鶴池柾叡, PhD, ATC

研究成果に基づいた投球障害肩・肘予防トレーニング専門パーソナルトレーナー。アメリカで1…

鶴池柾叡, PhD, ATC

研究成果に基づいた投球障害肩・肘予防トレーニング専門パーソナルトレーナー。アメリカで10年間の大学院教育と研究活動の経験をセミナー、コンサルティングで発信中 元大阪体育大学教授 昭和大学兼任講師 サンノゼ州立大学Emeritus https://water-holder.com

マガジン

  • 投球障害予防トレーニング

    投球障害予防トレーニングをエビデンス(科学的根拠)に基づいて解説しています。国際誌に投球障害肩の予測、予防トレーニングの研究論文を発表(+15)しています。年間通して全米資格協会(Board of Certificate: BOC)認定CEUセミナーを開催しています。こうした経験をマガジンで発信しています。 https://water-holder.com/publications/

  • 神経科学からみたエクササイズー下行路の仕組み

    エクササイズのパターンを神経学的な視点で理解することができるなら、さまざまなエクササイズも解釈でき、さらにエクササイズを創意工夫できるのではないかと思います。 マガジンでは6つパターンの下行路について説明しています。下行路とは大脳皮質から指令する随意運動と脳幹で随意運動を補助する対応型、さらに大脳皮質の指令を調節する小脳が組み合わさったものです。 脳幹あるいは小脳は運動中に送られてくる末梢、前庭系、視覚の感覚情報を処理し、身体のバランスを維持しながら、上肢あるいは下肢の随意運動(エクササイズ)の達成を補助、調整しています。 さまざまな運動をしている愛好家、さらにスポーツ選手のリハビリ、リコンディショニングに関わっている専門家に是非購入していただければと思っています。

  • MLBのトミー・ジョン術ー大谷選手の肘をエビデンスでひも解く

    野球肘で最も多い手術がトミー・ジョンと呼ばれている肘の内側側副靭帯の損傷による再建術です。1974年にFrank J. Jobe医師によって初めて執刀され、その時の患者がメジャーリーグ(MLB)のTommy John投手でした。彼は手術後にMLBで164勝を挙げ、このことからトミー・ジョン術と呼ばれるようになりました。肘の内側側副靭帯は前腕小指側の尺骨(ulna)に付いていることからアメリカではUCL(ulnar collateral ligament)と呼び、その損傷をUCL損傷、トミー・ジョン術あるいはUCL再建術と呼んでいます。 マガジンでは、MLBのトミー・ジョン術の現状、UCL再々建術(2回目のトミー・ジョン術)、復帰率をエビデンスから説明しています。 野球に興味ある方、トミー・ジョン術に関心ある臨床家、大谷翔平選手の肘の行方に興味ある方に一読していただければと思っています。

  • 筋肉の張り解消法ー上行路、脳内物質の仕組みからひも解く

    スポーツの試合の後、肩や腰、でん部などの筋肉が張り、動くどころか起き上がることもままならないことがあります。 シーズン中なら次の試合のスケジュールが決まっています。選手は筋肉の張りを解消しモチベーションを高める必要があります。 筋肉の張りの解消法をご紹介します。解消法と言っても、種目やスポーツ、日程などによって変わり、あくまでも汎用の考え方ですが、経験に基づいて応用していただければと思っています。 1)ゲートコントロール理論 2)下行性鎮痛システム 3)筋スパズム 4)網様体脊髄路パターン 5)水風呂でノルエピネフリン放出

記事一覧

投球時の膝伸展と制球力

プロ投手(メジャー、マイナー)121名、計1121球をバイオメカニクス手法で分析されました。投手は、十分なウォームアップ後にマウンドからホームベースまで通常の距離(18.…

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投球メカニクスの修正

アラバマ州バーミンガム市に位置するAmerican Sports Medicine institute (ASMI)で高校生以上の投手19名(平均年齢18.7歳)とプロ投手(メジャー、マイナー)27名(平均年…

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プロ投手と高校生投手の投球動作のタイミングの違い

プロ投手(メジャー、マイナー)317名の3261投球と高校生投手54名の430球を三次元バイオメカニクス投球アセスメントで比較していました。各投手は、十分にウォームアップを…

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プロ投手と高校生投手の投球時の胴体の傾き

健常な高校生投手58名の432投球とプロ投手(メジャー、マイナー)284名の2334投球を三次元バイオメカニクス投球アセスメントで比較していました。 高校生投手の胴体の傾き…

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投球時の水平内転による球速への影響

プロ投手(MLB, MiLB)339名は、通常の距離(18.44 m)に捕手に向かって直球を8から12球を投げ、それをバイオメカニクス手法で分析していました。実験では、投手は投球に必…

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投球時の肩外転と外旋角度

健常な現役プロ投手(MLB, MiLB)322名の投球中の肩外転と外旋角度の分析がありました。各投手は、十分なウォームアップ後に通常の距離(18.44 m)に座った捕手に全力直球…

