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自分はおもしろいと思っているけど他人が読んだら全然おもしろくなさそうなことを胸を張って…

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自分はおもしろいと思っているけど他人が読んだら全然おもしろくなさそうなことを胸を張って書いています。ご了承ください。

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    自分はおもしろいと思っているけど他人が読んだら全然おもしろくなさそうなことを胸を張って書いています

記事一覧

TX¥

 火曜日の午後三時、スーパーの店内は客もまばらで、五台あるレジは二台しか稼働していなかった。島村はそのうちの一台に立つ星野という女性を目当てにこの店に通っていた…

shin
58分前

或る1日の記録

 副編集長に昇進する辞令を受けたのは昨日のことだった。入社してから常に特集記事の企画採用率がトップだった私としては、やっとという思いだった。上司や同僚たちからお…

shin
3週間前

星詠みの窓

 帰宅してノートパソコンのスリープを解除し、パスワードを入力した。エンターキーを押してキッチンへ行き、冷蔵庫からペットボトルのジャスミン茶を取り出してグラスに注…

shin
2か月前
2

赤信号を渡る

鬼は突然現れる、平穏な日常に。桃太郎でも、一寸法師でも、鬼は突如としてその世界に姿を現す。ただそれは、人が鬼のように変貌したという昔あった出来事が、比喩的に伝え…

shin
4か月前
1

雑穀ごはん

午前の仕事がひと段落し、私は少し早いランチをとることにした。オフィスを出て当てもなく歩いていると、いつも行列のできているカフェが店を開けたばかりのようで、まだ誰…

shin
5か月前
1

チャリの逆走とナニワの愛想

東京で暮らしていたころ私は近距離の移動手段としていつも自転車を利用していた。大阪に引っ越してきてから1年ほどになるが近場の移動は変わらず自転車に乗っている。自転…

shin
7か月前
3

ヒットソング

録音ブースの重い扉を閉めると部屋は一瞬真空状態になったかのように静まり返った。私は振り返って椅子に座り左側の少し低い位置にかけられているヘッドホンを手にとって付…

shin
10か月前
1

一見の客

レトロな商店街で有名なこの街に越してきて半年。元々街歩きの好きな私がこの商店街にある店を把握するのにさほど時間はかからなかった。それでも路地の多いこの商店街。ま…

shin
10か月前
2

生きること、または、書くことについて

私は書いていない。少なくとも文章は。私だけでなく多くのビジネスパーソンも同じだと思うが今は“書く”のではなく“打つ”という行為で思考は形になり言葉は文章に変わる…

shin
10か月前
3

会社を辞める理由についての考察と決意

自分の考えを特定多数の人に伝える必要があるとき多くの場合に於いて話せば話すほど伝え方が上手になっていく。それは自分の気持ちが整理されていくということに加え他者の…

100
shin
8年前
1

メキシコで感じた事

2週間メキシコに行ってきた。具体的にはハリスコ州のグアダラハラという都市とその周辺に。主にテキーラの蒸留所巡りと街の観光が目的だ。 テキーラエクスプレスに乗った…

shin
8年前

冬の匂い

今日ふと冬の匂いがした。誰もが感じたことのあるであろう季節の匂い。特定の何かの香りではなく風の匂いというか温度感みたいなもの。 冬の匂いを感じて思い出すのは子供…

shin
8年前

特に建築に興味はないのだけれども体感することは良いことだ

オリンピックには全く興味がなかったから最近起きたエンブレムに関するトラブルも“他人事とは思えない”程度の関心を寄せてはいたけれどそれはオリンピックとは別のところ…

shin
8年前

自己投資についての所見

最もリスクが少なくリターンが多い投資先は自分である。 技術を習得する。経験を買う。新しい出会いを作る。 これらへの投資は惜しみなく行うべきである。 もちろん投資…

shin
9年前

つきなみだけど震災後に考え方が変わったという話

東日本大震災から約4年半。自分の親族の中に大きな被害を被ったという人はいない。間接的には何らかの影響を受けているかもしれないが東北に住んでいる親族もおらず親族の…

shin
9年前

自分の興味があることには兎に角首を突っ込んでみる

最近はいろんな活動をしている。広告業界で働きながら週末にBARを開いたり仲間内でパーティーを開催したり頼まれてもいないのにプロモーションムービーを作ったり。気にな…

