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ひとり手帖

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日々の思考の断片です。
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#備忘録

熱を出したときのゆめ

熱を出したときのゆめ

こうして寝込んでいるあいだに、自分の居場所が、どこにもなくなったらどうしよう。

熱を出すたび不安になる。20歳を折り返した今でも。子どもみたいに思う。どうしよう。こうして寝込んでいるあいだに、世界から忘れられてしまったら。

流行り病に感染して数日。想像の2.5倍くらいしんどくて、ほぼ寝たきり状態で過ごしていた。熱は上がったり下がったり、咳のしすぎで腹筋は痛い、頭はがんがん身体は怠い、なにかしよ

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すこやかに考えごとをする

すこやかに考えごとをする

私には、小説/詩を書く用の人格と、それ以外すべての文章を書く用の人格がある。

日記を書くときは、どちらの人格のほうが書けるんだろう。と、最近ずっと考えていた。考えていたらいつのまにか、1年の1/10が終わろうとしている。考えごとが相変わらず下手だ。ひとりで考えては爆発して、ひとりでよく寝込む。
「人生は考え抜くものじゃなくて、生きるもの」だと、江國香織さんが小説で書いていた。今年の目標は、『すこ

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意味のないこの世界で、あなたと出会えてよかった【ありがとう、進撃の巨人】

意味のないこの世界で、あなたと出会えてよかった【ありがとう、進撃の巨人】

人生は、この作品を「観る前」と「観た後」に分かれる。もう観る前には戻れないことに、半ば愕然としてしまう。

『進撃の巨人』。
おそらく、私の人生観の一部を形作っている作品。

彼らの台詞を自分ごととして受け取っては、勝手に心臓を捧げてきた。『紅蓮の弓矢』のドイツ語歌詞を必死で暗記していた頃から、かれこれ10年が経つ。

先日、アニメ最終回が放送された。
25歳にもなって、嗚咽しながら泣くとは思わな

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蟻と葡萄と10月某日

蟻と葡萄と10月某日

休日。夏のあいだに読めなかった本を読む。好きな作家さんの小説、コピーライターの本。溜めていたドラマを1話だけ観る。好きな俳優さんが出ているやつ。

風がつめたいことに気づく。ヒートテックを引っ張り出す。それでも日が差すとすこし暑く、カフェラテはアイスで飲んでしまう。たぶん一瞬で終わってしまう季節。はかない。

シャインマスカットを買おうとして、逡巡してやめる。代わりに想像する。薄い皮がはじける瞬間

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9月のかけらたち

9月のかけらたち

長編1本、短編2本、詩1本。
9月末に脱稿した。

この1か月間、ほんとうにずっと書いていた。小説の執筆はいつもいのちがけだけど、今回は人生で一番いのちがけだった。

*

6万字弱の長編を書くには、自分の記憶や傷や熱とひたすらに向き合わなければならなかった。
全時間軸の自分と話をした。いつの自分も、どの世界線を選んだ自分も、ちゃんと救われてほしかった。どうか届いてほしいと祈った。あのときの自分に

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8月のかけらたち

8月のかけらたち

8月も過ぎるのがはやかった。
今月も断片的にふりかえり。いつかの自分にあてた備忘録です。

某日-1

大人の写真部に参加。軽井沢と小諸へ撮影に行った。メンバーのなかにはお世話になっている人も、初めてお会いする人もいた。みんな大先輩だから、私なんかがいていいのかどきどきしていたけれど、カメラを持って街を歩いているうちに、そんな不安は消えた。楽しかった。夢中でシャッターを切っていた。
写真はおもしろ

