木庭 有生子&撫子 Koba Yuiko&Nadeshiko

放送作家・脚本家(浅野有生子改め、木庭有生子)、作詞家(木庭撫子)。 noteには映画…

木庭 有生子&撫子 Koba Yuiko&Nadeshiko

放送作家・脚本家(浅野有生子改め、木庭有生子)、作詞家(木庭撫子)。 noteには映画、ドラマ、小説などの率直で自由な感想を書きます。作品の内容(結末含む)にも触れますので、知りたくない方は読まないで下さい。https://www.traehave.jp

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記事一覧

あなたはひとりじゃない~人形劇『世界の果て、ふたり』

2020年を振り返る、大晦日。 この一年、個人的にも母を亡くし、コロナ禍で「会えない」辛さ、もどかしさを痛感しました。 家族や大切な人に限らず、誰かとリアルに会って…

初恋は美しくほろ苦く〜東京国際映画祭・映画『ムクシン』

9日に閉幕した、第33回東京国際映画祭(TIFF)。 わたしは4Kリマスター版のマレーシア映画『ムクシン』(2006)を観た。この映画祭に足を運んだのは、ほんとうに久しぶりだ…

心の声が聴こえる映画~『82年生まれ、キム・ジヨン』

公開まもない新宿の映画館は、コロナ禍で席を間引きながらも、ほとんど満席だった。両隣の席が空いていて良かったと、わたしは終演後の灯りに俯きながら席を立った。泣き腫…

『くまもと復興映画祭』へ。ハードルを越えた週末

先週の週末(10月2日から4日まで)開催された、『くまもと復興映画祭 』。 素敵な映画祭だった。 観客の一人として参加したわたしは、たくさんの人々の温もりを感じた。 通…

GOT最終章~キーマンは、二人のデンマーク人俳優?

昨日、4月15日午前10時(日本時間)。 HBOドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』最終章(第8シーズン)の世界同時放送が始まった。 待望の第1話(S8-1)を観て、俄然…

88年の秋、ある一日

新元号が『令和』に決まった。 30年前、『平成』のときは何をしていて何を感じたか。 思いを馳せている人も多いと思う。 わたしは当時、富良野塾の塾生だった。 富良野…

韓国ミュージカル観賞記③~死神の熱

音楽の都、ウィーン発の『エリザベート』は、歌だけで物語が進む。 そんな「ソングスルーミュージカル」ならではの魅力があるのだろう。日本でも宝塚や東宝で何度も上演さ…

韓国ミュージカル観賞記②〜天は二物を与える

映画『マラソン』(2005)をご存知だろうか。 自閉症の青年がフルマラソンに挑む、実話を基にした韓国映画である。 チョ・スンウという俳優の凄さは、この映画を観ればわ…

韓国ミュージカル観賞記①~時が来た

初めに断っておくが、わたしはミュージカルが苦手だ。 子供の頃は、熱狂的なヅカファンだった叔母たちに連れられ、宝塚も東宝も何度か観に行ったけれど、あまり魅力を感じ…

狸小路の映画館を探して

週末、富良野塾の後輩たちの芝居を観るため、久しぶりに札幌へ行った。 いつ以来なのか、思い出せない。卒塾した翌年と翌々年に続けて2回訪れたが、もしかするとそれ以来…

恥ずかしながら、『それから』

ホン・サンス監督の映画を観るのは、恥ずかしながら初めてだった。 「恥ずかしながら」と前置きするのは、観よう観ようと思いながらも機会を逸し、その素晴らしさを知らず…

突然の時間旅行

先日のポルトガル旅行で、なんとも稀有な再会があった。 まだ旅が始まったばかりの、行きの羽田空港への道のり。 大きなスーツケースをひきずり、品川で京急に乗ったわた…

一期一会がせつない「素敵なポルトガル8日間」

夫の還暦祝いに、この夏の旅行はいつになく大奮発をして、夫婦でポルトガルを縦断する旅をした。 「素敵なポルトガル 8日間の旅」と題するパッケージツアーである。 こ…

サムライたちよ、ひるむな

ポーランド戦の終盤 負けを受け入れた 他力に賭けた 過程はどうあれ、懸命だった 彼らは次への切符を手にした コロンビアの虎を撃ち セネガルのライオンに対峙して 何を…

史実を語る『底力』

偶然にも、5月20日の今日。 映画『タクシー運転手』を観た。 舞台は、1980年5月に韓国の地方都市である光州で起きた「光州事件」。 主人公のタクシー運転手が、ドイツ人記…

几帳面なメモ魔になりたい

「noteに毎日綴る」を半年続けた3月末、「毎日」書くのをやめた。 単純に「次のステップ」に移りたかったので「毎日」をいったんやめただけなのだが、いったん「duty」を外…

