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発達障害への支援と応用行動分析

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発達障害のある人やその家族・支援者のための情報を発信します。
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能登半島地震から二週間が経過して思うこと

能登半島地震から二週間が経過して思うこと

 被災された方の現状を伝えるニュースが毎日のように流れています。

 今日も冷え込みが厳しく、ご本人ご家族、現場の支援者の方の不安やご苦労は言葉にはできないほどかと思います。想像するだけで心が痛みます。

 この時期、話題になるのが避難所のことです。先日このような記事も出ていました。

毎日新聞 2024/1/12 自閉症の息子、避難所連れて行けず「限界」 追い詰められた家族

 また現在、福祉避

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インクルーシブ教育についての誤解(1)

インクルーシブ教育についての誤解(1)

インクルーシブな学校をつくる:北欧の研究と実践に学びながら 石田祥代 (編集), 是永かな子 (編集), 眞城知己 (編集) ミネルヴァ書房 2021 を読んで考えたことを書いておきます。

「インクルーシブ教育」というと、障害のある子どももそうでない子どももみんな一緒の場で学ぶことというステレオタイプなイメージを持たれることも少なくないようです。この本は改めて再考する機会を与えてくれました。

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周りは困っているけど本人は困っていない、こんな時、通級担当の先生はどうする?

周りは困っているけど本人は困っていない、こんな時、通級担当の先生はどうする?

通常学級ではトラブルメーカーとされているけど、本人に困り感のようなものがない上に、通級という個別の学び環境ではトラブルはおきないということもあるでしょう。しかも担任の先生からは「通級でしっかり見てやってください」と言われてしまうことも。表題のような通級担当の先生の研修会で出た実際の質問について少し考えてみたいと思います。

行動上の問題は個人に内在するのではなく環境との相互作用にあるこのことは行動

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ASD(自閉スペクトラム症)の療育機関の認証を進めようとしている米国のCASPの試み

ASD(自閉スペクトラム症)の療育機関の認証を進めようとしている米国のCASPの試み

なんでも諸外国の真似をすればよいわけじゃないし、私は元来心理屋で、制度の専門家でも、それに精通しているわけではないのですが、諸外国の研究論文を読んでいると、その論文の背景としての「制度」を理解する必要がでてくるので時々調べたことを公開メモとして残しておきたいと思います。間違いがあったらご指摘いただきたいと思います。

自閉症サービスプロバイダー評議会 Council of Autism Servi

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米国における知的障害・自閉症のある人の自傷行動・他害的破壊的行動の治療ににおける「電気ショックを利用した装置」についての事件・論争からみえるもの(1)治療をめぐる経緯 20210802改訂

米国における知的障害・自閉症のある人の自傷行動・他害的破壊的行動の治療ににおける「電気ショックを利用した装置」についての事件・論争からみえるもの(1)治療をめぐる経緯 20210802改訂

イントロダクション 
 知的障害のある人の10~15%に自傷行動、他害破壊的行動、ステレオタイプな行動など、何らかの行動上の問題があるといわれています(Holden & Gitlesen,2006)。特に、自閉スペクトラム症はこのハイリスク要因の一つとされています。

 これらの治療に関するエビデンスは、環境調整や機能的アセスメントをベースにしたPBS(ポジティブ行動支援)、FCT(機能的コミュニ

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ASD(自閉スペクトラム症)のある子どもにとっての理想の学校・学びとは

ASD(自閉スペクトラム症)のある子どもにとっての理想の学校・学びとは

 2022年日本自閉症協会全国大会(佐賀)でのシンポジウムで表題の話題提供をさせていただきました。いくつかリクエストをいただいたので当日の話題提供の一部を書きおこしてみました。

 ASDのある子どもに対する「特別支援教育」についての議論は、当然ですが、常に現実の教育制度をその念頭において行われます。しかし現実の教育制度にとらわれないで、夢を語ってみるのも悪くないかなと思っていたところ、今回のお題

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