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#ファンタジー
最終回season7-5幕 黒影紳士〜「色彩の氷塊」〜第七章 花手水
第七章 花手水(はなちょうず)
届かなかった想い
届いた想い
どれも何時しか願いとなりて
此の世界を安らかに見守っている
清まれし願いは
生きていく我々に
魂の安寧を授けん
――――――――
「サダノブ行くぞ!」
黒影は痛む背中から血を滲ませながら、朱雀剣を後ろ手に精一杯引く。
三匹の龍が更に水中を出たと思われた時、華渦巻く朱雀剣が丁度全ての花弁を巻き込んだ。
サダノブ
最終回season7-5幕 黒影紳士〜「色彩の氷塊」〜第二章 水晶華
第二章 水晶華
一つ、煉獄映す業火の情熱
二つ、澄み渡る生命を讃え
三つ、言の葉揺らす君を想い
四つ、眠りつけば温もり残し
五つ、照り付ける輝きをも我が身にす
其れが何かと言いますれば、
五つの花弁の物語で御座います。
――――――
「総てを吸って行く?」
黒影は口にしていた珈琲カップをソーサーに置き、思わず確認した。
「ああ、五大元素ってあるだろう?その要素がある物、総
season7-4幕 黒影紳士〜「黒水晶の息吹」〜第二章 夢に独り
第二章 夢に独り
「……では、最後に別れて其の儘爆風に巻き込まれて亡くなったと?……良いですか?窓の外を一度ご覧なさい……」
病院で目覚め、暫くすると勲が尋ねて来た。
私が光輝との最後の記憶を辿って話すと、そう言って窓の方へと歩む。
ゆっくりと開かれて行くカーテン……。
随分と久しぶりの様な……懐かしい光が溢れ、勲の姿は逆光でくっきりとした漆黒の影になる。
勲はそのまま窓の外を見て続け
season7-3 黒影紳士 〜「手向菊の水光線」〜🎩第六章 生命の翼
第六章 生命の翼
「風柳さん……」
「……ああ、分かってる」
湖にせめて二人の願いを叶えてやろうと辿り着くと、黒影は風柳に声を掛けた。
風柳は黒影に言われた、自害の可能性の話を思い出し、黒影の目を見てゆっくり頷いた。
サダノブが暁春を、風柳がデュランテ医師の腕を握り、警戒はしている。
ただ、黙祷をしたいと言うのでその時は離してやらねばとは思っていた。
これだけ、居るんだ……まぁ、大丈
season7-3 黒影紳士 〜「手向菊の水光線」〜🎩第五章 見知らぬ花
第五章 見知らぬ花
「……そんな、遥々こんなに遠い異国の地に来たんですよ?!」
式田 暁春は従姉妹の揺波を何とか彼方此方から資金を用立て、スイスにいた。
日本で揺波の容態をずっと匙も飛ばさず、対処療法で診てくれていた田沼 嘉樹(たぬま よしき)の紹介状も持っている。
田沼 嘉樹の紹介状を見たスイスの医師、ハロイド•デュランテ・ガーベルは即座に揺波を最先端医療機器の精密検査へと回した。
到
season7-3幕 黒影紳士 〜「手向菊の水光線」〜🎩第三章 菊の在処
第三章 菊の在処
「サダノブ……衛星画像からこの辺一帯を探してくれ。此れだけ色が豊富なんだ。かなりの数の菊を育てているに違いない」
黒影はそう指示を出す。
「先輩」
「何だ、問題でも発生したか?」
黒影はサダノブがさっさとタブレットPCで検索しないので、若干苛立ち言った。
「いえ……其れより、白雪さん……」
「えっ?白雪……何処行ったんだ!?」
黒影はさっきまで隣にいたのに、突如姿を白雪が
season7-3幕 黒影紳士 〜「手向菊の水光線」〜🎩第二章 濁流
第二章 濁流
一見人と合わなかったから、寂れた街みたいに思い初めていた。何て安易なんだ、見ようとしたがらない心は。
僕は僕のロックを外さなければならない。
……意地でも、この場所がこれから住む場所だと思い、突っ込んで行き進むしかないんだ!
