#女性の生き方
ひとりぼっちになった夜、先ゆくマダムたちの物語に触れて。
きのう、出産後初めて息子が隣にいない夜を過ごした。正確にいうと、産後調理院から自宅に戻って以来3年数か月ぶりに、私は一人きりで夜を明かすことになった。
相方が急なおもいつきで荷物をまとめ、息子を連れて家を出たのは土曜の15時頃だった。車で2時間以上かかる義両親の家まで行き、1泊してくるのだという。表向きは息子の看病続きで疲れ果て、体調が良くない私を休ませるため。でも本当は、相方が家の中でずっ
チョ•ナムジュ著『彼女の名前は』
先日、韓国の短編小説集『彼女の名前は』を読み終えた。『82年生まれ、キム・ジヨン』の著者、チョ・ナムジュが韓国で2018年に発表した作品で、2020年に日本でも翻訳出版されている。
9〜69歳まで60人余りの女性に話を聞いた著者が、2017年の1年間、新聞や雑誌にフィクションやエッセイを連載。それを再構成し、28編の小説集としてまとめた1冊だ。1つひとつの話はとても短く、読みやすい。でも、そ
『82年生まれ、キム・ジヨン』を語る② 私と夫に生まれた変化
小説の絶望感を経て、映画で描いた希望 物語の中で、キム・ジヨンは子どもを保育園に預け、再就職を目指すものの、「他人の人格が憑依して思いを語りだす」という言動が増え始め、夫の勧めで精神科を訪れる。小説は男性精神科医のカウンセリングカルテを読むような形で、淡々と物語が進んでいき、丁寧な心理描写や感情的な表現というものがほぼない。
それはこの夏、4世代にわたる在日コリアン一家の人生を描いたミン・ジ
『82年生まれ、キム・ジヨン』を語る① 義母と私と母の物語
50年生まれの義母 数か月前、ソウルから車で2時間ほど離れた田舎町にある夫の実家を訪ねた時、義母がこんな話を始めたことがあった。その時私は台所に立ち、義母と一緒に昼食用のチャプチェ(韓国春雨と肉や野菜を甘辛く炒めたもの)を作っていた。
「結婚して国民学校(小学校)の教師を辞めた時、お父さんがソウルで会社に勤めていたんだけど、息子が生まれて1年経った頃、突然、実家に帰って酪農をしようと言いだして
『魔女の宅急便』のキキが双子の母になっていた
子育てをしていると、すっかり忘れていたはずの子どもの頃の気持ちが、ふと蘇ってくることがある。
例えば、木からポトンとドングリが落ちてきた時。そのドングリを1つずつ集めている時。落ちている枝を拾い、砂に絵を描く時。ナツメを収穫し、籠にポイっと放り投げる時。
そうやって夢中になっている息子の背中に、幼い頃の自分を重ねながら、一緒になってワクワクしていると、ハッとする瞬間があるのだ。私は今日ま