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東京装甲少女  EPISODE0 第25話    【 響と吹雪 】


3番隊を率いる、初瀬龍臣は、
北の丸公園の集会後

他の隊が手始めに皇居周辺で行われている
炊き出しの警護を行っている際中

別動隊として近隣の治安の状況の偵察を
兼ね千代田区周辺を訪れていた。



朝日
【 まあ、じゃあ、大体の方針は決まったと
        思うんで、あとは、今後の仕切りは
  龍臣にって事で、それとな、
       こんなご時世なんで先立つものが
  必要だと思ったんでな、、。
  皆にこれを渡しておく、、、、】

というと朝日は布にくるまれた
多数の木刀をガラガラと
地面に広げた。



朝日
【 そう、錬命新當流の稽古で
        いつも使ってた木刀
だ。
        秋水に協力して貰ってな、隠していたのを
        一緒に運んでもらったんだ。

  

  これから俺らは、自分たちが悪だと思った
  連中をこれで捻じ伏せなきゃならない。

  だが皆、これだけは忘れないでくれ、
  正義とか悪なんてものは時代や
  環境や立場や角度によって変わる
もんだ。
  
  だから正直自分たちが正しいかなんて
  今の俺たちにはわからない。
  たぶんそれはこの先解ることだと思う。

  上の方でふんぞり返っている奴らが
  この状況にしなければ
  
  俺らもこんなことをしなければ
        良かった筈だ。
 
  悪事を働いているものを悪い奴らと
        感じるかもしれんが
  どんな奴らもこの国の被害者だ!!
  
  だから倒す倒さないの相手は自分たちの
       判断
で決めてくれ。
  そして、助けたいと思う奴らは
        助けて
やってくれ。

  俺らが今やれる事は
  自分の正義を貫き助けられる奴は
        助ける。
  ただそれだけだ!
  
頼んだぞ!! 】


門弟達は応と威勢よく応答すると、
九曜紋の羽織を袖に通し
木刀を順に手に受け取った。



初瀬は、朝日がその場で語っていた
正義と悪の概念について
巡回中に回想していた。



例えば独裁者の治める情報統制された国では、
他の国の情報などは一切入ってこない。

そこに暮らす人々は、その国の情報しか知らず、
状況に不満は持ちつつも、ある程度不満の中
満足して暮らしている。


元々他の情報が無いので取捨選択する
余地などもない。

故にその閉鎖的な思想から恭順し生まれる考えを
善とするならば、それを否定する考えは全て
となる。

だがこれは独裁国家のみならず

民主主義の日本でも2011年に
イーライ・パリサーが出版した書籍
【The Filter Bubble】のように
搾取構造目的で外資系企業によって導入された
フィルターバブルの影響により2032年の
現在の東京でも同じような考えが顕著だ。

この国は技術的な進化は昔と比べ進んだのかも
しれないが20年前より人間の根本的な考え方自身は更に後退してしまったのではなかろうか?


民主主義国家では、独裁国家と違い情報が
規制されている訳ではないので一見、
多くの選択が出来ると思うが、
そもそも、それは自分という人間の
考えから生まれ出ていないのではないだろうか。

思考の源泉を考えると果たして、
この情報加多の社会で
自分という” 個 ”から” 純粋に産まれ
出た考え ”
とはどれだけあるのであろうか?


情報が、共有されないオフラインの書籍や
そのほかの情報をきっかけに何かを考える、
または何かと掛け合わせて何かを作り出す
というのは、オリジナルであるとしても、


情報が、共有されているオンライン上の
誰かの意見や、流行、ビックデータ、時代、商業的、世間、SNS、有名人、TV、AI、
インターネットの意見を参考にした考えなどは、
自分の意見と果たして言えるのであろうか?

自我ではなく量産化され平均化された考えでは
なかろうか?