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始業式の朝

始業式の朝

いつもより早く家を出たら、駅に小学生がたくさんいた。自由研究が入った紙袋、こんがりと日に焼けた笑顔。今日が始業式らしい。

久しぶりの登校を、見送りに来ているお母さんがいた。ランドセルをぽんとたたいて、いってらっしゃい、と手を振っていた。

登校班らしき数人のまとまりが、ホームで電車を待っていた。電車のドアが開くと、年長者の女の子が、黄色い帽子を被った一年生を先に電車に乗るよう促した。当たり前のよ

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声が枯れるまで語る時間

声が枯れるまで語る時間

声が枯れるまで話をした。人生について。親愛なる友人と、大好きな街で。

大学4年間を過ごした街には至る所に思い出があり、そのひとつひとつについて語るだけで数時間が経ってしまう。なくなったお店も、新しいお店も、変わらないお店もあった。

あの頃に戻りたい、と悲観的になるのではなくて。未来志向の懐古は心にいい。こういう時間こそ人生だ、と思う。

話しながら気づいたり、気づきながら捉え直したり。声が枯れ

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あの夏の余興

あの夏の余興

久しぶりに、帰省した。

通勤に使う下り列車。片手には文庫本。車窓から見える夏が、鈍行のスピードで流れていく。
会社の最寄り駅を通り過ぎると、見慣れない景色に変わる。引っ越してきてから一度も、この駅より先まで乗ったことがなかった。

夏はいつもフィクションみたいだ、と思う。鮮やかな景色も、追憶を誘う匂いも。遠い昔の記憶。ひぐらしの声、線香と桃畑の匂い。

一度、高校の頃の最寄り駅で降りた。この駅に

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7月のかけらたち

7月のかけらたち

追憶。あっ、と言うまもなく、と言うまもなく、終わった7月。あまりにも夏だった。夏はいつも短命だ。どうしようもなくまぶしくて、濃い影を残して去っていく。

これは7月の断片。断章。

***
◯日

人生で経験できる夏には限りがある。ふっと気づいて、焦燥感に襲われた。私は夏が好きだ。いのちの気配が濃いところも、終わりの匂いが強いところも。どうしよう。また夏が去っていこうとしている。待って。私は夏が好

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いつか、あの頃になる夏で

いつか、あの頃になる夏で

夏。あまりにも夏。仰いだ空は高純度、木陰が誘う夕涼み。

海。森。光。地面にできる模様。砂の感触。土の感触。視界。私が切り取る世界。夏の匂いから逃れられない。透明な手が背中に触れる。夏。遠い昔の夏休み。塩素とプール、スイカと朝顔。

あの頃はよかった、と人は言う。私も言う。今日も、いつか、あの頃になる。

歩く。砂浜はさらさらしている。歩く。木立はしっとりしている。考える。考える考える考える。とき

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私を見つけるために書く

私を見つけるために書く

「何食べたい?」

と聞かれたとき、本当に自分の食べたいものを答えたことが、今まで一度だってあっただろうか。

咄嗟に、今相手はどんな気分だろう、何が好みだろう、暑いから定食よりお蕎麦のほうがいいか、イタリアンより中華がいいか、そもそもチェーンがいいか個人店がいいか、頭を猛スピードで回転させる。間違えないように。気分を損ねないように。気まずくさせないように。笑ってもらえるように。

本当は、何が食

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かつて、自分がほしかったことばを

かつて、自分がほしかったことばを

思うに「大人になる」とは、
かつて自分がしてほしかったことを、誰かに返せるようになることではないか。

「自分もつらかったのだから、他の誰かも同じつらさを味わって当然だ」と思ってしまえば、くるしみはどこまでも連鎖してしまう。その連鎖は今日もどこかで起こっていて、誰かが笑いながら耐えている。負の連鎖は、優しさと形容された意思で、断ち切らなければならない。

自分が受けたくるしみを相手に向けるのではな

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ゆらゆらつらつら

生き残らなきゃ、と思っている。
街を歩いていて、良さそうな廃墟ビルを見つけたらメモをする。もし住む場所がなくなったら、ここにすこし住めそうだ、そうやって、もしものときの居場所をつくると安心する。

最後に信じられるのは自分だけで、だから、人生の主導権を他人に握られると、人は弱る。誰かのせいにする人生はくるしい。自分の意思で立つこともくるしい。でもどうせくるしいなら、自分で選んでいたい。難しい。

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