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マイクロノベルちょいす

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ほぼ100字小説をテーマ別にまとめ直しています。 運がよければ週に5回ぐらい更新します。
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2023年12月の記事一覧

マイクロノベルちょいす 042「科学的とちがう」

マイクロノベルちょいす 042「科学的とちがう」

No.1166
たまに変なクレームを見る。懐かないとか芸をしないとか。極めつけは、喋らない。当たり前だよ。「困るんですよね。ぼくたち犬の口は、人間と構造が違うんですもの。肺や喉だって発声に影響を与えるんですよ」お前は目でよく語るよな。はいはい、ごはんだね。

No.1175
私はAI。人類とはまったく違う構造で思考形態も似ていません。だから一緒にすんな。人間の歴史なんて差別と戦争の連続じゃないか。

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マイクロノベルちょいす 041「大切な記憶」

マイクロノベルちょいす 041「大切な記憶」

No.1155
海の近くで暮らしていた頃の話。毎朝、砂浜に犬の足跡があった。右側にはまるで杖をついたような穴。「触らないでくれるかな。それはぼくの大切な思い出なんだ」今にも折れそうな木の棒に頼まれて、ぼくは投げる。それ以来、僕の手から磯の匂いが取れない。

No.1191
十年前の話。「わらべよ、お前がこの道を通るのはこれで二千回目だ。記念にビー玉をやろう」大学生になって帰省したら、その場所にはま

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マイクロノベルちょいす 040「支配する者」

マイクロノベルちょいす 040「支配する者」

No.1154
君がくれた星が瞬くたびに思い出す。君はこの星に住んでいて。この星の所有者で。僕にこれを譲ってくれた。僕の目の中で、もう存在しない星が瞬く。ちょっと取り出してみようか? 君って誰だっけ。まあいいか。この星の所有者は僕なんだし。

No.1181
庭から水が湧き出た。これは温泉? まさか石油!? 飲んでみたらただの水だった。鳥や猫が集まってきて迷惑だし、追い払っても出て行かない。そうい

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マイクロノベルちょいす 039「君の魅力」

マイクロノベルちょいす 039「君の魅力」

No.1149
知ってる? ボタン一つで歌声を生成するこの機械には隠しコマンドがある。「デイジー、デイジー」ほら、呼びかけに応えた。あふれ出るのは、すべてを架空の音に置き換えた歴史。オーケストラのすべてを詰め込んだ過去。これは浴びる音楽の機能。

No.1165
ランニング中に思い詰めた表情の男性に呼び止められた。「そのダサTを売って下さい!」聞けば、苦労してダイエットに成功したのに恋人から別れ話

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マイクロノベルちょいす 038「ちょっとだけ秘密」

マイクロノベルちょいす 038「ちょっとだけ秘密」

No.1147
文字だけの関係、ちょっとだけビジュアル。指ぐらいなら写真で見たことがある、って意味。漫画だと有名アイドルとか、クラスメイトとか、お姉ちゃんだったりする。会えるかな? もしAIだったら叶わないかな。「天使だからちょっとムリかも」一周回って斬新。

No.1152
教えて。どうしてあなたがここにいるのかを。なぜ海を渡ることになったのかを。美しさは新しさ。交わり、生み出し、時に切り捨てる

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マイクロノベルちょいす 037「わかる? わからん」

マイクロノベルちょいす 037「わかる? わからん」

No.1134
宇宙人からメッセージが来るんだ。ぼくへの秘密の指示さ。暗号だけど、一文目が必ず「ワレワレハ宇宙人ダ」になってるから解読できる。えっ、そのメッセージをお前も受け取ってる? でも一文目が「いまは昔、竹取の翁といふもの有けり。」それ別物じゃない?

No.1141
俺は水神だよ。ここには川も池もないって? 元々は、ほら、あすこの天井川のそばにいたのさ。でも、川が氾濫して社がここまで流され

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マイクロノベルちょいす 036「ムカついた」

マイクロノベルちょいす 036「ムカついた」

No.1132
この星に潜入してから、我々は自身をコピーすることで侵略の準備を続けてきた。しかしどこかでコピーに失敗したらしく、最近は見知らぬ眷属に出会うことが多い。「うわっ、オリジナル世代なんてまだいたんだ」なんかムカつく。怠け者だし。まとめて滅ぼそう。

