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知らないミミズ

ずっと昔、穴を掘るのが好きだった。
庭や駐車場の土を、小さなスコップひとつでひたすら掘っていた。

はじめは穴が大きくなっていくのが面白い。そのうちにミミズがでてきたり、こんなとこに石が埋まってるのかとビックリしたりして楽しい。
でも何より面白かったのは、奥へ掘るほどに土の質が変わっていくことだった。

掘れば掘るほど土の色が変わって、やがて粘土質になってくる。
この、オレンジ色の土に辿り着いた時のワクワク感。更なる未知をスコップが発掘するんじゃないかという高揚だ。

見たこともないミミズがいるかも。いや、宝石がでてくるかも。あ!温泉が湧いてくるかもしれない!

しかし、小さなスコップはそれ以上先に進むことはなかった。粘土質の土は加速的に硬さを増していき、岩のようになって侵入を拒んだ。

場所を変えてみても、結局そこはオレンジの壁だった。水を吸わせれば泥になって柔らかくなるんじゃないかとバケツを使ったりした。小さな池ができただけだった。

世紀の大発見という夢は、スコップと同じように片付けられてしまったのだった。

そんなことを、ふと思い出した。
いま思えば、最初は粘土の向こうを見たくて掘ってたわけじゃなかった。なんで辞めちゃったのかな。僕に向いている、いい一人遊びだったのに。

なんでもこういうことってある。楽しくて始めた遊びが、壁が見えた途端楽しくなくなっちゃうこと。
さっきまで楽しめていた既知が、つまらない玩具になってしまう。

もったいないなと思う。
僕は楽しんでたい。辛いのもつまんないのもやだ。


いまだったら、もう少し深く掘れるのかな。

知らないミミズ、いるかな。

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