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超短編など

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300文字程度の奴です
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#掌編小説

トンボ

いつにも増して、
トンボが飛び交う帰り道。
いつものように
ジョギングをしているスマートな男が
僕の横を駆けて行って、
一匹のトンボをパクッと食べた。

そしてこれまたいつものように、
自転車に乗ったおばさんが
僕の横を通り過ぎて行って、
「キャー!」
と叫びつつ、
傘を振り回して爆走して行った。

そしてそして、
今日も今日とて、
虫取り網を持った三人の男の子たちが、
僕を元気よく追い抜いて行っ

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溶け逝く

連日の暑さでお父さんが
アイスのように溶けてしまったのは、
とても悲しいけれど、
しかしそれを、
いつまでもしくしく悲しんだところで、
お父さんはもう二度と復活しないのだから、
それはもう終わったこととして、
いつもの日常を再開します。

いやーでも、
私も気をつけないとなぁ。
油断していると
お父さんのように溶けちゃうよ。
あんな形の最期は迎えたくない。
最期が溶けるってなんなの?
ヤバすぎ。

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だるだる

扇風機の風に当たりすぎて体がだるい。
しかし、だからと言って、
理不尽に扇風機に当たったりはしない。
なんせ当たるのはだるいからな。
体がだるい以上、だるいことはしたくない。

って言っても、これから
インコを百羽食べるだるい仕事がある。
こんなの考えるだけでだるい。
きっと、しんどくてだるいだろう。
嫌だなぁ、嫌な仕事だ。
つーか昨日は五羽だったのに、
なんで今日は百羽なんだ。
困るなぁ、最近そ

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分かる:ドアガチャ

『分かる』

確かに言うほど熊を倒したいけどね。
君が言うようにエルボーで倒したいけどね。
うん、分かる分かる、
凄く分かるよそれ、うん。
それはみんなそうだと思う。
しかも、ほぼ全裸と言っていい格好でね。
うん、分かる分かる、
凄い分かる、分かるわぁ。

『ドアガチャ』

なんか今、
玄関のドアノブがガチャガチャされているんだけど、それは別にどうでもいいや。
放っておけば、その内どっか行くでしょ

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Five

・君が回るより 
 僕が回ったほうがいいんじゃない?
 どう考えても僕のほうが回れるしね。
 僕が回るよ。

・そういうことなら
 僕も血だらけになるよ。
 そうしたほうが
 あの娘も喜ぶと思う。

・君の話を聞いていると、
 人を騙してお金を貰うことって、
 そんなに悪いことじゃないのかも
 って思えてきたよ。

・お前、トルネード飼ってんだ。
 頼むから
 そのカゴから開け放つなよ。

・結局

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トコナツ

「常」

私は常々
うねうねしながら
思ってもいないことを思いつつ、
思っていることを思わないようにしていて、
でもそれでも思ってしまった場合、
思いっきり、思いの全てを叫ぼうとは思う。
それが今、私の中にある思い。
なんて思ってないけどね。

「夏」

太陽の下でひまわりを食べながらプールの水でそれを流し込んでいる訳だけど、これをすると夏だなって思う。あとはスイカを人がたくさん通っている通りに高

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不能

23時頃、
23コ上の女性に、
「0歳児でも分かる言葉で話したんですが、
あなたにはまだ早かったみたいですね」
と言われてしまった23歳児の俺は、
浮かない顔と
晴れない顔と
死んだような顔を混ぜたみたいな顔で、
「は……い。
まだ、早かったみたいです」
と、その悲しき事実を認めた。

どうも俺は、ダメダメみたいだ。
それも悲しいくらいにな。
もうなんだか全てが嫌になる。
そりゃ嫌になるだろ。
0

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食事:川遊び

『食事』

キミがめちゃくちゃペチャクチャ喋りながら、
カレーをぐちゃぐちゃにして、
それをクチャクチャ食べていた訳だけど、
まぁそれは別に、
別にそれは、
ボクは別に、
気にならないかな。

キミの真向かいに居た人は、
なんかあんまり
よろしくない顔をしていたけど、
ボクは別によろしいよ。
むしろ、よろしさしかない。
キミのおかげで楽しい食事会だったよ。

『川遊び』

夕暮れ時僕は、
一人で川

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ハードハート

大鉈で大蛇を倒したゴゴゴな午後。
ふと、重い思い出が僕の中で甦り、
僕は、
「ちょっともう、はぁ……」
と嫌な気持ちになった。
それから更に、
「ちょっともう、えー……」
と嫌な気持ちが増し、
「ちょっとマジか……。
ちょっとキツイなぁ……」
と嫌な気持ちに加え、
しんどい気持ちも出てきた。

という訳だから、
ちょっともう死にたいというか、
ちょっとなんて言うのかなぁ、
ちょっとあれだなぁ、あれ

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なくしか

涙をボトボトこぼしながら
トボトボ歩く帰り道。
僕のボコボコになった心は、
しばらく元気を取り戻せそうにない。

あそこまで言わ、あっ、ゆあれるとはな。
あそこまでゆあれたら、
こっちはもう泣くしかない。
あっちのゆってる、あっ、言ってることは、
確かに確かな正論だし、
何も言い返せない。

これから僕は、
どうしたらいいんだ。
全部、否定されちゃったぞ。
もうこのまま当ても無く歩くか。
なんか家

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たこ焼き

君が上を向いて
顔にナメクジを這わせていた平和な昼。
かと思いきや、
君の顔に巨大な熱々のたこ焼きが落ちてきた。

という事態になったお昼。
全身、
巨大なたこ焼きの中に入ってしまった君は、
「あち! あち!」
とあちあちしながら、
巨大なたこ焼きを突き破って、
真っ赤っ赤の状態で出てきた。

あ~あ、可哀想に。
ただただ可哀想だ。
こんな可哀想な奴がいるんだな。
普通に火傷しちゃってるじゃないか

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逃げ逃げ

結局僕は世の中の中に入っていけない、
虫ケラ以下、
ホワイトタイガー以上の人間だから、
どうしたってこうしたって、
どうにもこうにもならない結果に終わって、
どうしようもこうしようもない。

僕はここまで色んなことから逃げてきた。
目の前の嫌なことから逃げてきたし、
人との関わりからも逃げてきたし、
蚊からも逃げてきた。
蚊は恐い。夜も眠れない。
逃げなかったのは、
ホワイトタイガーと対峙した時く

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じゃじゃーん

君がじゃじゃーん!
と飛び出してきて、
じゃじゃーん!
と五匹のヘビを放り投げる形で
お見せしてきたら、
まだまだ、
じゃじゃーん!
ってな君は、
着ている上着の内ポケットを弄り出して、
じゃじゃーん!
とヘビを三匹、
投げ捨てる形で取り出してきた。

更に、
じゃじゃーん!
が止まらない君は、
取り出した全てのヘビを同じ箱に詰め込んで、
じゃじゃーん!
と、その箱の中のヘビを一匹の大蛇に変えた

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置いといて

思えば闘志の出ない人生だった。
ってのは置いといて、
今日も今日とて、
石鹸を食べそうになってしまった。
っていうのはどうでもいいとして、
頭が痛い。
頭痛だ。
ズキズキする。

って、それがなんだ。
そういう話じゃなくて、
今日もまた
食器用洗剤を飲んでしまいそうになった。
って、そういう話でもなくて、
って、なんだっけ?
あれ? なんだっけ?

いや別になにもなかった。
そうだ、そうだよ。

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