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前足接地時の胴体回旋角度と関節唇損傷

プロ投手のほとんどが関節唇を損傷しています。しかし症状にでるか適応性になるかは投手次第でそのメカニズムはわかっていません。 コッキング期の肩最大外旋から加速期に…

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投球動作の各部位のタイミング

運動学習の視点からスキルとは、「タイミング」の取り方が上手なことです。タイミングとは関節を動かす順序だけでなく、その速さも適切なことです。鍛錬者のスキルはなめら…

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プロ投手の投球メカニクス

投球メカニクスの研究論文が興味深い。 今回の研究対象は過去6カ月投手として健康である現役プロ投手です。データ収集は秋の技術指導期間あるいは春のトレーニング(キャン…

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MLBピッチクロックと投球障害肘

MLB投手の26%がトミー・ジョン術 メジャーリーグ(MLB)投手の26%は肘尺側側副靭帯(UCL)再建術、通称トミー・ジョン術を受けています 。術後から復帰までの平均日数は43…

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投手の回旋筋腱板のはたらき

 肩のリハビリテーションエクササイズの一つに肩の外旋筋の強化が挙げられます。外旋筋は棘下筋と小円筋ですが、小円筋はその大きさから外旋の貢献度の最大20-45%までと…

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運動中の身体バランス補正

 習得した運動スキルを別の運動にも応用できるとしたら、その仕組みはなにか。たとえばアイスホッケーとゴルフです。実際プロアイスホッケー選手は引退後、ゴルファーにな…

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少年野球の投球障害予防

MLBピッチスマートの経緯 投手から投球障害肩・肘を守るために考案されたMLB Pitch Smartガイドライン(日本語版)があります。その礎(科学的根拠)になったのが2010年に…

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運動中の脳幹制御について

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高校生投手の球速と肘障害

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運動スキルから選手のパフォーマンス

運動スキル習得人はボールを投げたり、野球ならバッドで投げられたボール打ち返したり、テニスのサーブさらに剣道や弓道など運動のスキル習得で競い合う。運動スキルとは目…

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投球時の膝伸展と制球力

投球時の膝伸展と制球力

プロ投手(メジャー、マイナー)121名、計1121球をバイオメカニクス手法で分析されました。投手は、十分なウォームアップ後にマウンドからホームベースまで通常の距離(18.44 m)を全力で直球のみを8-12球投げました。

121名の投手を低制球投手群(36名)中制球投手群(52名)高制球投手群(33名)に分け、制球力とキネマティックス、キネティックスを比較されました。制球度合は、95%信頼楕円を

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投球メカニクスの修正

投球メカニクスの修正

アラバマ州バーミンガム市に位置するAmerican Sports Medicine institute (ASMI)で高校生以上の投手19名(平均年齢18.7歳)とプロ投手(メジャー、マイナー)27名(平均年齢21.8歳)のバイオメカニクス投球動作分析が行われました。計46名の選手は、最低2回同様の分析を受けました。2回目の平均分析期間は12か月(範囲2-48カ月)でした。
(この記事は、これまで

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プロ投手と高校生投手の投球動作のタイミングの違い

プロ投手と高校生投手の投球動作のタイミングの違い

プロ投手(メジャー、マイナー)317名の3261投球と高校生投手54名の430球を三次元バイオメカニクス投球アセスメントで比較していました。各投手は、十分にウォームアップを行った後に、通常の距離(18.44 m)をホームベース後ろに座った捕手にゲームのような全力で直球を8-12球投げました。

測定には以下の項目が含まれていました。
1)      前足接地―骨盤:前足接地時から骨盤ピーク角速度ま

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プロ投手と高校生投手の投球時の胴体の傾き

プロ投手と高校生投手の投球時の胴体の傾き

健常な高校生投手58名の432投球とプロ投手(メジャー、マイナー)284名の2334投球を三次元バイオメカニクス投球アセスメントで比較していました。

高校生投手の胴体の傾き胴体中間位の高校生投手は、同側傾き、逆側傾き(グローブ側)投手に比べ球速が速く、肩最大外旋(MER)が大きかった。胴体逆側傾き投手は、MER時に胴体回旋が少なかった。さらに胴体逆側傾き投手は、肩上方力および肩前方力が大きかった

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投球時の水平内転による球速への影響

投球時の水平内転による球速への影響

プロ投手(MLB, MiLB)339名は、通常の距離(18.44 m)に捕手に向かって直球を8から12球を投げ、それをバイオメカニクス手法で分析していました。実験では、投手は投球に必要なウォームアップ後、各自のペースでゲームのような全力で投げました。