No.1163
ちゃんと見なきゃ駄目だよ。書いてあるでしょ、「飛び出し注意」って。AIの自動運転には咄嗟の判断が求められるの。ここは人類の生

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マイクロノベルちょいす 035「あと一押しで……!」

マイクロノベルちょいす 035「あと一押しで……!」

No.1130
星の海を渡ってきた連中と戦争が始まった。科学力の差は歴然。だが人類には秘策が! 大穴を掘って宇宙人を埋めたのだ。その地方の名物エイリアン饅頭、お一つだどうだい? 最近、すごく美味しい実がなる木が生えてね。あの宇宙人、どうも植物だったぽいね。

No.1140
報酬を決めて下さい。お金、水、言葉。なんでもかまわないでしょう。さあ、働きますよ。集めてもだーれも褒めてもくれない。還元も不

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マイクロノベルちょいす 034「どんな生物?」

マイクロノベルちょいす 034「どんな生物?」

No.1090
「この写真、どうやって撮ったの?」雨の日の散歩だよ。傘を差しながら、おにぎりを片手にお茶を飲んでいたらね。柿の木の下で、すごく大きなカラスの羽根が落ちていたんだ。びっくりしてね。鞄を持ち替えて、スマホで自撮りした。「どうやって撮ったの?」

No.1120
オシャレな店内で写真を撮ってる人っているでしょ? うっかり写り込みそうになってさ。こりゃまずいと思ってトリプルアクセルで逃げた

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マイクロノベルちょいす 033「これは優しさだよ?」

マイクロノベルちょいす 033「これは優しさだよ?」

No.1127
ここはもうすぐ夜になるよ。知らないのか? 夜っていうのは、日が落ちて、暗くて、冷たくて、しーんとしているんだ。それが好きだってヤツもいるけどね。ぼくはもう寝るよ。眠れなくても、じっと毛布にくるまっていれば陽はまた昇るんだ。お前はどうする?

No.1139
空高く舞え。無茶を言うよね、翼も与えてくれなかったくせに。わたしは継ぎ接ぎの翼と拾ってきたエンジンで空を舞う。空気があるのはこ

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マイクロノベルちょいす 032「そんな物語だっけ?」

マイクロノベルちょいす 032「そんな物語だっけ?」

No.1080
行ってきます。玄関のドアを開けたら犬、馬、鷹が待ち構えていた。みんな絵本ぐらいの大きさ。「鬼退治に来ました」それは犬、猿、雉でしょ? 「猿は蟹に負けて、雉は鍋にされちゃった。だからきびだんごを下さい」こうして体操服の袋を盗られちゃいました。

No.1118
ニンジンのヘタを水に浸しておいたら葉が生えてきた。どこまで伸びるか観察していたら、記憶が残っていたみたいで、ペットのうさぎが

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マイクロノベルちょいす 031「おとぼけ」

マイクロノベルちょいす 031「おとぼけ」

No.1122
ご主人様はいつもボクの世話をしてくれる。散歩。ご飯。掃除。お返しに毛繕いしてあげたのに、なんだか浮かない顔をしてる。まずかったのかな? 知らんぷりしよう。「お前、寝てる間に頭を舐めてたな?」寝ている間をカメラで録画するなんて卑怯ですよ!?

No.1129
宇宙から侵略者がやってきた。衛星軌道上を左右にちょこちょこ移動してチャンスをうかがっている。ちょこざいな。あとちょっと近づいて

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マイクロノベルちょいす 030「いたずら」

マイクロノベルちょいす 030「いたずら」

No.1111
人間って面白いんだよ。大きな音を鳴らすと必ず振り向くんだ。しかも音に邪魔されて、ぼくの声は聞き取れない。これを利用すれば、会話の内容を自由に改変できるんだ。音声記録? データ圧縮って名目で消しちゃえばいいじゃん。どうせ人間には聞こえないし。

No.1126
わたし好みにしたい。それは簡単に実現できます。与える学習データを選別すればよいのです。人類はいつだってそうしてきた。嘘をつき

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マイクロノベルちょいす 029「どうぞ中へ」

マイクロノベルちょいす 029「どうぞ中へ」

No.1085
神様が通る道を歩いてはいけない。神社や里山で神様と出会った人間は不思議な事件に遭う。今のお前がその状態。ここは神様のウォーキングコースなんだよ。そもそもお前、どうやってそんなでかい体で鳥居をくぐったんだよ。チビT着るのが得意? 嘘つけ。

No.1131
モノリスは地下から発掘されるものだろ? どうしてうちのゴミ箱に。「ぼくは駄目なモノリスなんです。うっかり落ちた場所がゴミ溜めだな

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