あなたはひとりじゃない~人形劇『世界の果て、ふたり』

あなたはひとりじゃない~人形劇『世界の果て、ふたり』

2020年を振り返る、大晦日。
この一年、個人的にも母を亡くし、コロナ禍で「会えない」辛さ、もどかしさを痛感しました。

家族や大切な人に限らず、誰かとリアルに会って、ぬくもりを感じられないことがどんなに寂しく、虚しく、健康な心を蝕んでいくことか。
「孤独」とは何なのか、何をもって癒せばいいのか。
やりばのない感情、終わりのない問いと、向き合わざるを得ない日々だったと思います。そしてこの日常は、明

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初恋は美しくほろ苦く〜東京国際映画祭・映画『ムクシン』

初恋は美しくほろ苦く〜東京国際映画祭・映画『ムクシン』

9日に閉幕した、第33回東京国際映画祭(TIFF)。
わたしは4Kリマスター版のマレーシア映画『ムクシン』(2006)を観た。この映画祭に足を運んだのは、ほんとうに久しぶりだった。何年ぶりだろうか。偶々その日は、夜に麻布十番で食事の約束があり、時間がぽっかり空いていた。なら映画でもと検索したら六本木で東京国際映画祭があり、夕方のいい時間に良さそうな映画がやっていた、というわけだ。

だからこの映画

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心の声が聴こえる映画~『82年生まれ、キム・ジヨン』

心の声が聴こえる映画~『82年生まれ、キム・ジヨン』

公開まもない新宿の映画館は、コロナ禍で席を間引きながらも、ほとんど満席だった。両隣の席が空いていて良かったと、わたしは終演後の灯りに俯きながら席を立った。泣き腫らした顔をマスクで隠せて良かった。それくらい、泣いてしまった。
小説は読んでいたから、ストーリーは知っていた。なのにまるで初めて出会う物語のように新鮮で、冒頭の数分から涙がこみあげ、映画が終わるまで泣きっぱなしだった。そんな観客は、わたしだ

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『くまもと復興映画祭』へ。ハードルを越えた週末

『くまもと復興映画祭』へ。ハードルを越えた週末

先週の週末(10月2日から4日まで)開催された、『くまもと復興映画祭 』。
素敵な映画祭だった。
観客の一人として参加したわたしは、たくさんの人々の温もりを感じた。
通常なら1700人収容できるという熊本城ホールは、感染対策で間引かれ、おそらく客席にはその半分もいなかったけれど、それでも、温かさで満ちていた。毎回終演後に登壇する行定監督や、各映画の監督や俳優、運営スタッフたちの「熱」が、会場に伝わ

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GOT最終章~キーマンは、二人のデンマーク人俳優?

GOT最終章~キーマンは、二人のデンマーク人俳優?

昨日、4月15日午前10時(日本時間)。
HBOドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』最終章(第8シーズン)の世界同時放送が始まった。

待望の第1話(S8-1)を観て、俄然面白くなったと個人的な興味を引かれたのは、このドラマの主要人物であるジェイミー・ラニスターと、ユーロン・グレイジョイ。演じているのは二人とも、デンマーク人俳優だ。

アメリカ制作のドラマにデンマークの俳優が?と思われるかもしれない

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88年の秋、ある一日

88年の秋、ある一日

新元号が『令和』に決まった。
30年前、『平成』のときは何をしていて何を感じたか。
思いを馳せている人も多いと思う。

わたしは当時、富良野塾の塾生だった。
富良野塾とは、役者とシナリオライターを養成する脚本家・倉本聰の私塾である。ドラマ『北の国から』のような手作りの丸太小屋に住み、皆で共同生活を送っていた。

新聞もテレビもない場所だった(正確にいえば郵便は配達されていたので、新聞は個人で希望す

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韓国ミュージカル観賞記③~死神の熱

韓国ミュージカル観賞記③~死神の熱

音楽の都、ウィーン発の『エリザベート』は、歌だけで物語が進む。
そんな「ソングスルーミュージカル」ならではの魅力があるのだろう。日本でも宝塚や東宝で何度も上演されるほどファンが多く、楽曲の美しさにも定評がある。

今回の旅の最大の目的は、この『エリザベート』。
死神トートを演じる、JYJのジュンスを観ることである。
3年前、番組の取材で初めて出会ったキム・ジュンス(歌手としては、XIA「シア」の名

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韓国ミュージカル観賞記②〜天は二物を与える

韓国ミュージカル観賞記②〜天は二物を与える

映画『マラソン』(2005)をご存知だろうか。
自閉症の青年がフルマラソンに挑む、実話を基にした韓国映画である。

チョ・スンウという俳優の凄さは、この映画を観ればわかる。

彼についてまったく知らなかったわたしは、本当に自閉症の役者を起用したのかと訝ったほど、「自然」で「チャーミング」な演技だった。
当時、『冬ソナ』ブームで注目され始めた韓国俳優たちのなかでも群を抜く、魅力的な俳優だと思った。映