また、このような人々の大きな意見で得た情報には、本来自我はないのだが、検索したという行為により自分から調べたという思考のフィルターをかけてしまい、企業が、設定したフィルターバブルの影響で、そのフィルターの内側にいるとは気づかず
同一の考えや、仲間以外の意見や考えは
排除しやすい傾向を生み出している。

結局のところ思考する力という面倒な作業
省きたいという人間の自堕落な性をシンプルに突いたフィルターバブルは
ビックデータ以外の探求力を育むことは出来ず
無関心で無気力で自分の見たいものしか
見たくない、知りたいものしか知りたくない、
やりたいものしかやりたくないという、
多くの時間や労力が費やされる学びやプロセス
そして異論は認めない考えは、現在も続いている。

そしてそのような物や考えに対しての
インスタント思考は中身や含みを持たない
多くの上に画一的な考えの
YESマンを多く生み出した。

不正をすれば辞職!
戦争反対!
人権尊重!
差別反対!

正論とは単純であるが故に難しく否定するので
あれば代替え案や再構成
を考え実行する
スクラップ&ビルドを行わなければならない。

不正をしたのなら辞職をさせたその先で、
不正が行われない取り組み、
戦争を反対するのなら、昔から学び戦争を
行わないようにする為の学びや取り組みや仕組み
など検討実行しなければならないのに、
矢面に立つ人間に対してマイナス面ばかり浴びせる1億総コメンテーターの状況では、リスクを取り
前に出てくるものは、更にわずかになり、
何かを前向きに行っていこうとするものも
いなくなっている。

そもそも、大きな意見や世間体により
一応は善だ悪だと
感情的に否定はするが本当に
一過性しか関心がないため
何かを否定し壊した後は、誰も関心がないので
構築しないスクラップの状態ばかりが
世間には広がり
結局のところ技術のみは進化したが
舵取りをしようとするものが
現れないので何も状況は変わっていない

レギュラーな考えばかりが蔓延し、
イレギュラーな事態に対応できない多くの人を
多く生み出しさらに、道から外れたと揶揄され
イレギュラーに陥った人々に対して
ケアもない世間は救いもなく救われない人々による犯罪も近年続いている。

結果としてはその状況に追い込んでいる基となる
国が、一番の原因なのであろうが、それに対して
リスクを取り行動する人もなく。

我々は本来、民主主義国家であり自由であるはずが、いつのまにか統制され整えられた考えを植え付けられ主義も主張も並列化されてしまっている。



かつて、ソビエト連邦共和国が崩壊した後
人々は自由だと言い自由を喜んだ。

だが、元々、自由というものが何なのか解らない人々逆に自由にするという事に不満を持ち
また同じような独裁者を選び不自由になる事を選んだという。


暗殺されたウラデモール・フーリンが
ウクライナ進行に舵を切った
考えもここから垣間見ることが出来る。
故に世界はそのような思念の集合体ではあるので、
詰まるところ朝日が言っていた


自分の正義をただ貫くだけ
そして、助けられる奴らは助ける。


これ以外の情報はノイズであり今、
私がこのような考えに至ることは紛れもなく
" 個 "から発したオリジナリティーであり

『春秋左氏伝』の【勧善懲悪】が全てであると

再度、初瀬は自分の進むべき道を固めるに至った。


そういえば、集会の最後の方に朝日と秋水に
自分がエンジニアを勤めていたインフラ関係の会社原因不明のBUGが起こり

地下鉄の通路内に人々が閉じ込められる
トラブルが起こっているのを話した。


そして、また、それと同時に最近、
各所の炊き出しを襲撃しているのが
同じ団体
だという
情報を得たという話もした。


秋水と朝日は、その団体は知らないが、
閉じ込められている人々がいるのであれば
救出を行わないとならない

その為、3番隊を率いる、初瀬にまずは千代田区周辺の地下鉄の状況把握を行うように依頼した。


九段下、水道橋辺りはまだ空襲の被害は
少ない方であったが、
改めて神保町、小川町、お茶の水、神田などは
かなりの被害を受けていそうたが、

まずは、九段下近くの自分の会社に一度
立ち寄った。


初瀬の勤務していた会社は、
大きなオフィスビル群の中の一角にあったが、
以前であれば多くの人々が行き交う場所であったが、今は人気もなく近くの爆撃を受けた高層ビルが崩れてきそうな所もあった。

