっかけだったと思う。
言われて照れている反応をふくめた年上のお遊びは、僕の自意識に少なくない影響をあたえた。

その誉め言葉の甘い蜜は、ずっとぼくの胸に残っていた。
当時姉がひどいアトピーと肌荒れに悩まされていたのと反対に、僕の肌はその若さをありありと讃えて

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ぼくのそばにいて

ぼくのそばにいて

姉が結婚した時、めでたい気持ちより先に一抹の寂しさがあった。

嫌いな部分はあっても、ずっと仲良く笑いあってきたお姉ちゃんが遠いところにいってしまう。嫁いでいく先が遥か遠くの土地だとか、そういうことじゃなかった。

名字が変わるだけ。そう意識しても、離れていく感覚はどうにもぬぐえない。さびしい。さびしかった。
姉はこの家にずっと嫌悪感を抱えていて、一人暮らしを始めるときも「ここにはいられない」と言

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知らないミミズ

知らないミミズ

ずっと昔、穴を掘るのが好きだった。
庭や駐車場の土を、小さなスコップひとつでひたすら掘っていた。

はじめは穴が大きくなっていくのが面白い。そのうちにミミズがでてきたり、こんなとこに石が埋まってるのかとビックリしたりして楽しい。
でも何より面白かったのは、奥へ掘るほどに土の質が変わっていくことだった。

掘れば掘るほど土の色が変わって、やがて粘土質になってくる。
この、オレンジ色の土に辿り着いた時

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子供の蛙

子供の蛙

理不尽が嫌いな子供だった。冷蔵庫に並んだサッポロ黒ラベルは一本200円以上するのに、100円そこそこのスプライトがひとつもない理屈が、当時の僕には全く納得できなかった。
あんなどうしようもない親父が、僕より贅沢をしているなんて。

親父は自分のルールの中に生きている。カッコいいように聞こえるけど、都合によってそのルールを曲げたり隠したりするから、みっともなさが目立つ。その不細工なプライドに障って

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私のへどろを知って

生まれた赤子の手を触って、涙が止まらなくなる。そんな夢をみた。

僕たちの間にまだ子供はいない。現在のスタンスとしては「できてもいいし、できなくてもいい」といった感じ。

最初は子供は作らないつもりだった。嫁さんにもその旨は伝えていた。

金銭問題であるとか、嫁さんのメンタル問題だとか、年齢による流産やダウン症等のリスク。色々と理由はあった。

しかし、一番の理由は「僕が頑張りたくない」からであ

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