shin
9年前
TX¥

TX¥

 火曜日の午後三時、スーパーの店内は客もまばらで、五台あるレジは二台しか稼働していなかった。島村はそのうちの一台に立つ星野という女性を目当てにこの店に通っていた。彼はレジに星野がいることを確認してから店内を一周する。一週間分の食料を適当に選び、迷うことなく彼女のレジに並んだ。島村の順番が回ってくると、彼女は優しく微笑みながら丁寧にお辞儀をし、商品をスキャンしはじめた。
「いらっしゃいませ、今日はち

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或る1日の記録

或る1日の記録

 副編集長に昇進する辞令を受けたのは昨日のことだった。入社してから常に特集記事の企画採用率がトップだった私としては、やっとという思いだった。上司や同僚たちからお祝いをしようと飲み会に誘われ、帰宅したのは深夜2時近くだった。朝は強い方なので普段は目覚ましなしで起きられるのだが、今朝起きて枕元の時計を見るといつもより30分も遅かった。急いで身支度を済ませて家を出ると、少しだけ足取りが重かった。気分は悪

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星詠みの窓

星詠みの窓

 帰宅してノートパソコンのスリープを解除し、パスワードを入力した。エンターキーを押してキッチンへ行き、冷蔵庫からペットボトルのジャスミン茶を取り出してグラスに注ぐ。リビングに戻ると今日もタイミングよくデスクトップが表示された。新規ドキュメント作成のボタンをクリックし、テンプレートから「ペルソナ」を選ぶ。今日調べた女性の調査結果を入力して、いくつかの情報を検索サイトで調べながらドキュメントを完成させ

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赤信号を渡る

赤信号を渡る

鬼は突然現れる、平穏な日常に。桃太郎でも、一寸法師でも、鬼は突如としてその世界に姿を現す。ただそれは、人が鬼のように変貌したという昔あった出来事が、比喩的に伝えられた結果であると解釈するのが妥当だろう。現代においても、このようなニュースは頻繁に目にするものだ。
その日は打ち合わせが重なり、会議ごとに新たなタスクが増えていった。翌日から新しいプロジェクトが始まることもあり、私はその日のうちに全てのタ

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雑穀ごはん

雑穀ごはん

午前の仕事がひと段落し、私は少し早いランチをとることにした。オフィスを出て当てもなく歩いていると、いつも行列のできているカフェが店を開けたばかりのようで、まだ誰も並んでいなかった。せっかくだからと店に足を踏み入れると、黒板に手書きの文字で3種類のメニューが書かれているのが目に入った。

日替りランチ(チキンソテー)

お肉ランチ(ビーフシチュー)

お魚ランチ(サーモンムニエル)

メニューの端に

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チャリの逆走とナニワの愛想

チャリの逆走とナニワの愛想

東京で暮らしていたころ私は近距離の移動手段としていつも自転車を利用していた。大阪に引っ越してきてから1年ほどになるが近場の移動は変わらず自転車に乗っている。自転車には移動手段としての利便性だけでなく季節の変化を肌で感じられたり手軽に気分転換ができるという利点もある。引っ越してきてからは自転車に乗りながらこの街の魅力を探るという楽しみも加わった。

大阪には8車線もあるのに一方通行の広い道もあれば車

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ヒットソング

ヒットソング

録音ブースの重い扉を閉めると部屋は一瞬真空状態になったかのように静まり返った。私は振り返って椅子に座り左側の少し低い位置にかけられているヘッドホンを手にとって付けた。ギターパートのレコーディング開始からは2時間が経過しようとしている。右側に置かれているギターを手に取るとヘッドホンからプロデューサーの声が聞こえた。
「準備はいい? 次で決めよう! 」
私は、
「はい。お願いします」
とマイクが拾える

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一見の客

一見の客

レトロな商店街で有名なこの街に越してきて半年。元々街歩きの好きな私がこの商店街にある店を把握するのにさほど時間はかからなかった。それでも路地の多いこの商店街。まだあと1年くらいは散策を楽しむことができるだろう。

