リンパ芽球性リンパ腫・白血病(1)緊急入院・診断(part 1)

これが事実かフィクションかは、読者の皆さんに判断を委ねます。


〜1話の続き〜

友人の質問に対して、

「実は、苦しい……モニターの接触不良じゃないみたい……」と冷静な普段よりも力ない私が発した言葉。


モニターの酸素(SpO2)が80台後半から90台前半をフヨフヨと漂う中で、発せられたそのゆっくりとした重たいセンテンスは、室内全員にことが実際に重大な事態に劣っていることを知らしめるものとなった。


〜〜〜



何かの間違いかもしれない、と誰もが願っていることが、紛れもない事実であることを皆が共通認識した。


血が止まりづらい、顔面蒼白、酸素(SpO2)低下とその進行……


これは、皆がある程度想定していたマズイ自体よりも、もう少し事態が重いという可能性が上がる。


友人は、その言葉を聞いて、直ぐに早歩きで医師を探して、私のいる部屋に連れてきた。


友人(研修医)は私の状態を医師に説明し、私は速攻でICUへと入院になった。


モニターも色々付き、外来で投与開始された酸素は速やかにICU壁の酸素口に差し替えられた。


スタッフの入退室も慌ただしい。


ICU入室後間もなく、私は酸素(SpO2)の低下を理由に、胸部X線(レントゲン)を撮影することとなった。(結核の蔓延していないこの国では、入院時のレントゲンはルーチンではない。臨床的に必要な症状がある患者にだけ試行される検査である。)


ポータブルX線(レントゲン)で早速撮影された画像を見て、同日CT検査が入れられた。(画像検査の待ち時間も非緊急時で最短3ヶ月、緊急でも良くて数時間待ちは当たり前。日暮れ頃の入院ともなれば、同日ならばラッキーといったくらい画像検査は多用されなければ、容易でもない環境だ。夕方入院し、夜中に検査の順番が回ってくることもある。)


それが、同日CT検査が施行されたのだから、画像をまだ見ていない患者の私でもレントゲンでの異常が明白で、それがある程度緊急性が高そうな所見だろうことを確信する。


異国の地で、元気そのもの(自覚的には)からいきなりICUに入室した私。病院は、友人と指導医が付き添えるよう配慮してくれた。


なので、ICU入室後も結構明るいし、笑顔のままだった。



友人も相変わらず、楽しい話題で盛り上げてくれた。


友人と話している間は、ICUに緊急入院とは言っても比較的元気だった(つもり)少なくとも、気持ちは元気いっぱいの平時と変わらない。(つもり)


モニターはよく鳴っていた。


しかし、夕暮れも後半に近づき、友人も指導医もICUから立ち去らねばいけなくなった。


しばらく、窓際のICUのベッドから夕陽が沈む様子を見ていて、綺麗な景色に癒されていた。


しかし、ふと周囲に目をやると、私のモニターが頭上右上(窓際)に部屋の入り口から見えやすい角度の大画面でそこにデンと構えている。


敷居はあるものの、隣人は音だけでも人工呼吸器装着中だと分かる。



自分にも点滴が繋がれている。
モニターも繋がれている。


そう、バカンス気分かつ外科研修中の医師ではなく、私は患者としてICUの病床に寝ている。


それまでは、緊急入院とはいっても、ガラスの向こうの水族館の魚を観察するかのような感覚だった。自分の身体に起きている症状ですら、何処か第三者として事態を眺めるような自分とはどこか乖離した感覚。


しかし、何かの拍子に、自分自身がICUに入院しているのだと気が付いたかのようだった。そして、私自身がICUに入院する病状なのだとストンと理解してしまった。


〜〜〜その時の私の心境1〜〜〜


あ〜、またICUに入院しちゃった……


もう、二度とないと思ってたのになぁ……


挿管(人工呼吸器装着)はしたくない💦


絶対に無理!


親もいないし💦
友達も仕事じゃん💦


一人であれは、絶えられない。


医者に挿管は拒否すると伝えないと!
(生きたいんだけど)


  • 生きたいから、レスピ(人工呼吸器)繋げなくていいように上手く治療して回復させて欲しい……

  • レスピに乗らずに乗り切りたい

  • あれだけは回避したい……

  • でも、生きたいと強く願う……


ただ、もしも万が一レスピがなければ死ぬ状況になってしまった場合には、それでもレスピには乗れない……


あれだけは、どうしても無理だ……


それでも、レスピを必要としない方法が必ずあると心底信じている。


そして、100%生きて快復できると心底信じている。


これが、ICU入室日の正直な心境だった。


〜〜〜ICU入室日の心境1完〜〜〜


続いて、私自身の病状に対しての考察


〜〜〜ICU入室時の自分の病状に対する考え〜〜〜


え、何? リンパ腫……⁉️


あれ、本当はやっぱりリンパ腫だったのか……


発熱は高くない。
咳もそんなに無くない?
そういえば、普段からオペの影響で咳してるから、気がついてないだけ?
いや、でも、肺炎のような咳や膿性の痰は無いよね?
やはり、肺炎のような感染症が強く疑われるわけでもないだろうな。

