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物語の芋虫まとめ

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物語になる前の物語の芋虫。のまとめ。
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走馬灯だソーダ。

走馬灯だソーダ。

大きな総合病院。元気な人もそうでない人も行き交うのが総合病院。今日もバタバタわらわら。
ここの入院病棟の個室で窓の外を眺めているのが私。
毎日の日課ように主治医による診察がある。今日はどうですか?あーですか?とか色々聞く。いつものこと。いつもの診察。でも今日はいつも同じことを言う先生の顔が暗い。

「もう長くないですね」と先生は言った。

“絶望”
という漢字は書けるがどういう感覚なのか、絶望とは

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死と饅頭

死と饅頭

日が沈み。街の明かりがぽつぽつもつき始める頃。私はぽつりぽつりと愚痴をつぶやきながら街を眺めていた。
この場所は街から少し離れていて、高い山の上にあるから街も見渡せる絶景のスポット。だが、神社のため誰も夜は近寄らない。お化けなどが出たらどうしようと冷や冷やなのだ。無論、私はお化けなどは信じておらずただ日頃の世間への愚痴を缶ビール片手に街にぽつりぽつりと吐きにきているのだ。
この私の愚痴は誰に向けら

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ぐるぐるまわる

ぐるぐるまわる

「ぐるぐるまわる」
作 OnnanokO

初夏の暑い日。蝉が鳴いている。人通りが多いこの商店街にたくさんのカメラ機材がある。このカメラを機材を準備する人の中に綺麗に着飾った女性がいる。
「今日は笑顔で頼むよ」と清潔感のない男性がその女性に声をかける。
「はい、よろしくお願いします」と果汁100%ではないかというくらいフレッシュな笑顔が弾けた返答する。どうやら今回が初めてのレポートということで緊張

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【獅子をかぶる】

【獅子をかぶる】

合コン。合同コンパ。だいたい初めましての男女が出会いを求める場所。そんな場所に私はいた。今日のためにメイクも決めて服装もバッチリだ。別に飢えているわけでないが変に見られたくないのはある。だからバッチリしていく。
一通り自己紹介も終わり各々気になった人と雑談をしていく。
「ねぇねぇ」と早速声がかかった。見た目も爽やかだった少し気になる男性だ。

「それ何?」
「それって?」
「頭の上のやつ」

と指

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折る

折る

“折る”と“祈る“は似ている。

餃子を作る時、餃子の中身を作ってそれを皮に包む。皮に包んだらその皮を折っていく。あの餃子ですよとわかるような独特なあの形を折る。折っている時間は無心になれるし、折っている時間が好きだ。
折り目がついていく。あの感覚。あの1秒にも満たない時間で世界は回っている。私が餃子の皮を折っている間に誰かが何かを思い、誰かが希望を覚え、絶望に呑まれる。そんな一瞬。そんな祈りに似

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ぎりぎりやめて

ぎりぎりやめて

木こりである僕は木を切っていたはずだった。だが今は女神のような人にすこぶる説教をされている。

「そういうのはダメだよ」

と怒られている。なんで怒られているのか全然理解ができない。商売道具である斧を下に置いて説教をされている。状況が読めない。仕事をしていたら急に「おいおい」と声をかけられた。この女神は近くの湖の中にいた。そこから出てきたかと思うと説教だった。
僕は手の握力が人より強かった。握りつ

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びーん

びーん

鉄の柵を金属バットとかで強く叩くと力が戻ってきて手がビリビリする時がある。表現するな
らビーンって感覚。あれで生きているなと実感する時がある。
それと同時に“バーン”とか“ガーン”とか“ギーン”と音が響く。それに気づいて皆が振り返る。音のスポットライトである。このスポットライトには当たりたくはない。何故ならスポットライトに当たりたいわけではなく、手のビーンを感じたいだけだからだ。手のビーンを感じら

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そんな感じだった?

そんな感じだった?

体を重ねて時間が過ぎる。愛という言葉で片付けていいのだろうか。この行為。でも、幸せではある。だから愛なのだろう。横でぐだっとしているこの男のことは私は好きだ。大好きだ。この男もそう思っているということにしておこう。虚しくなる。
付き合いは長い。もう5年は経った。結婚まではまだ進まないが私は進んでもいいと思っている。家族になることより先に一緒に住んでしまったのがこのダラダラの原因なのか、よくわからな

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こくはく

こくはく

少しだけ。少しだけだけど夜の匂いってのがわかってきた。寂しいけど愛おしいそんな匂い。この匂いが好きなわけじゃないけれど、嫌いなわけでもない。お酒も飲めるようになった。これで大人か?大人の定義が分からない。大人ってなんだ?人間の説明書が欲しい。どこにあるんだろう。
たばこを吸っている男性が好きだった。なんだか大人っぽくて。たばこを吸っていて様になっていれば好きになっていた。総称するなら“簡単な女”で

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羽子板

羽子板

正月といえば羽子板。と誰かが言っていた。まだ寒い時期に年が明けてすぐ、河辺の少しの広くなっている空き地に友達と集まった。
吐く息が白く、陽も出て間もない。年が明ける前に会った時に約束した「皆であの場所で羽子板をしよう」の約束は無事果たされそうだ。

「羽子板って面白いの?」

そんな言葉が方々に飛び、不安もよぎったがなんとか今日にこぎつけた。

「あけおめ」

と私が皆に言うと

「あけおめ」

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「でーと」

「でーと」

オシャレなカフェで一息。そんな一幕。今の時代おしゃれなカフェでの一息は携帯、「スマートフォン」を触る時間。スマートフォン=休憩というようなものだ。
午前中のデートを終え、午後に差し掛かる前に一度休憩を挟む。セルフサービスを振り翳したオシャレという名のカフェへ。
いつからオシャレというのはセルフに名前が変わったのだろう。オシャレが会見しているところを見たことがない。

オシャレという紙が顔に貼ってあ

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花よりハンバーグ

花よりハンバーグ

誰かに「好きー!!」とか言うのは疲れる。
「好きー!!」と言われるのも疲れる。
あー、先程まで異性とどこかへ行っていた女には見えないだろう。今はファミレスで大きな大きなハンバーグが鉄板でジュージューいっている前に座っている。このジューはハーモニーだ。オーケストラ。私のためのオーケストラ。

「俺、好きな人できたんだよね」

何?この歌詞。この独唱。夜景というロマンチックな場所で生涯を共にする台詞で

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どうすりゃあいい。

どうすりゃあいい。

僕の上空に浮かぶあれは紛れもなくUFOである。未確認飛行物体。
まぁ今は確認できているから確認飛行物体だが。
見た目は丸い円盤型と言われるあれだ。そう、あれだ。これが現れてもう4日が経つ。
突然、現れたこれは僕の頭上で静止すると光を僕に当てた。僕は浅はかなSF知識でこれはこの光の中に吸い込まれて捕まると思い近くの物に必死にしがみいたのを覚えている。でも何も起きなかった。吸い込まれもしないし、動きも

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触れると壊れそうなくらい脆くて。でも触れると温かい。

触れると壊れそうなくらい脆くて。でも触れると温かい。

朝日に照らされた母の姿は小刻みに震えているように見えて、今にも崩れ落ちそうな砂の彫刻のようだった。そんな朝を迎えるのはこれから先ないだろうし、ないと信じたい。そんな朝だった。

私は“ワタ”中学1年。部活はテニス部。友達は多い方。放課になれば誰かしらと会話している。好きな人とかはよくわからないけど、気になっている人がいないわけではない。
授業中は何かと昼寝か、手紙交換。早く終わることを願うばかり。

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