11月15日木曜日午後5時。気温16°C。この日は仕事を少し早く終えたこともあり商店街をぶらぶらしてから帰ることにした。この街に来てまだ半年。季節や時間が違えば景色も変わって見える。何か

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生きること、または、書くことについて

生きること、または、書くことについて

私は書いていない。少なくとも文章は。私だけでなく多くのビジネスパーソンも同じだと思うが今は“書く”のではなく“打つ”という行為で思考は形になり言葉は文章に変わる。
むかし誰かから「手書きで書いてこそ思いが伝わる」と言われたことがある。手書きで書いている途中に修正が必要になると消しゴムで消すか新しい紙に書き直すことになる。私はその行為に意味を感じない。大袈裟に言えば消しゴムで消す作業をしている間は間

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会社を辞める理由についての考察と決意

自分の考えを特定多数の人に伝える必要があるとき多くの場合に於いて話せば話すほど伝え方が上手になっていく。それは自分の気持ちが整理されていくということに加え他者の意見を聞く中で自分にとって腑に落ちる意見を取り入れることができるからでもある。

しかし人に伝えることさえ上手く行かないとき自分の場合その気持ちを文字に起こすことから始める。よってこの文章は結論を持たないまま書き始める文章である。閲覧の時間

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メキシコで感じた事

2週間メキシコに行ってきた。具体的にはハリスコ州のグアダラハラという都市とその周辺に。主にテキーラの蒸留所巡りと街の観光が目的だ。

テキーラエクスプレスに乗った話やアガベ畑でヒマドール体験をした話、そして蒸留所を巡った話などはまた改めて書くとしてここではメキシコで感じた「生きる」ということについて書いてみようと思う。

グアダラハラの街で食事をしていて一番驚いたのはお店の中にあからさまに客ではな

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冬の匂い

今日ふと冬の匂いがした。誰もが感じたことのあるであろう季節の匂い。特定の何かの香りではなく風の匂いというか温度感みたいなもの。

冬の匂いを感じて思い出すのは子供のころ正月におばあちゃんの家の近所で凧揚げをしている光景。

夏の匂いを感じて思い出すのは20歳のころ味噌串カツ屋で串カツをたべてそのあとみんなで海に行った日のこと。

どちらも特定の日ではあるけれど特別な思い出などではなく普通の出来事。

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特に建築に興味はないのだけれども体感することは良いことだ

オリンピックには全く興味がなかったから最近起きたエンブレムに関するトラブルも“他人事とは思えない”程度の関心を寄せてはいたけれどそれはオリンピックとは別のところの話であって。

新国立競技場についても同じで政治的な面とか運営面とかでモヤモヤすることはあったけれどそれもオリンピック自体の話とは別の話で。

だからオリンピックについて考えることはほとんどなかったんだけれどたまたま韓国に行ってザハの建築

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自己投資についての所見

最もリスクが少なくリターンが多い投資先は自分である。

技術を習得する。経験を買う。新しい出会いを作る。

これらへの投資は惜しみなく行うべきである。

もちろん投資効率はあげなくてはならない。ただし投資効率をあげるのは投資した“後”であって投資する“前”ではない。効率を考えて行った投資は投資をすることに対する経験の価値を下げる。たとえその投資が失敗に終わったとしてもその経験は次に活かすことができ

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つきなみだけど震災後に考え方が変わったという話

東日本大震災から約4年半。自分の親族の中に大きな被害を被ったという人はいない。間接的には何らかの影響を受けているかもしれないが東北に住んでいる親族もおらず親族の中で震災の影響を最も受けているのは結果的に自分なのだと思う。

20代前半で経験した阪神淡路大震災のとき自分は自動車メーカーで有名な豊田市に住んでいた。生まれて初めて経験する大きな揺れに多少の動揺はしたがテレビをつけるまではこれほどのおおご

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自分の興味があることには兎に角首を突っ込んでみる

最近はいろんな活動をしている。広告業界で働きながら週末にBARを開いたり仲間内でパーティーを開催したり頼まれてもいないのにプロモーションムービーを作ったり。気になることは何でもかんでも事を始めるようにしている。

いろいろやり過ぎて頭がパンクするということはない。

アイデアが出なくて考えることを辞めてしまっても次の違うことを考えているうちに思いがけず違う取り組みの良いアイデアが浮かぶこともある。

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