見出し画像

保存状態のいい、雨の跡地。

久しぶりに帰ってきた公園のベンチは雨に濡れていた。
今朝降ったばかりなのだろう、。黒く湿ったそこには座れそうにない。
ポケットから煙草を取り出してから、もう自由に吸えないのかと戻した。
随分と神経質になった。
ここに通っていた頃には、道路に飛び出さないことぐらいしか気にしていなかったように思う。
公園の草花は膝下しか隠してはくれず、見上げていたはずの木々も歩くのを邪魔をするようだ。すこし露をつけたままの緑たちは、もうかくれんぼもさせてくれないようだから、さらに寂しく思う。
ぐるりと公園内を散歩する。
公園の中心からは、武家屋敷が見える。
よく手入れされた木製の引き戸と清涼感ある畳。一般公開されてはいるが、オレたちには好き勝手走り回れる遊び場だった。管理人の爺さんを気にしてはいたが、それよりも楽しさが上回っていたはずだ。
いまは、そんな子供もいないようだ。
ルールを守るようになったのか、親が守らせているのか。それとも、かくれんぼに魅力を感じる子供が減ったのか。
「もぉーいいかい?」という言葉と一緒に、その時の音も録音されたように聞こえた気がする。あの日の鬼は、オレだった。
「探しに来たぞ」と、秋の空気を吸った。
あの日、いなくなったキミを見つけるまで帰らない。
鬼は、まだボクだ。

頂いたサポートは、知識の広げるために使わせてもらいます。是非、サポートよろしくお願いします。