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#南無さん
連続ブログ小説「南無さん」第九話
師走、雪。静まり返った山中の境内に、ただひとつ響く音がある。
パアン、パアン、と数秒ごと、空を割るがごとき破裂音。草木を震わせ禽獣を目覚ますその音は日の出とともに始まり、鳴り続くことすでに一刻あまりが経とうとしていた。
先頃、麓の本寺での行を終えた僧が、末寺であるところの山中へ務めに参り上がろうとしたところ、やはりこの音に気がついた。
はて、一度は杣人の何ぞ生業と思ったけれども、木こ
連続ブログ小説「南無さん」第七話
時は平成、世は太平。
アスファルトは熱射を照り返し、南国もかくやとばかりに往来人の肌を焼く。
さながら地獄の様相で沸き立つ陽炎の奥、ビルの影から一糸とまとわぬその身をゆらりぬるりと現したるは、南無さんである。夏なので時流に合わせ、クールビズだ。
さて、かような日照りに半袖を選ぶ人間が多い中、なんの故にか暑苦しく胸元を締め、そのうえ上着まで羽織った黒装束の若者の姿を、さきほどから南無さんは目に