前足接地時の水平外転の平均は38ºでした。そこから最大水平外転が達し、平均は44ºでした。最大肩外旋(MER)時に平均8º水平内転していました。

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投球時の肩外転と外旋角度

投球時の肩外転と外旋角度

健常な現役プロ投手(MLB, MiLB)322名の投球中の肩外転と外旋角度の分析がありました。各投手は、十分なウォームアップ後に通常の距離(18.44 m)に座った捕手に全力直球を8から12球、各自のペースで投げました。各球ごとにストライク、ボールの判定もありました。

各投球メカニクス期における肩外転角度は、ほぼ一定でした。前足接地時の平均が85.5º、肩最大外旋(MER)時が 91.7º、ボー

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前足接地時の胴体回旋角度と関節唇損傷

前足接地時の胴体回旋角度と関節唇損傷

プロ投手のほとんどが関節唇を損傷しています。しかし症状にでるか適応性になるかは投手次第でそのメカニズムはわかっていません。
コッキング期の肩最大外旋から加速期において上腕二頭筋長頭と関節唇複合がねじれひずみを起こし、関節唇をはく離させます(Peals back)。一回のことでなく投球動作の繰り返しが関節唇を損傷させます。

プロ投手26名は、肩に投球障害を発生させましたが、その後保存治療を受け、復

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投球動作の各部位のタイミング

投球動作の各部位のタイミング

運動学習の視点からスキルとは、「タイミング」の取り方が上手なことです。タイミングとは関節を動かす順序だけでなく、その速さも適切なことです。鍛錬者のスキルはなめらかな動きになります。プロ投手は、すでにスキルレベルは最高ですが、全員同じキネマティック(速度)あるいはキネティック(トルク)で投げているのではありません。研究は、プロ投手(メジャー、マイナー)287名の投球動作中の各部位のタイミングを比較し

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プロ投手の投球メカニクス

プロ投手の投球メカニクス

投球メカニクスの研究論文が興味深い。
今回の研究対象は過去6カ月投手として健康である現役プロ投手です。データ収集は秋の技術指導期間あるいは春のトレーニング(キャンプ)期間で行われました。

プロ投手(メジャー、マイナー)323名がブルペンから通常の距離(18.44 m)に実際のゲーム時のようなホームベースの後ろに座る捕手に向かって全力で投げた直球8球から12球、それらをバイオメカニクス手法で分析さ

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MLBピッチクロックと投球障害肘

MLBピッチクロックと投球障害肘

MLB投手の26%がトミー・ジョン術 メジャーリーグ(MLB)投手の26%は肘尺側側副靭帯(UCL)再建術、通称トミー・ジョン術を受けています 。術後から復帰までの平均日数は433日(14カ月)。ゲーム復帰までさらに要する平均日数が109日、結果的に18ヶ月かかります。UCL再建術を受けたMLB投手の80%は術前レベルに復帰していますが、うち6.7%の投手は2回目のUCL再建術を受けます。

球団

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投手の回旋筋腱板のはたらき

投手の回旋筋腱板のはたらき

 肩のリハビリテーションエクササイズの一つに肩の外旋筋の強化が挙げられます。外旋筋は棘下筋と小円筋ですが、小円筋はその大きさから外旋の貢献度の最大20-45%までと言われています。しかし投球動作における小円筋の役割はどうなのか、今回は投球における外旋筋のはたらきを掘り下げます。

プロ投手の回旋筋腱板の筋力と投球障害 2001年から2005年の5年間、各シーズン前に1球団プロ投手144名の回旋筋腱

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運動中の身体バランス補正

運動中の身体バランス補正

 習得した運動スキルを別の運動にも応用できるとしたら、その仕組みはなにか。たとえばアイスホッケーとゴルフです。実際プロアイスホッケー選手は引退後、ゴルファーになることがあります。その仕組みはステックを使ってパックを動かすあるいはアイアンでゴルフボールを飛ばすことが似ているからでしょうか。

身体バランス補正 運動学習の先駆者N. Bernsteinは、異なる動きが他の動きに応用できるならそれは四肢

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少年野球の投球障害予防

少年野球の投球障害予防

MLBピッチスマートの経緯 投手から投球障害肩・肘を守るために考案されたMLB Pitch Smartガイドライン(日本語版)があります。その礎(科学的根拠)になったのが2010年に発表された研究論文(Fleisig et al. Am J Sports Med. 2010;39(2):253–257)でした。研究は1999から2008年までの10年間、毎年秋に電話と過去1年間の質問で少年野球の投

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運動スキルから選手のパフォーマンス

運動スキルから選手のパフォーマンス

運動スキル習得人はボールを投げたり、野球ならバッドで投げられたボール打ち返したり、テニスのサーブさらに剣道や弓道など運動のスキル習得で競い合う。運動スキルとは目的のために各関節を動かす随意運動のことであり、パフォーマンスのことである。
スキル習得には段階があり、始めに頭で動かし方を理解し、運動達成までの一連の流れを学ぶ。次に一連の流れを実際に行い、頭で理解していたこととの違いを知る。習得したいスキ

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