初瀬は自分の会社が入っているビルが無事そうな
事を確認すると3番隊のメンバーに
ここで少し待っていてくれと
言い残し
網膜認証を使用してビルの中に入っていった

社内やビルは人気なかったが
発電と蓄電設備を備えていたので
ロボットによるセキュリティーが、
まだ、作動していたのでビルは荒らされている
形跡もなく
いつもと同じように作動していた。


だが、オフィスにてPCを確認すると
インターネットのネットワーク
はオフラインであった。
一部の街の箇所ではWifi電波などが残っている所
もあるようなのだが探すのは現在困難な状況だ。

初瀬がここを訪れたのには、
ネット状況の確認もあったが

地下鉄の通路内に人々が閉じ込められている
情報の収集
を行えればと思ったからであった。

本来であれば、ネットワークが生きていれば社外にいても確認はできるのだが、難しいようなので
会社まで訪れた

システム関係も、ほぼ、
オンラインネットワーク化されていたが
緊急災害様に無線電信信号を使用した
旧システム
があるのでそちらを
確認しに来ていた。

株式会社 SECURE内 旧システム


初瀬は、勤務する株式会社SECURE 
旧式のシステムがある部屋へ入り
計器類を確認した。

ビービー
異常信号を確認するブザー音とランプが
鳴動、点滅
していた。

旧式のシステムは、
自動隔壁昇降設備を管理する為に
東京23区内の地下鉄の異常を検知する信号を受信していた。

オンラインで異常を検知した後、
こちらの無線電信を用いた
両方の信号を確認後、
本来であれば異常を確認した場所に
作業員を急行させる
のだが、
職場放棄により会社に誰も無く

現在はブザー音とランプが
鳴動、点滅しているだけであった。

旧式は
地下鉄の、どの駅で異常が出ているというのは
ブザー音とランプ点滅で確認はできる
が、

オンラインシステムの様に細かく、
何処駅の何番隔壁とまでは解らないので、

まずは現状を確認しなければならない。

初瀬自身は、
システムエンジニアであったので、
あまり詳しくはないが
作業員用に強制的に隔壁を昇降できる
緊急リモコンというのとトランシーバーが
5セット程社内にはあった
はずなのだが、
何故かそれは見当たらなかった。



とりあえず、この近辺では
【 神田駅 】 
【 秋葉原駅 】
アラートがなっていたので自分の隊は、
まずは、神田駅へ現状把握へ向かおうと思った。

秋葉原の方は、
ちょうど電気街で無線機を手に入れたい

思っていたので、現状を確認するため、
事前にあの姉弟に先ずは行ってもらっていたので

まあ、その後にでも向かうかと、
一通り情報を収集した後、隊員がいる
元へと向かった。


場所は変わり


秋葉原、万世橋の付近

初瀬から秋葉原周辺の現状偵察を受けた

6番隊 田結響  
7番隊 田結吹雪


の姉弟は万世橋に設けられた
バリケードを見つつ

手前の崩れた万世ビルの傍らに
隊員と屯し手をこまねいていた。



東京装甲少女 
EPISODE0  第26話へ続く、、、、、。

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現在こちらの物語の初めのストーリーから
現在のストーリーまで
【無料公開】中ですので、是非初めから
お読み頂ければ幸いです。

今後は有料化を予定しておりますので
よろしくお願いいたします。



ここから、初めのストーリーを読む



※お知らせ👼

現在こちらで小説を展開している
東京装甲少女という作品ですが、
こちらにはお話の基になるデジタルアートNFT
作品があります。

そしてその作品が
2024年4月に行われましたNYCで大規模開催された
https://www.nft.nyc/という展覧会で
展示されました🎊

皆様のご協力を頂きこの度展示して頂く事が叶いましたので
また来年も展示されるのを目指してまいりますのでご協力
よろしくお願いいたします。
ありがとうございました🙇



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