川の流れの中に子供がちらほらと流れている。
もう息絶え流れに逆らう事もなく、飲み込まれは浮かぶだけの物の様になってしまった者もいる。
朱雀の大きな
season7-3幕 黒影紳士 〜「手向菊の水光線」〜🎩第一章 崩壊した世界で
第一章 崩壊した世界で
僕は其の世界の名を知っていた。
だが、其の世界の事を現実には無い夢の様に思っていたのだ。
其の世界の名を「正義崩壊域」と云う。
僕は其の世界の表面を知っていたにも関わらず、内面を知ろうともしなかった。
もし、もしもだよ?
自分の世界に小さな世界が在って……そう、例えば日本の中に小さな日本が独立している様なものだ。
然も其れが大地の様に浮かんでいて、自由に操作
season7-2 黒影紳士 〜「東洋薔薇の血痕」〜🎩第五章 再生
時藤 浩史宅付近で、やはり黒影の思っていた通り、蔦は動きを止めた。
「此処からは、夢探偵社だけで十分です。有難う、涼子さん、穂さん」
黒影は二人に言う。
「でも黒影の旦那だって、サダノブも」
涼子は二人の怪我を気にした。
「もう、肉体労働はする気はないのです。此処からはこっちだ」
と、黒影は己の頭を指差し微笑んだ。
「成る程、そう言う事なら私達じゃ太刀打ち出来ませんね。お二人共、其れに白雪さんもご
season7-2 黒影紳士 〜「東洋薔薇の血痕」〜🎩第四章 蔦
「なっ!……何だ!?」
黒影は足を引っ張られる感覚に、驚いて声に出す。強い力で足が引き摺られ、地上に手を付いた。
何が起きたのかとサダノブを見ても異変は無い。
着いた掌に不気味な感覚があった。
ミミズの様に冷たい何かが一瞬通ったかと思うと、手の甲に其れは姿をやっと現す。
シュルッと黒影の指に絡まり、蔦は其の身体毎引き摺り、サダノブから離そうとするのだ。
まるで意思を持っているかの様に、黒影が成す
season7-2 黒影紳士 〜「東洋薔薇の血痕」〜🎩第三章 落下
3 落下
「どうせ調べるのでしょうから、此方からお話しします。庭に面して、丁度椿の直ぐ隣にハンバーガーショップありますでしょう?」
と、時藤 浩史は確認する。
「ええ、在りますね。あのハンバーガーショップの店の景観も落ち着いた色に抑えているのは、此方の建物に十分配慮されている様に窺えましたが……」
黒影は良くあるご近所トラブルからの行き過ぎた犯行の線を消そうとしている。
「景観「は」問題な
season7-2 黒影紳士 〜「東洋薔薇の血痕」〜🎩第ニ章 東洋薔薇
2 東洋薔薇
濃緑、紅が点々と差します東洋薔薇の
上に見えますは綻びた
夏名残、忘れ置かれた簾
そぞろ寒さに揺れまして
窓の中に見えますは
温もりでせうか
冷徹か
――――――――――
「まぁ、綺麗な庭。……あの、SNSで写真を趣味で上げているのですが、良かったらお花を一枚撮らせて貰えませんか?」
一人の大学生程の若い女が、モダンなコンクリートの一定間隔に開けてある四角い穴
season7-2 黒影紳士 〜「東洋薔薇の血痕」〜🎩第一章 暖炉
1 暖炉
いないかも知れない
この永遠に終わりが見える頃
君と僕は
だから先を見たく無くなって
願う事しか出来なかった
その時大量に降る
容赦無い雨を想い
立ち尽くしていた
何時も不可能を可能にしたよ
どんな事だって成し遂げてみせたさ
ずっとそれで良いと思っていたのに
僕は意思を持ち始めた……影、屍
――――――――――――
プチプレリュード 「ゼロポイント」
②読者様プレゼント企画「黒影紳士」~光影の舞踏会~ポップアップ版🎩第二章 3もう一つの動機 4シャッター 5刻まれた時
3 もう一つの動機
「佐々木 晴也は何かの能力者かもしれな。見えない筈の物を写真に収めるなんて…。」
風柳は黒影に聞いた。
「確かに…。僕が思うに、念写か何かではないかと推測しています。然しそれだけならば、危険人物では無い。精々違法な画像を売る程度ですよ。僕では無く、其方は風柳さんの管轄でしょう?」
黒影にそう聞かれた風柳は夜空に白い息を吐き、
「あ……ああ。だとしたら警察で何とかすべきだな