マガジンのカバー画像

DAYS

16
My Diary
運営しているクリエイター

#医療

90歳とSNSへのパッション

90歳とSNSへのパッション

まただ。また今日も彼女は座っている。

ボクは怪訝な顔をしていたわけではない。
大丈夫かな、と心配していた。

彼女との出会いは、ふとしたことだった。

ボクたちがいつものように朝回診をしていると、顔を赤らめながら、何やらこちらをチラチラ見ている人がいた。

同僚が担当している患者さんだった。

患者としての彼女は、退院した後もちょくちょくボクの外来の日に病院にやってきては、整然と並んでいるその椅

もっとみる
魔女ばあちゃんと魔法の瓶

魔女ばあちゃんと魔法の瓶

子供の頃からボクはかなりヤンチャで、
毎日のようにケガをしていた。

毎週土曜日は、
親友の大輔の家でピアノ教室があって、
ボクは大輔たちと一緒にピアノを習っていた。
その時間の前は、いつも大輔の家で遊ぶのが恒例で、その日も大輔と大輔の妹の3人で、自転車で坂を下って遊んでいた。

その日は雨がパラパラ降っていた。

ボクはかなりふざけていた。

大輔→大輔の妹に続いて坂を下ろうとした時に、普通に下

もっとみる
東京上空から見えた世界

東京上空から見えた世界

日本は、数回訪れた過渡期を経て、
新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言が全面解除された。

でも、白い巨塔内の状況は何も変わらない。
相変わらずの重症度だ。
「生きる」か「死ぬ」か。

今日が「友引」かと思うくらい、
次々に人が亡くなった日も数えきれない。

24時間、心が休まる瞬間がない。

毎朝7時前から教授回診は始まる。
スタッフの絶対数が不足している状況で、
このコロナの対応に追われ

もっとみる
ボイスメッセージから伝わる心

ボイスメッセージから伝わる心

2020年4月19日。今日は日曜日だ。
何年経ってもきっと忘れることのない、
そんな今日のことを書き留めておこうと思う。

ここ最近、ずっと体が重かった。
体重的なものではなく、
心の重みがそのまま体にのしかかっていた。

ほとんど休む間もなく
休憩時間がとれないことで
ご飯すら食べられない時も日常的で、
それでも常に頭を働かせて
手を、足を、体を動かし続けなければ
次から次へと来る仕事に対応出来

もっとみる
2020年の記憶と鬼滅の刃

2020年の記憶と鬼滅の刃

病院を出ると、雨だった。
腕時計を一度見て、空を仰いだ。
雨か、、、。

午前0時。
日付けが変わろうとする頃、
辺りは当に真っ暗だった。

それどころか、
自分は今日の天気も知らずに働いていた。
しばらく、もぐらになっていたみたいだ。

少し寒いな。

雨のせいもあって吐く息は少し白く、
暖かい病院の中で白衣から私服に着替えた後、
肘までまくっていた薄手のパーカーの袖は、

もっとみる