347.そう、人生って、あなたが思うほど、悪いものじゃあないんだね。
coucouさんが毎朝、同じ時間に走る通りがある。
それは5キロぐらい続く桜並木のある河川敷なんだ。
１月、２月の小さな緑の葉に３月～4月にかけて見事な桜が開花して、瞬間に桜通りになる。今年も見事に満開し、数多くの人たちを和ませた。
そして、ひらひらと散り始めると、また可愛らしい青葉に戻る葉桜となり、それでも数多くの人たちを楽しませる。
やがて、５月、6月となり梅雨が訪れ、季節の変わり目の雨や風、嵐のような突風も起こり始める。
この桜通りは1年間を通して何かしら訴えかけているようにも思える。
今朝は、どしゃ降りと強風のダブルパンチ。
coucouさんはいつも通りにこの通りを車で走る。
そして、いつもと同じ高校のある交差点で止まる。
そこには、毎朝歩道を渡る子どもたちの誘導をする先生らしき人がいる。
彼は、生徒たちに必ず大きな声で「おはよ～」と声掛けする。
下を向いて返事もしない子もいれば、
笑顔で「おはようございます～」と返答する生徒たちもいる。
走ったり、自転車で急ぐ生徒には両手を広げて歩道の前で注意を促す。
この先生らしき人は、別に生徒さんだけでなく見知らぬ通行人や、信号待ちしているcoucouさんや、それ以外の運転をする人たちにも、「おはようございます～」と大きな声を出して挨拶してくれる。
こうして、名も知らぬcoucouさんに挨拶を続けるこの先生らしき人とは、話をしたこともないのだけれど、何か親しみを覚え、友だちのような錯覚を起こすほどの長い瞬間の付き合いとなった。(３年くらい)
雨の日も、風の日も、雪の日も、夏の日も、
他の人と交代もせず、いつも同じ場所にいる。
もし、彼がそこにいない朝があったら、
心配してしまうかもしれないcoucouさんだ。
雨季が訪れる前だというのに毎日、どしゃ降り。
晴れている方が少ないよね。
今日も、どしゃ降りの朝。
道路は大渋滞。
みんなのイライラ感を感じる。
coucouさんもようやくいつもの交差点に着いた。
彼は、相変わらず大きな声を張り上げて横断歩道を誘導していた。
今朝は、風が強い、強風となった。
coucouさんの車内からの風景は、学生さんたちが苦労して学校に向かう姿だけが見える。合羽を着た自転車通学の生徒たち。傘を被り、風に振り回されている生徒たち。
そんなとき、彼の目の前でずぶ濡れの女生徒さんがいた…。
傘が風で壊れたままカバンを抱きかかえていた。
彼は、すかさず自分の傘をその生徒さんに渡し、しゃがみこんで修理をする。女生徒は寒さに震えながら、彼に少しでも雨が当たらないように傘を向ける。
coucouさんの車も動けない…。
雨が降ると車の通勤が増えるのだろう。
イライラしてクラクションを鳴らす者までいる。
彼は頭から洋服まで全身ずぶ濡れのまま作業を続けていた。
わずかな時間だったのかも、長かったのかもわからない不思議な時間。
不思議な交差点。
彼は濡れた眼鏡を曇らせながら、
微笑んでその女生徒に傘を応急処置をして手渡した。
女生徒は深く深く頭を下げる…。
もしかすると、泣いているのか、雨なのかは定かではない。
でも、彼も女生徒も笑顔が満ち溢れていた…。
彼はその女生徒が正門をくぐり、校舎に入るまで見続けていた…。
coucouさんは、温かな車内からその画面を見続けていた…。
なんだ～
世の中には、まだこんな素敵な先生がいるんだね。
まだまだ、世の中、捨てたもんじゃあない。
そう、人生って、あなたが思うほど、悪いものじゃあないんだね。
coucouさんです。
みなさん、ごきげんよう！
coucouさんの毎朝の楽しみはね、
この先生の顔をみること。
この交差点は狭い道路の上、左右に曲がる車が多い。
coucouさんは直進する。
前はこの交差点が嫌いだったけれど、
今は、逆に心を落ち着かせて、
日々の車内からの風景を楽しむようにしている。
彼とは、毎朝の交差点でしか顔を合わすことができないけど、
どうしてか、彼はcoucouさんに笑顔で会釈する。
もちろん、coucouさんだけではない。
他の車の人たちや、通行人の人たちにも笑顔で会釈する。
たかが、こんなことでも人は温かみをもらい、
幸せをもらうことができるんだね。
だ～れも知らない。
だ～れにもわからない。
そんな人たちによって、
世の中が動いているのは事実なんだね。
coucouさんはその先生の名前は知らない。
毎朝、７時50分にcoucouさんは交差点を通過する。
東京都立冨士森高等学校の生徒さん。
素敵な、素晴らしい先生がいるんだね～
さいこう～
ここまで、おつきあい、
みなさま、ありがとうございます！
また、あしたね～
さいこう～
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