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ショートストーリー

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2023年10月の記事一覧

気まぐれに、夕暮れ時に。

気まぐれに、夕暮れ時に。

靴の中の石ころが、かかとを突いてくる。
いつもと同じ仕事をして帰る、いつもと同じ悩みの中を歩く。
「日常を楽しむのは難しいことではない」と発信する配信動画を見ながら食べる夕食は何にしよう。そんな気持ちでするスーパーでの買い物は、もはや散歩みたいなものだ。つまらない。時間だけが過ぎ、よくわからない季節限定パッケージのお菓子がカゴの中には入っている。

スーパーの外は寒かった。
結局、夕食は温めるだけ

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灯台下暗し。

灯台下暗し。

遠くの、ずっと遠くにある光を見つめていた。
その灯台は小さな頃から知っていたし素敵な場所だとみんな言っていたけど僕にとっては特別どうということはなく、「まあ好きな場所だな」くらいに思っていただけ。面白いし、不思議な感じはする。だけど、夜になると普通に気味悪くて、毎日行きたくなるようなところではなかった。

いま僕は、その灯台を船の上から見ている。
その小さい粒のような光が何人の役に立っているのか。

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当たり付きの図書館

当たり付きの図書館

図書館から借りた本に、ときどき前に借りた人の貸出レシートが挟まっている時がある。
最初は他人のものを勝手に見てはいけないような気がして、すぐにすてていたけど、最近は楽しみになっている。
自分が借りた本に挟まっているのだから、趣味が同じような気がして。
さらには偶然入っているものだから当たりクジでもでたような気にり、ネットでオススメランキングを見るよりも楽しみだ。
しかし、余りに毎回入ってては図書館

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ルールを崩すために。

ルールを崩すために。

決して忘れない。

暗闇の中で跡をつけて、何も話さずに追いかけてくる、あいつ。
なにか直接仕掛けてくる訳じゃないけど、すごく怖いんだ。
あいつが来ると、ドクドク心臓が鳴ってわたしはいつも焦っている。
知らない奴だからか? でも、もう何回も見てるから知っている奴か。
どうでもいい。
このドキドキして目が覚める朝を繰り返すたび、イライラするのをどうにかしないといけない。
だから、これからも追いかけてく

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迷宮入り。

迷宮入り。

嘘しかつけない日に良い事があった。
正直に過ごそうとした日は怒られた。

嘘をついてはいけませんと教えられたけど、正直なことが良いわけではないらしい。ついていい嘘というのもあるらしい。

嘘をついて、笑って見せた。
正直に泣いた。

朝から、元気に挨拶した。
やりたくないことを断った。
みんなの話題に話を合わせた。
知らないところで起きた悲惨なニュースを消して、ゲームの続きをした。
もう会う気のな

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伝統とは、幻想とは。

伝統とは、幻想とは。

月の下、竹灯籠の明かりが揺れていた。
安らぎを求めて集まる人々が寺町を散策し、その路地に灯る無数のろうそくは、ぴったり人数分あるかのように各々が安心感を受け取っていた。
時折やってくる夜風が背中を押すから歩き出せる、そんな夜だった。

屋根の上に、影が一つ。
月光には決して当たらぬよう、そして夜風に衣擦れが届かぬように一匹の鬼が寺の屋根瓦に胡坐をかいていた。
琴、三味線、尺八、和太鼓。古典の音色が

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不要物を終わらせ、始める。

不要物を終わらせ、始める。

山のふもとのコンビニに車を停める。
フロントガラスの向こうの景色は、雲があるわけでもないのに薄暗くなってきて、もうすぐ日が沈む。

目的の農場までは、すぐ目の前の登坂道路をつかって20分。
家族経営の農場で、そばではキャンプもできるらしい。
季節ごとに木々は色を変え、静かな夜空には音が聞こえてきそうなほどの星座が煌めく。

澄んだ空気が涼しい空に、いまは赤とんぼが飛んでいる。

今日はキャンプ利用

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保存状態のいい、雨の跡地。

保存状態のいい、雨の跡地。

久しぶりに帰ってきた公園のベンチは雨に濡れていた。
今朝降ったばかりなのだろう、。黒く湿ったそこには座れそうにない。
ポケットから煙草を取り出してから、もう自由に吸えないのかと戻した。
随分と神経質になった。
ここに通っていた頃には、道路に飛び出さないことぐらいしか気にしていなかったように思う。
公園の草花は膝下しか隠してはくれず、見上げていたはずの木々も歩くのを邪魔をするようだ。すこし露をつけた

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