マガジンのカバー画像

トウキョウ百景

52
東京生まれ東京育ちの30代。 太と環は、それぞれの東京で生まれ育ち、二十歳の時に東京で出会いました。 2人が見てきた東京の景色、東京での物語を、紹介していきます。 ぼくらが育…
運営しているクリエイター

#音楽

新宿三丁目のカラオケに一人でこもる日々

新宿三丁目のカラオケに一人でこもる日々

ああ、今日はもうカラオケに行かないと無理だという日がある。仕事で疲れていたり、ストレスを溜めていたりするときがほとんどなのだが、じゃあ具体的に何が嫌で、何が辛いのかみたいなことを聞かれてもわからないケースが多い。とにかく、カラオケに行って歌わないとダメだと察知するのだ。

2021年〜2023年春ごろにかけて、新宿三丁目に事務所を置く会社に勤めていた。新宿二・三丁目の飲み屋の間にあるようなところで

もっとみる
目黒駅のホームから見た満天の空

目黒駅のホームから見た満天の空

中学3年生の春頃、家から自転車で通える距離にあった、全国展開している学習塾に通いはじめた。
その学習塾では、夏休みが明けて二学期が始まってしばらくすると、同じレベルの志望校を目指す生徒をさまざまな地域の校舎から集めて、特訓クラスが開催された。
特訓クラスが開かれる校舎は目黒で、隔週日曜日に僕は地元を離れて電車で通うことになった。

目黒での授業は、昼過ぎからだった。
顔馴染みのいない教室で僕は人見

もっとみる
高校生の私は阿佐ヶ谷で熱唱した

高校生の私は阿佐ヶ谷で熱唱した

たしか火曜日だったと思う。私は男子バレーボール部に所属していたが、火曜日は体育館を使うことができず、筋力トレーニングしかできない日だった。体育館が使える日より1時間早く部活が終わり、放課後に時間があった。私は高校2年の約2ヶ月だけ、この火曜日にボイストレーニングに通った。

ボイストレーニングに通った理由をはっきり思い出せないが、歌いたかったというシンプルな気持ちだったと思う。高校生になり、本格的

もっとみる
下北沢で太と出会った。だからこのエッセイが始まった

下北沢で太と出会った。だからこのエッセイが始まった

走った。大学の体育館で着替えると、先輩への挨拶もそこそこに駅へ向かった。小田急線の急行に乗り込んだ。到着するといつもの下北沢がなんだか違って見えた。

下北沢についてもなお呼吸が浅い。南口商店街をぐんぐんと進み、小さな事務所の扉の前に立っていた。そこは憧れの場所だった。

大学3年。就職活動が徐々に迫っていたが、周りに比べて私の計画は順調だった。大学へ進学する際、バレーボールに打ち込みながらマスコ

もっとみる
下北沢駅前の居酒屋チェーンで

下北沢駅前の居酒屋チェーンで

大学3年生の春、就活の影が見え隠れするようになってきた頃の話だ。
ティーンの頃から音楽が大好きで、その音楽を仕事にできたら幸せだろうなあ、と漠然と考え始めたタイミングで、当時よく読んでいた音楽雑誌が「音楽業界で働くとは?働くには?」という内容の講座を開くというお知らせをたまたま見つけた。
「ここに行けば夢が叶うかも」と少し興奮してすぐに申し込み、月に数回下北沢に通うことになった。

講座には、僕と

もっとみる