そういえば、今日は37度後半……いや、けど、元々体温高い方だよね?
腫瘍熱? いやいやいやいや、であれば、もっと高くない? けどさ、しばらく微熱って良くあるパターン……



じゃぁ、酸素(SpO2)低下は気道圧迫? え、Bulky Disease(胸部の病変が大きい様子)とか?……予後不良因子少なくとも1つは有り…… (Bulky Diseaseだと、胸部放射線照射有るんじゃない?…… いや、今は抗がん剤で消えれば、照射しないことも……小児ホジキンでは……けど、小児じゃないし! けど、AYA世代……抗がん剤は……ホジキンならば、変わんなくない? BEACOPPやるかも? いや、ABVDちょっと長めに投薬? 非ホジキンはR-CHOP?……けどさ、胸腺腫瘤が大きいといえば、ホジキンだよね?年齢的にもある程度好発する時期っちゃ、それくらいの年齢だよね? )((ちなみに、ホジキンリンパ腫は初発時完全寛解して再発しなければ、リンパ腫の中ではかなり予後良好なタイプのリンパ腫。))

胸水?(StageIV)年齢的には初期ならば種類によっては9割台の完全寛解率(ほぼ完治)……
2、3割という文字が脳裏を過るが、それはさっさと過ぎ去ってもらう。
リンパ腫の良いところは、StageIVでも治るところ。


((自分の呼吸音は自分で聞こえている。
身体の感覚もある。
色々、ストンとパズルがハマりつつあるものの、当然それが不都合ならば、自分の思い違いだとも自分に言い聞かせている……))


意識喪失、易出血性となると、おそらくは汎血球減少……


点状出血(皮下出血)は気づく範囲内では無いよね?
体をちゃんと見たか?…… 見てない……
でも、もしあれば、少し前に皆で湖で水着で泳いだ時に、誰か気がついてくれたんじゃない?


ん? まさか、口腔内とか咽頭とかにあるパターン?
いやいやいやいや、ないと思う……
あざ出来やすかったっけ? 手術って、毎日スポーツしてるみたいなんだから…… あざなんて、普通にオペがハードだと思うだけじゃない?

おい、待て!
いや、まさかね……
リンパ腫じゃないと思う。
普通に、だってさ…… 希少疾患じゃない?
リンパ腫なんて、なってない気がする。


免疫抑制剤入ってる……


副作用に発がんはある……



けど、やっぱりリンパ腫かもなぁ



汎血球減少はあるんだろうな……


症状的に……


〜〜〜私の思考ひとまず終了(病状の考察編)〜〜〜



元気な証明のためのレントゲンで「リンパ腫です」と告げられてから「やっぱりリンパ腫じゃないです」という起死回生からそう長くない時期に、「やっぱりリンパ腫です」となることを私は悟った。


しかし、事態は想定よりも遥かに悪かった。



血中に芽球と呼ばれる未熟な白血球が散見されているのだ。



この時、覚悟を決める。「あ、白血病だ……」と。


同日、私は輸血を受けることになり、その説明や同意書へのサインが目まぐるしく進む。


骨髄の検査(マルク)も早急に進む。
(骨髄生検も)


髄液検査(ルンバール)も……


担当医には、人工呼吸器をいかに避けたいかを伝えつつも、「生きたい」ということもかなり反復して伝えた。
(この、「生きたい」ということがきちんと伝わるのは、生きるために非常に大切だから、相当神経を使いながらも、必死に「生きたい」けどレスピ(人工呼吸器)をいかに避けたいかを息が続かない中で必死に訴えた……)


どうにか、人工呼吸器を回避して、生かして欲しい、と。
(凄いお願い……)


けど、肺炎とか、可逆的な気道圧迫とか、短期間で改善が見込まれて、治るならば……とも言ったんじゃないかな?
(😅)


医師も、全力で治療してくれることを伝えてくれたあと、何度も何度も呼吸状態の悪化時にレスピ(人工呼吸器)に乗らないことが何を意味するのかを理解しているかを確認してくれた。お互いがその内容に納得したのか、レスピ(人工呼吸器)装着に至らないように治療に励むと言ってくれた。レスピに乗るのが前提ではなく、最善の体制で快復を目指す、といった雰囲気の言葉もかけてくれた。(細かい言い回しや言葉自体はおぼろげな記憶とはいえ、当時の担当医との意思疎通ができた印象は良く覚えている。彼女が私の意志を理解したこと、寄り添ってくれたこと、無理な約束はせずとも、きちんと最善の対応で最善のアウトカムを狙う姿勢であること、前向きで快復を前提とした会話だったこと……これらは覚えている。)


そして、私のICU二人部屋のすぐ外では、「え、ここICU」、「挿管拒否なんて(その先聞こえず)」、「若いのに」と断片的な言葉が聞こえる。



この後、早急に部屋はICU個室へと移動になり、診断と治療が進むのである。


続きは次話をお楽しみに〜


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