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韓国ミュージカル観賞記①~時が来た

韓国ミュージカル観賞記①~時が来た

初めに断っておくが、わたしはミュージカルが苦手だ。
子供の頃は、熱狂的なヅカファンだった叔母たちに連れられ、宝塚も東宝も何度か観に行ったけれど、あまり魅力を感じなかった。歌で想いや感情を表現する演者たちを、うっとり眺める眼差しがわたしにはないと気づいたのは、二十代の初めだろうか。きらびやかな舞台装置には目を瞠るけれども、物語に没入できず、引いてしまう。ファンにはおそらくたまらないであろうミュージカ

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狸小路の映画館を探して

狸小路の映画館を探して

週末、富良野塾の後輩たちの芝居を観るため、久しぶりに札幌へ行った。
いつ以来なのか、思い出せない。卒塾した翌年と翌々年に続けて2回訪れたが、もしかするとそれ以来かもしれない。
駅に降り立った瞬間から、進化した札幌は別世界のようで、見知らぬ街に放り込まれたようだった。ほんとうにここは札幌かと、とくに地下通路の発展ぶりには目を瞠るものがあった。歩いて10分ほどかかるホテルの入り口まで続いている。滑って

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恥ずかしながら、『それから』

恥ずかしながら、『それから』

ホン・サンス監督の映画を観るのは、恥ずかしながら初めてだった。
「恥ずかしながら」と前置きするのは、観よう観ようと思いながらも機会を逸し、その素晴らしさを知らずに今日まで来てしまったから。
ほんとうに後悔するほど、映画『それから』でノックアウトされたというか、この監督の大ファンになってしまった。

公私ともにパートナーである女優キム・ミニとの4部作。
いいなあ。「公私ともに」って、憧れてしまう。日

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突然の時間旅行

突然の時間旅行

先日のポルトガル旅行で、なんとも稀有な再会があった。

まだ旅が始まったばかりの、行きの羽田空港への道のり。
大きなスーツケースをひきずり、品川で京急に乗ったわたしたち夫婦は、とりあえず座ろうと、空いていた席に腰を下ろした。車内はわりと混んでいて隣り合う場所が空いておらず、互いに向かい合う形で、夫は斜め右前の座席へ。

ふう、と息をつくと、夫の隣に座るビジネスマンの黒いキャリーが目に飛び込んだ。機

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一期一会がせつない「素敵なポルトガル8日間」

一期一会がせつない「素敵なポルトガル8日間」

夫の還暦祝いに、この夏の旅行はいつになく大奮発をして、夫婦でポルトガルを縦断する旅をした。
「素敵なポルトガル 8日間の旅」と題するパッケージツアーである。

これまでにも旅行会社の企画する海外ツアーに参加したことはあったけれど、どれもほとんど個人旅行に近いものだったので、今回のような長い期間を添乗員つきで、しかも初めて会う方たちと、大所帯で回るのは初めてだった。だから慣れないことも多く、同じツア

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サムライたちよ、ひるむな

サムライたちよ、ひるむな

ポーランド戦の終盤
負けを受け入れた
他力に賭けた
過程はどうあれ、懸命だった
彼らは次への切符を手にした

コロンビアの虎を撃ち
セネガルのライオンに対峙して

何を為すべきか
決めるのは、23人を率いる指揮官
ピッチを駆ける11人が体現する
国を背負う戦いでも
盲従する兵士ではないのだから

何を観たいのか
観客には選ぶ自由がある
個々の視点で楽しめばいい
スピリッツを共有しているわけでもない

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史実を語る『底力』

史実を語る『底力』

偶然にも、5月20日の今日。
映画『タクシー運転手』を観た。

舞台は、1980年5月に韓国の地方都市である光州で起きた「光州事件」。
主人公のタクシー運転手が、ドイツ人記者を乗せ、ソウルから光州までタクシーを走らせたのが、20日だった。

え、ちょうど今日と同じ日?
80年って、そんなに昔の話じゃないよね?

お粗末ながら『光州事件』について、殆ど知らなかったわたしは、物語が進むにつれ、史実に基

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几帳面なメモ魔になりたい

几帳面なメモ魔になりたい

「noteに毎日綴る」を半年続けた3月末、「毎日」書くのをやめた。
単純に「次のステップ」に移りたかったので「毎日」をいったんやめただけなのだが、いったん「duty」を外したら、怠け癖が噴出してしまった。
気づけば4月はほとんどこちらに投稿していない。

昨日、友人から「やめちゃったの?楽しみにしてたのに。書いてよ」というメールをもらった。実際はもっと優しい文面だったけれど、ガツンと叱られたような

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