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卒業制作『恋愛感情の翻訳』 /「“古の歌人”による翻訳」

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私は大学の卒業制作で、“恋愛感情”をテーマに、4冊の冊子を制作した。

その4冊の中で、3冊目となる『“古の歌人”による翻訳』という冊子の内容について、紹介していきたい。


『“古の歌人”による翻訳』について

(「はじめに」の項目から引用)

▲「“古の歌人”による翻訳」展示風景
▲表紙
▲見開き
▲表紙デザイン


この冊子は、「昔の和歌」の観点から、“恋愛感情”について考察していったものである。
『百人一首』『万葉集』に編纂された和歌から、合計100首を取り上げ、それらを分類・分析し、「“古の歌人”による翻訳」というタイトルで冊子を制作していった。

今回は、
『百人一首』に編纂された和歌のうち、“恋の歌”と呼ばれるもの43首
『万葉集』に編纂された和歌のうち、“相聞歌”と呼ばれるものの中から、抜粋した57首
 の、合計100首を取り上げていった。

この冊子を制作することで、現代と比較した時の“昔の恋愛”の特徴を探っていった。
時代を超えても変わらないものや、反対に、変わってしまったもの。
「楽曲の歌詞」などと対比することで、昔と今の
恋愛スタイル”
“表現方法”について比較できるのではないか、と考えた。

本冊子を制作するにおいて、基本的には、インターネット上での情報を参照していった。
また、オンラインホワイトボードツール「Miro」などを使用し、書き出した和歌を分類・分析していった。



この冊子における構成について、紹介していこうと思う。

まずは、和歌の分類についてだ。

本冊子では、恋の始まりから終わりを一連の流れとして表すべく、「恋心・愛」「恋の辛さ」「失恋」の3つの章を設け、「恋心」から「思い出す」まで、グラデーションとなるように並べていった。

項目ごとの見出しとなるページについては、各項目に含まれる内容をそれぞれ抽出し、スペーシングなどを調整しながら制作していった。
また、文字の色については、私自身の主観で、項目ごとに合わせた色を選択していった。

今回は、私自身、元々興味のあった『百人一首』などの和歌について、改めて調査・分析をしていくことができ、とても貴重な経験となった。
和歌の分類についての解釈は完全に個人の主観なので、間違った解釈をしてしまっている可能性もあるが、どうか暖かい目で見守っていただきたい。


● 『百人一首』と平安時代の恋愛について

『百人一首』とは、飛鳥時代から鎌倉時代初期までの代表的な歌人100人の和歌を、1人1首ずつ集めて作られた秀歌撰である。
歌人である藤原定家によってに編纂された。

百人一首の分類としては、「恋の歌」43首「四季の歌」32首「雑の歌」20首「羇旅の歌」4首「離別の歌」1首 というように分けられる。
(今回は、この「恋の歌」43首を取り上げていった。)


『百人一首』に編纂された歌の中でも、代表的な時代である「平安時代」の恋愛について、説明していきたい。

まず、平安時代の女性は基本的に他人に顔を見せることがなく、御簾越しでしか顔を合わせることができなかった。
出会いはほとんどが周りの噂によるものである。「〇〇家の娘は美しい」など、召使いや使者が殿方の耳に入れ、男性は気になる女性について調べ上げ、そこから恋文のやりとりを経て、初めてご対面となっていた。
男性が仲介人を通して女性にラブレター(和歌)を送り、女性から返事があれば、男性が女性の部屋に行く。女性と男性は3日間同じ部屋で過ごし、その間にどちらからも不満が出なければ結婚が成立する。

また、平安時代は初対面で一夜を共にすることがほとんどであった。
和歌で使われる「逢う」という言葉は、単に会うだけではなく、「男女が一夜を共にする」ということを表している。

結婚の形態に関しては、一夫多妻制(正妻は1人のみ)をとっていた。
また、ほとんどが夫が妻の家に行く通い婚だった。家柄や知性の高い正妻は夫と同じ屋敷に住むことができたが、それ以外の妻は実家から出ることがなかったので、このような形態になった。
女性からの離婚の申し入れはできず、離婚の際は法に則った判断が必要であった。


●『万葉集』と奈良時代の恋愛について

『万葉集』とは、日本で現在残っている「最古の和歌集」である。
奈良時代の後半に成立したことは分かっているが、具体的な歴史や編纂の過程はわかっていない。飛鳥時代の舒明天皇の次代(629年頃〜)から759年頃までの歌が収録されている。成立は少なくとも759年以降であると考えられる。

『万葉集』には、天皇や貴族だけではなく、下級の役人や九州の防人など、様々な階層の人々による和歌が収録されている。
短歌と、その他・長歌・旋頭歌を含む3種類の歌が収録されている。

歌体は、「短歌」(5・7・5・7・7)、「長歌」(5・7を長く繰り返し、最後を5・7・7で結ぶ)、「旋頭歌」(5・7・7・5・7・7の形式)などである。
内容に基づく分類としては、「相聞歌」(男女間の恋愛についての歌)、「挽歌」(亡くなった人を悼む歌)、「雑歌」(その他の歌)に分けられる。
(今回は、この「相聞歌」の中から58首を取り上げていった。)

相聞歌とは、主に親しい人(家族、兄弟、恋人など)の出会いや会話のやりとりの歌だが、万葉集のほとんどが男女の交情となっているため、「相聞歌=恋の歌」といった認識が強い。
相聞歌は細かく分けて、正述心緒(感情のままに述べる歌)、寄物陳思(物に思いを寄せた歌)、譬喩歌(心情を表に出さず隠喩を使った表現の歌)の3つに分かれる。

『万葉集』が編纂された、「奈良時代」の恋愛について、説明していきたい。
奈良時代の結婚は、「妻問い婚」であったと言われる。夜ごと男性が女性のもとに訪れ、夫婦が一緒に暮らすことはない。子どもは妻の家で育てられ、父親は子育てには関わらない。
また、奈良時代には、「歌垣」と呼ばれる男女の集まりがあった。 お祭りなどの信仰の場において、男女が即興でつくった和歌を詠み合い、歌を掛け合いながら求愛するというイベントである。


冊子の内容

(「目次」の項目より引用)

第一章 恋心、愛
〜恋心〜
 恋しい
 愛おしい
 恋心を隠しきれない
 恋心を隠す

〜幸せ〜
 幸せ

〜誓い〜
 自分の想いを誓う
 忘れない
 あなたを信じる
 運命を信じる

〜逢いたい〜
 逢いたい
 逢えない
 待つ
 逢えない時間が長い
 夢に出てくる
 〇〇になりたい
 〇〇になってほしい
 同じ景色を見たい
 〇〇してほしい

第二章 恋の辛さ
〜不安〜
 恋の行方がわからない
 あなたの本心がわからない

〜苦しさ〜
 苦しむ
 一方通行の想い
 痩せてしまう
 涙が出る
 〇〇になりたい
 死んでしまいたい
 いっそのこと

〜あなたのせいで〜
 取り残される
 振り回される
 振り回されないように
 恨む

〜周りの人への恨み〜
 あの人の話をしないでほしい

第三章 失恋
〜失恋した上に、〜
 同情してくれる人もいない
 自分の評判も落ちてしまう

〜決意〜
 諦める決意

〜思い出す〜
 思い出してしまう


今回は、4冊中の1冊である『“古の歌人”による翻訳』についての大まかな説明をしていった。

次回以降は、この冊子の具体的な内容について、項目ごとに述べていこうと思う。

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